第6回 ファシリテーターは記録者を兼ねるべきか?事務局

 確かに、ファシリテーションに集中していると、どうしても書く方が疎かになってしまいます。逆に、しっかり記録をしようとすると、意見を聴いたり議論をリードする方に意識がいきにくくなります。特に意見がどんどん出ているような会議では、記録だけで精一杯です。  だからといって、ファシリテーターと記録者を分けるとよいかかといえば、必ずしもそうでもないようです。こちらの意図通りに記録してくれず、歯がゆい思いをするからです。それを一つひとつ指示するくらいなら、自分でやる方がマシです。なかなかうまくいきませんね。 ●どちらの方が会議をコントロールしやすいか   私は「話す方か書く方はどちらかを取れ」と言われたら、迷わず「書く方」をとります。   いくら話し手が意見を引き出しても、それをどのように定着させるかで、議論が行方が左右されるからです。要約の仕方や構図の描き方によって、いかようにも進行をコントロールできます。  進行を決定する最終的な権限は記録者が握っており、このポジションを取らないと思うようにコントロールができません。書記や事務局というのは、ファシリテーターにピッタリの重要なポジションだと思います。「皆さんの意見をホワイトボードに書いてみましょうか」と言いながら、ファシリテーターのポジションを取るというウラ技も使えます。 ●要領のよいファシリテーション   ではいつでも「書く方」を選ぶべきかと言えば、そんなことはないと思います。  問題解決型の会議では、自由に意見を出し合う「発散のステップ」と、それをまとめ上げる「収束のステップ」の2段階でやるのが理想的です。前者では、メンバーの意見を引き出したり、発言の背景(コンテクスト)や心の中にある本当の思いを探るのが、ファシリテーターの重要な役割となります。個々の発言の言葉尻にはあまり意味はなく、大抵はその裏側に本質が隠れています。  それなら、「すみません、誰か字の綺麗な方、意見を記録してもらえませんか?」と記録を他の人にまかせてしまって、質問をしたり聴き役に徹する方が得策です。十分に発散が終って、ゴールへの道筋が見えかけたところで、「さあそろそろ、議論を整理してみましょうか」と宣言して、記録者とバトンタッチします。後は、書きながら議論をまとめていけば要領よくファシリテーションができます。ちょっとズルいでしょうか?