筆者曰く、上司が思いつきでものを言うのは、組織が持つ構造からくる避けられないことだと。でも、もう少し考えてみてください。はたして、思いつきでものを言うのは、上司だけでしょうか?
●一体何が言いたいのか分からない
傾聴と質問のトレーニングとして、自分の悩みや欠点を話してもらうと、とても面白い現象が見られます。悩みといいながら、いろいろ話を聞きだしていくと、既に自分の中に答をもっているというのは、よくある話です。「困った、困った・・・」といいながら、実は自慢話をしているというのも、結構あります。
中には、話をしているうちに、「あれ、何で悩んでいたんだっけ?」と質問者に尋ねる人もいます。テーマを与えて話をしてもらっても、思いつきで話をする人があまりに多く、本当に何を言いたかったのか、よほど心して話を聞きださないと分からないのです。
●話がどこに行くのか分からない
また、会議なんかでよくあるのが、誰かの発言に対して意見を述べるつもりが、論点のずれた発言をする人です。それくらいならまだよい方で、自分でしゃべっているうちに、どんどん話がそれてしまい、論点とは全く違うところに落ち着く人もいます。思ってもみないことを、感情的な反発や自尊心を満足させるために平気で言う人もいます。
こんな人同士が集まって話しをすると悲惨で、まるで連想ゲームのように話が発散してしまいます。どこへいくか分からずとても、まともな議論になりません。論点(イシュー)なんて、あってないようなものです。
●思いつきが当たり前
このように、人は思いつきでものを言います。人の言葉を鵜呑みにしたのでは、ファシリテーターは務まりません。表面的な議論をつみあげて合意形成を図っても、必ず後で痛い目に遭います。
優秀なファシリテーターは、思いつきで話をした言葉の裏にある真意に、しつこく迫ろうとします。思いつきの発言で論点がズレた場合は、話が飛んでいく前に引き戻し、もう一度論点について尋ねます。思いつきを語らせながら、集団の共通意識を見つけ出す高等テクニックもあります。
人は思いつきでものを言う。そのことを知っているだけでも、随分心に余裕ができます。そんな思いつきをコラムに書いてみたというわけです。