第23回 ファシリテーションを学ぶには?事務局

やってみなければ、分からない  ファシリテーションは、対人スキルと思考スキルを駆使した複合技です。しかも、メンバーの状況や課題によって働きかけの仕方が変わり、瞬時に閃いたことを実行する「即興芸」(アート)のようなものです。そういう意味では、ジャズのアドリブにとてもよく似ています。いくら音楽理論を勉強しても、いくら常套フレーズを覚えても、いくら上手な人の演奏を聞いても、自分でやらなければ決して身につきません。  時々、「まだ実践するだけのスキルがないので・・・」と尻込みする方がいますが、それではいつまでたっても前に進めません。勇気を持ってホワイトボードの前に立つことから、ファシリテーションは始まるのです。   その時に、自分のどんな言動にメンバーがどのように反応したか、プロセスを振り返ることがとても大切です。それには、メンバーや第3者からフィードバックをもらうことが大いに助けになります。フィードバックこそ上達の最大の糧であり、プロですら事後に必ずフィードバックをもらって研鑽を積んでいるのです。 的確なフィードバックができるか?  さらに言えば、人にフィードバックを与えることも、ファシリテーションスキルを磨くことにつながります。フィードバックを与えようと思うと、仔細に相手の行動を観察しなければなりません。何が適切で何が適切でないかの評価基準も必要となります。相手を傷つけずに伝える技術もいります。 味が分からない人に料理はできず、他人の行動から何も気づかない人に、上達は期待できません。実際に、良いフィードバックができることは、ファシリテーター良し悪しを見分ける大きなポイントです。積極的にフィードバックする機会をつくり、何か気づきを発見するようにしてみてください。逆に言えば、上手い人のフィードバックを聞くのも大変勉強になるはずです。 究極のファシリテーターを目指して  こうやって、会議やワークショップが大体こなせるようになった人には、コミュニティ、サークル、NPOなどのボランタリィな組織の運営に携わることを強くお勧めします。 ボランタリィな組織では権力や権威などの強制力は一切働きません。やる気と信頼感だけが人と人をつなぐ唯一の絆であり、合意形成以外の方法では組織は動きません。ファシリテーションスキルを総動員しないと組織は回らず、スキルを超えたその人自身のあり様(姿勢)がとても重要になります。全人格的なファシリテーションが要求されるのです。  これも尻込みしていては始まらず、まずはやってみることです。頭が真っ白になり、恥をかき、「どうしてこんなことまでやらなければいけないんだ?」と悔しい思いを何度もしながら悪戦苦闘を続けておれば、ファシリテーションの本質がだんだん見えてくることでしょう。そんな中で「苦しかったけど、またやってみよう」と思うようになれば、あなたのファシリテーションが大きく成長した証だと思います。 ご好評をいただきましたこのコラムは今回でもって終了とさせていただきます。このコラムに大幅に加筆した新著を 5 月末に発刊しますので、続きはそちらをご覧下さい。ご愛読、誠に有難うございました。 来月からは新シリーズ「本当にあった怖〜い話!」と題して、ファシリテーターが度重なる危機をどうやって切り抜けてきたか、とっておきのノウハウを「監修:堀公俊、執筆: FAJ ウェブ編集委員会」のリレーコラムで紹介していきます。乞う、ご期待!