第21回 右脳系 vs 左脳系?事務局

 それに対して左脳系は、思考力(コンセプチュアルスキル)をベースにしたもので、論理的に問題解決や合意形成を図っていくスキルです。特にビジネス系のファシリテーションには欠かせず、まちづくりなど多人数のコンセンサスを図る場合になくてはならなりません。  多くの人は、どちらか一方が得意でもう片方は苦手なようです(かくいう私は右脳系が苦手です。左脳系も大したことはありませんが・・・)。二律背反の能力なのか、両方できるという人はめったにお目にかかったことがありません。そうすると、右脳系が弱い人は教育系のファシリテーションは無理なのでしょうか? 逆に、左脳系が不得意な人は、ビジネス系のファシリテーションは諦めた方がよいのでしょうか? ●不足しているスキルを補うには?  もちろん、そんなことはなく、いくつかの対処法があります(あくまでも、不得意な方を一所懸命努力した上での話ですが)。一つは、不得意な能力を得意な能力でカバーするというものです。右脳系と左脳系では、話し合いの場で作用するメカニズムやアプローチが違いますが、場に影響力を与えるという意味では同じです。片方の能力が非常に高ければ、ある程度は不足している能力をカバーできます。例えば、論理力が少しくらい足らなくても、メンバーの共感をうまく呼び起こせば、それなりに議論をまとめることができるのです。  もう一つの方法は、不足している能力を他の方に補ってもらうというやり方です。よくやられるのが、ペアを組んでファシリテーションする方法です。意見を引き出したり、場に活気をもたらすのを右脳系の人が担当し、そこから本質をつかみ出し構造化して板書していくのを左脳系の人が担当する。うまいペアが見つければ、一人でやるより効果的かもしれません。そういうペアが見つからなければ、正直に「私は論理力が不足しており論点が見えなくなってしまいましが。どなたかメンバーの中で今の論点をうまく整理できる人はいませんか?」と告白するやり方もあります。何もファシリテーター一人が、話し合いをファシリテートする必要はありませんので。 ●マインドを鍛えよう!  それでもダメなときの最後の手段があります。かえって難しくなるかもしれませんが、「マインド(志)」でカバーするという方法です。例えば、コミュニケーションが下手でも、誠実に真摯に相手に接しておれば、いつか必ず気持ちは通じ合います。論理思考が苦手でも、チームのために必死で脳に汗をかけば、そのうち直観やひらめきが生まれてきます。  つまり、本当にチームのためを思い、自分をなげうってチームのために尽くそうと努力しておれば、スキルを超えたスキル、つまり一種の「メタスキル」としてチームに作用するようになるのです。メタスキルとしてはここで詳しく述べる余裕はありませんが、案外ファシリテーションでは、表面的なスキルよりもこちらが大きく作用しているのかもしれません。