東京フォーラム2006 基調講演

基調講演
講師のご紹介 青木将幸さん (青木将幸ファシリテーター事務所 代表)
モデレーター 西野亜希、高取剛充

 1992年の地球サミットを契機に、学生の頃から環境活動を始める。そのなかで「会議を上手に進める方法」などの必要性を痛感し、95 年より同世代を対象にした人材育成ワークショップの開発・進行に参画。2003年、ファシリテーターを社会に定着させるべく、青木将幸ファシリテーター事務所を立ち上げ、現在に至る。
 主に市民参加型会議の分野において、ファシリテーターの実践と育成を手がけている。将来は地方議会や国会、紛争エリアでのファシリテーションに関わりたいと考えている。
 「日本を市民社会にするにはプロ意識をもったファシリテーターが3万人は必要」
が持論。
講演内容の予定  ファシリテーションを卒業後の進路として選んだ最初の世代。その代表ともいえる青木さんは、何に魅かれ、またどのような出来事から、ファシリテーションと深く関わっていくことを決断したのでしょうか。ありのままの体験を同世代のフォーラム実行委員長が尋ねます。進化し続ける青木さんの等身大の姿から、ファシリテーター自身がファシリテーションによってどう変わってゆくのか、イメージを膨らませてみてください。
青木将幸さんのホームページ こちら

基調講演「自分が変わる ファシリテーション」

壇上に並ぶ4つの椅子、「徹子の部屋」のオープニングテーマ、ゲストをお迎えする2人のモデレーターと黄緑色のキャラクター(あれは何?※1)。ちょっと洒落をきかせた演出が、まるでTVの公開録画を見に来ているような気分にさせる中、2006年の東京フォーラムのプログラムがスタートしました。

女将に扮してアイスブレークを提供した実行委員長の西野亜希さん、あまりにも見目が自然で「本当にFAJの会員なの...?」と囁かれた"番頭(お茶屋の大将)"役の高取剛充さん。

今回の演出のテーマは「おもてなしの心」と「気楽に学んでいただく」ことでした。こういう場作りの気遣いが、その後の各種プログラムでの学びや参加者の笑顔に、少なからず影響を与えていたのではないでしょうか。

今回の基調講演には、"環境問題"や"まちづくり"など、企業や各種団体の社会的側面に特化してファシリテーションを提供しているプロのファシリテーター、青木将幸さんをゲストスピーカーにお迎えしました。青木さんからは、実際に依頼された会議、1,400人の学生で組織する「A SEED JAPAN」の運営、ご自身の住むマンションや友人、夫婦などの身近な人間関係の"場"などのエピソードをご紹介いただきました。これらの豊富な実例によって、青木さんがファシリテーションの領域として挙げた「社会」「組織」「個人」というフレームを具体的にイメージすると共に、参加者は「自分は何故ファシリテーションに惹かれるのか」を改めて深く考えることができたのではないでしょうか。

今回の基調講演の特徴として、モデレーターがインタビューをしながらゲストスピーカーの話を引き出すというスタイルが挙げられます。プロコーチでもある西野さんとFAJの中でも洞察力の深さに定評のある高取さんから、青木さんへタイミングよく投げかけられる質問は、会場の聴衆の問題意識を刺激したり、「そう、そこが聴きたい!」という聞き手の好奇心を上手に満たしてくれたのではないでしょうか。青木さんからも伝えたいメッセージがたくさん溢れ出ていましたが、それらの一つ一つが2時間の間、少しも一方的に感じなかったことが印象的でした。

大切なメッセージとして以下のようなものを抜粋して載せておきますので、改めてFAJの定例会などを通じて参加者同志で、理解度と実践度を再確認していただければ幸いです。

「社会の変革も個人から」...社会、組織、個人とどこから関わってもいいが結局つながっている(社会について語れば、目の前のこと(個人)を見ざるを得なくなる)

「人間鉛筆理論」...人のどの側面にスポットをあてるのか(自分との共通点を探したり、相手に期待をすると、不思議と相手はそういう側面を見せてくれる)

「そこに何かある」...人や事象に対する見方が変わった時がファシリテーターになる瞬間(のチャンス)

「発芽促進剤『ファシリテーター』」...一杯のお茶、無言による促進など話が上手でなくても効果的な影響を"場"に与える人もいる(ファシリテーターには色々なタイプがいる。使っても相手が幸せにならないなら、ファシリテーションというキーワードを使わない)

「技術はナイフのようなもの」...ファシリテーションの技術は効果的だが、使う人の倫理が必要(人の意見を操作するものではない)

「やり方(技術)とあり方(存在・倫理)」...子供にナイフを持たせないのは、準備が出来ていないから(見せ掛けの市民参加はやらない。社会問題をさらに生み出すことにつながるファシリテーションはしない)

「ワークを体験しよう」...いいワークに参加すると学びが多い。ダメなワークも参加すると学べると考えるのが上達のポイント(その場のファシリテーターにフィードバックできるようなら一人前?)

「日本を市民社会にするにはプロ意識を持ったファシリテーターが3万人は必要」という青木さんの持論を改めて拝見し、「そう遠い話ではないかもしれない」と感じました。

皆さんは、どう感じましたか?

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