第15回 あなたはこの本を読んで笑えますか?事務局

  ・始めるにあたっての21のアイデア   ・グループをつくる21の方法   ・分析とフィードバックに関する21のアイデアと選択肢 といった具合です。いずれも、筆者の経験に裏打ちされた、実践的なアイデアやノウハウばかりで、 国際協力に限らず、ファシリテーションに携わる人なら必ず何かのヒントがえられる良書だと思います。さらに素晴らしいのは、ワークショップのホンネの話がイギリス人らしいユーモアとともに書かれていることです。 ●危険な裏技が満載!  例えば、ファシリテーターなら、意地の悪い質問を投げかけられたり、自分の知らないことを聞かれたりして、窮地にたった経験は誰でもあるはずです。そういう時のために、「質問に答えない21の方法」という項目がちゃんと載っています。内容を少し披露すると、まずは「いい質問だ!」「よくぞ聞いてくれた!」と相手をもちあげる。そうした上で「君自身の答を聞かせてくれないか」「その質問に答えるための最適な本は・・・」「その質問は今後のセッションの中で明らかになる」といって逃げてしまう。そういう実用的なフレーズがたくさん紹介されているのです。  さらにもう一つ例をあげると、(私も多分にそういう傾向があるのですが)、恥ずかしがり屋でワークショップに参加することに恐怖を覚える人(時)があります。そういう人が、どうしてもワークショップに参加しなくてはいけなくなった時に使う「参加型ワークショップを切り抜けるための21のヒント」という項目があります。参加を断るための言い訳、目立たないようにするためのコツ、観察者に徹する、責任を逃れるなど、危険な裏技が満載。ワークショップで苦々しい経験をした人なら、拍手喝さいを送りたいところです。 ●危険な「ワークショップ道」   私が感心したのは、こういう話が堂々と書物に書かれていることです。もちろん、ブラックユーモアとして書かれているのですが、それを読んで笑いとばせるだけの土壌、すなわちワークショップ文化がイギリスに根付いていることです。  ワークショップは近年日本でも盛り上がりをみせています。それは大変結構なことなのですが、ともすれば我々日本人は「ファシリテーターは・・・あるべし」「ワークショップは・・・でなければならない」といった"ワークショップ道"を語りがちです。先回のコラムで述べた「価値前提」を、ファシリテーターや参加者に押し付けがちになるのです。  それは、もともとワークショップが持っていた楽しさや自由さを損なうものになりかねません。「ちょっと違うんじゃないかな?」と思わざるをえないのです。そういうことにならないよう、ユーモアを交えて暗に戒める懐の深さがワークショップの先進国にあります。我々も早くそういう境地に達したいと思わされた一冊でした。