第20回 ”さりげない”ファシリテーター事務局

 当然、事前にあれこれ考えて、ベストだと思うプロセスを用意して話し合いに臨むのですが、それを話し合いが始まってすぐに「今日は、これでやりましょう!」と切り出したのでは、メンバーは面食らってしまいます。メンバーなりの考えがある場合もありますし、気持ちの準備ができておらず、同意をもとめられても判断のしようがありません。沈黙は同意とばかり始めると、「なんだ、シナリオがあるのか」とメンバーの「やらされ感」が募り、成果がでても満足感が下がってしまいます。  反対に、考えてきたプロセスを出すタイミングが遅いと、時間内に話がまとめらないかもしれず、「考えてきたのなら、早く言えよ」と怒られかねません。話し合いの成果とメンバーの満足感のバランスの中で、いつプロセスを切り出せばよいのか、結局悩ましい問題です。 ●さりげないファシリテーションとは  私いつもは、プロセスを提案する際には、「さりげなさ」を心がけています。ある程度のシナリオは事前にイメージしてきますが、いくらそれに自信があっても、冒頭でそれをぶつけることはしません。まずは、チームにウォーミングアップの話し合いをさせ、チームの状況や議論の構図がおぼろげながら見えてきたところで、用意したプロセスと照らし合わせ、いくらか修正をほどこした上で提案をします。  最初のうちは、自分の意見を吐き出すことにメンバーの関心が集中しており、「このやり方で・・・」といっても聞く耳を持ちません。そうしているうちに、あちこちに議論が飛び回り、「そろそろまともな議論をしないと、このままでは・・・」という空気が生まれます。その自然な流れの中で「では時間もあまりないことですし、そろそろ本格的な議論をしたいので・・・」とプロセスを切り出すのです。 ●「黒子」が「黒幕」にならないために  その時には「ここまでの議論を見ていて、こういうプロセスがいいのでは」と言う切り出し方をよくします。用意周到な準備をしてきたのではなく、臨機応変に(即興で)プロセスを考えたという風に見せるのです。その方が、チームのやる気もファシリテーターへの信頼も高まります。  さらには、一方的にプロセスを提案するのではなく、「やり方について意見はありませんか?」「おそらく二通りのやり方が考えられると思い、どちらをやりましょうか?」といった形で、プロセスづくりに何らかの形で参画させることが望ましいです。そうしておけば、モチベーションアップにつながるのはもちろん、後でプロセスに対して批判がしにくくなり、蒸し返しの議論を防ぐことができます。  ファシリテーターはあくまでも黒子であり、主役はチームメンバーです。黒子の意図が見え見えでは興ざめしてしまい、下手をすると「黒子」ではなく「黒幕」になってしまいます。主役をたてるためには、ファシリテーターはいつも「さりげなさ」を心がけるようにしたいものです。