第12回  地域デビューで武者修行(その1)事務局

 ファシリテーションは、手法やツールを学んだだけでは役に立たず、実践の中でスキルを鍛えていくしかありません。現場でファシリテーションをやって、様々なフィードバックをもらう。そうやって場数を踏むことしか、上達の道はないのかもしれません。  実際に、上級者を対象としたファシリテーションの研修もそういうスタイルをとっており、講師やメンバーからのフィードバックが何よりの肥やしになります。それもできるだけ過酷な状況の方が勉強になり、ファシリテーターとしての度胸もつきます。 ●コミュニティ活動は試練の場   そういう意味で、ビジネスパーソンの方々に是非お奨めしたいのが、ビジネス以外の世界でのファシリテーションです。中でもお奨めは、まちづくり、自治会、PTAなどの地域(コミュニティ)活動の領域です。   コミュニティでは、誰もが全く同じ立場で参加しますので、ビジネスのようなポジションパワーは一切ききません。それに、年齢、性別、職業、学歴、価値観の全く違う方々が集まり、合意形成の大変さは、ビジネスの非ではありません。   それに、あまりに多様な人々が集まるために、困ったチャン、困った場面の連続で、ファシリターターが立ち尽くすことがしばしばです。容赦なくファシリテーターへ攻撃もしてきます。強烈なフィードバックに自信が喪失し、夜も眠れなくなります。 ●苦手なら逃げ出してもよいのか?   そんな話をすると「仕事で忙しいのに、そんな連中のためにつぶす時間はないよ」と敬遠するビジネスパーソンが多いのですが、それでよいのでしょうか?  そもそもビジネスの話は、損か得かの「功利的な問題」に帰着します。いわゆるペイオフマトリクスで意思決定できる世界で、評価基準もはっきりしています。極端な話、別にファシリテーターがいなくても、リーダーが決断すれば合意形成ができる問題です。  ところがコミュニティの問題は、様々な利害関係が錯綜し、「功利的な問題」も大きいのですが、「私たちはどう暮らしていくべき」かという「規範的な問題(善か悪か)」が中心になります。さらにややこしいことに、住民同士のいろんな感情のもつれがそこに入り込み、「感情的な問題(好きか嫌いか)」も扱わないといけません。こうなるとペイオフマトリクスもへったくれもなく、純粋にコンセンサスをどうつくるかという話になってきます。(次回へ続く)