第9回 組織変革の歯車を回す事務局

 今まで、数多くの人が組織変革にチャレンジし、そのノウハウが蓄積されてきています。しかしながら、「こうすれば必ずできる」という方法は見つかっておらず、余程の好条件が重ならないと成功しないと言った方がよいくらいです。組織変革は人の心を変えることであり、それが一筋縄ではいかないからです。   言い換えると、人々に組織変革へのやる気をおこさせるかが勝負の分かれ道になります。「やらなければいけない」「よし、やってやろう!」と組織変革へコミットさせるのです。 ●動機付けの二つのアプローチ  人々を組織変革にコミットさせるのには、二つのアプローチがあります。一つは、危機感をあおって、組織も自分の変革しなければやっていけないことを理解させるのです。コッター氏が提唱する「組織変革プロセス」の第一ステップがまさにこれであり、危機感なくしては変革のエネルギーは生まれてきません。自らが痛みを感じなければ、人は変わろうとしないのです。  では、危機感がなければ組織変革ができないかと言えば、決してそんなことはありません。人間は、向上心を持つ唯一の動物であり、自らの成長を喜びと感じ、それに向けて努力をしようとするからです。「あなたはそんな自分でいいのですか?」と内面に問いかけ、真剣に自己と向き合わせることが、動機付けにつながります。 ●当事者意識をもたせる  二つのアプローチで共通しているのは、「組織の問題」を「自分の問題」だと思わせることです。「自分のせいではない」「誰かがやってくれるだろう」と考えていたのでは、変革へのエネルギーは湧いてきません。組織が立ち行かなくなれば、最後は自分に返ってくるのであり、他人事ではないことを分からせないといけません。  中には、「会社は会社、私は私」「自分は困らない」「そこまでしなくても十分」という人もでてきます。たとえそうであっても、困難に立ち向かい、自分の人生を自分で切り拓く態度こそが、人間として素晴らしい生き方であることを、分からせないといけません。   当事者意識をもたせる。これこそが、組織改革を進める上で、最初に回すべき歯車なのではないでしょうか。