第11回  無理解なリーダーを説得するコツ事務局

 確かに、従来型のリーダーがメンバーの意見に全く耳を貸さずに、独善的に物事を決める組織では、ファシリテーションが活躍する余地はありません。ファシリテーションは、民主的な議論ができる素地があって初めて機能するものであり、土壌のないところに芽は出ません。  「ファシリテーション研修を受けさせる」「ファシリテーションの本をさりげなく置いておく」という手もありますが、もともと興味ないところでは役に立ちません。そういう上司を翻意させるのもファシリテーションの一つではないかと言われるのですが、一筋縄ではいきません。どのように対処したらよいでしょうか? ●会議で最も重要な役割は?   実は、かくいう私は、自分がファシリテーターであると宣言して、ファシリテーションを始めたのではありません。文章が書けるということで、会議の書記(記録係)を頼まれたのが、ファシリテーションに手を染めたきっかけです。   日本の会議では不思議なことに、会議の最後で結論を確認するようなことはやりたがりません。なんとなく合意ができたという雰囲気ができあがれば、あえてそれを確認するようなヤボなことはやらず、その空気を大切にして会議の終了とするのです。  その代わりに、書記役がみんなが合意したであろう事柄を上手に作文し、それを回覧して必要な修正を加えて、会議の結論とするのです。そういう意味では、議長よりも重要なポジションかもしれません。そんな書記には、どの点についてどこまでの合意があったか(なかったか)を見極める鋭い観察眼が必要となります。下手をすると、議事録をめぐって新たな論争が生まれてしまい、責任は重大です。 ●なし崩しファシリテーターの勧め  ですので、会議中に書記が「今の点の合意を確認させてください」と言えば、反対する人はいません。あるいは、「この点を決着してもらわないと議事録が書けません」とも言えます。そんな介入をしていると、自然と会議の進行をリードするようになり、気がつけばホワイトボードの横でマーカーペンを持って、会議をファシリテートするようになるというわけです。  「会議にファシリテーターを置きたい」「私にファシリテーターをやらせてくれ」と言うと、少なからず身構える人がいます。ところが「書記(事務局)をやらせてください」と言えば、パソコンの得意な便利屋くらいにしか思われず、警戒心も弱くなります。  議長やリーダーがファシリテーションに対する理解がない時には、こういう形で会議に参加して、実質的にファシリテーションをやってしまいましょう。そうやって有用性を体感させれば、頭の堅い上司も、ファシリテーションの有用性を少しずつ理解するようになるはずです。