ダイアログは、物事の意味を探求するための話合いで、テーマに関していろんな角度から意味を考える拡散型の会話が行われます。その過程を通じて、自分を振り返り、互いの理解を深め、チームとしての共同思考を生み出していくのです。
例えば、チームが未成熟であったり、感情的な問題を抱えているような時には、ダイアログが有効です。自分たちのタスクは何かのか、それはどういう意味があるのか、これから自分たちが今何をすべきか、などを語り合うのです。
これはあくまでも結論を出すためのものではなく、考えるための話し合いです。ですので、出された意見はすべて仮説であり判断や結論を求めてはいけません。相手や自分の内面から生み出させる言葉に深く耳を傾け、隠れた仮説を引き出し、意味を考えていくのです。丹念に粘り強くそのプロセスを通じて、共通の意識が生まれてくるはずです。
●答を見つけるためのディスカッション
それに対してディスカッションは、一つの解答を目指して知識を寄せ合う収束型の話し合いです。お互いの主張をぶつけあい、よりよい答を見つけだそうというものです。チームの意思決定のための話合いといってもよいかもしれません。
意見の交換を通じて本質的な問題を見つけ出し、それを解決するためのアイデアをだしあって、複数の選択肢の中からベストな答を選びとる。いわゆる問題解決プロセスを用いることになります。
ダイアログと大きく違うのは、コミュニケーションに論理性が求められることです。そのために、合理的な議論を進めるツールやフレームワークが数多く開発されており、それらをうまく使いこなすことが、効果的な話し合いにつながります。
●二つの話合いを使い分ける
ファシリテーターは、この二つの話合いの方法の違いをよく理解し、状況に応じて使い分けなければいけません。ダイアログを用いるべき時にディスカッションをすると、形式的な結論に落ち着いたり、深刻な対立に陥ってしまいます。逆にディスカッションを使うべき時にダイアログモードに入ったのでは、いつまでたっても話がまとまらず、情緒的な意思決定になってしまいます。
大抵のファシリテーターは、どちらか一方が得意で、両方うまくリードできる人は少ないのが現実です。ダイアログとディスカッションでは、使うスキルもツールも違うので、どうしても得手不得手ができてしまうのです。
どちらかと言えば、ビジネス系はディスカッション型の、非ビジネス系はダイアログ型の話合いになりがちです。そういう意味でも、ビジネス系と非ビジネス系の両方のファシリテーションの体験を積むことを強くお奨めします。両方のスキルが身につき、ファシリテーションの幅を広げるのに大いに役立つからです。