第107回 2014年4月青テーマレポート:問題の本当の姿を知る方法  〜「教育のためのTOC」 基礎と実践的演習〜中部支部

「問題の本当の姿を知る方法  〜「教育のためのTOC」 基礎と実践的演習〜」
◆日 時 : 2014年4月19日(土) 13:00〜17:30
◆場 所 : 東桜会館 第二会議室
◆参加者 : 36名(会員19名 一般9名 会員従事者3名 一般従事者5名)
◆担当者 : チーム「FAJxTOCfE」
としちゃん(星野 利夫)(FAJ中部支部)
すばるさん(西野 靖江)(FAJ中部支部)
わかばさん(大久保 綾乃)(FAJ中部支部)
◆ゲスト : 吉田 裕美子さん(NPO法人教育のためのTOC日本支部 理事)
◆テーブルファシリテータ: チーム「FAJxTOCfE」
岩井 慎一さん
長谷川 基行さん
中澤 奉弘さん
前田 直成さん
◆テーマ: 問題の本当の姿を知る方法 〜「教育のためのTOC」 基礎と実践的演習〜
◆担当からのメッセージ(定例会参加者募集時の案内文):

皆さん!
FAJで学んだこと、つまり、気付きとか、知識やノウハウとか、活かしてますか!?
ファシリテータとして、身の回りの問題をバシバシ解決していますか?
え!?
まだまだ問題が山積み!?
え!?
目の前の問題を解決しても、直ぐに次の問題が出てくる!?
え!?
解決したと思っていた問題が、再燃する!?(しかも、より酷く!?)
え!?
他人や組織の問題以前に、誰かに自分の問題を解決して欲しい!?
なるほどなるほど。
簡単に解決できないから、問題になっているんですよね。
分かります、分かります・・・。(TT)
 と、いう訳でして!
FAJ中部支部の4月度定例会の青テーマでは!
新年度にふさわしいテーマをお送ります!!
FAJ会員の皆様には勢い良く「ダーッ!」とスタートダッシュを切って頂きたいので、ズバリ「問題」そのものにスポットライトを当てます!
題して・・・。
 問題の本当の姿を知る方法
 〜 「教育のためのTOC」 基礎と実践的演習 〜
あなたが抱えている問題や悩みを一つ、イメージして下さい。
会社で起きている問題、学校で起きている問題、家庭で起きている問題、自分自身の問題。
上司や部下や同僚との間に起きている問題、子育ての悩み、自分の意志の弱さの悩み。
何でも結構です。
あなたがイメージした問題は、本当にその問題の本質なのでしょうか。
実は、あなたが問題だと思っていることは、単なる「症状」に過ぎないかも知れません。
本当の問題は別のところにあるかも知れません。
定例会では、TOCfEのフレームワークをご紹介するとともに、参加者の皆様には「思い込みをあぶり出す方法」を持って帰って頂きたいと考えております。
また、この「方法」は誰でも使うことができ、皆様の身の回りの様々な問題に活用できることを、ご理解頂きたいと考えております。
最後まで読んで下さって、ありがとうございます!(^^)
それでは、4月19日土曜日、青テーマの会場でお会いしましょう!!(^▽^)

◆ブランチ、及び、TOCfEについて
1.「ブランチ」とは
今回の定例会は、TOCfEの「ブランチ」と言うツールを使いました。
ブランチは、出来事と出来事のつながりを深く理解するためのツールです。過去や未来の因果関係を明瞭に考えることにより、筋の通った決断を下すことができます。
先ず、参加者の皆さんにブランチを作って頂きました。
次に、この図を見ながら、「もし〜ならば、結果として〜」という文章に当てはめて読み上げてみると、違和感を感じることがあります。
この違和感に、思い込みが潜んでいる可能性があります。
TOCfEの公認ファシリテータの助けを借りながら、これら一連の流れを体験して頂きました。
なお、今回の定例会では、ブランチというツールが使えそうだということを体感して頂くことを目標としました。
2.「TOCfE」とは
TOCfEとは「教育のためのTOC」の略です。
座学の時間で、TOCfEの全体像や、「ブランチ」以外にも様々なツールを提供していることなどを、簡単に紹介、説明しました。
◆当日の進行
13:00 最初のあいさつ
FAJ中部支部 支部長 柴田 朋浩
13:10 イントロダクション
MF としちゃん(星野 利夫)
案内文の内容に沿って開催意図を説明
13:15 座学
講師 吉田さん
アイスブレイク
問題が現れたときの人の心理と行動
(一つ一つの問題に対処した場合の結果:開発現場の事例)
問題が複雑に見える理由
TOCfE 3つのツールの紹介
14:15 ワーク1:一緒にブランチを書く、書き方を学ぶ
3名1組で、日焼けしたさゆりさんの事例を読み、ブランチを作ってみよう
15:30 ワーク2:グループでブランチを書いてみる
1テーブル6名で、参加者の皆さんの実際の問題からブランチを作ってみよう
(実際の問題が特に無い場合は、新聞記事からブランチを作ってみよう)
16:30 ワーク2の発表
全体共有
17:15 終了
■3.定例会で起きたこと

すばるさん
私のいたチームでは、問題提起者が出した事例に、問題のブランチを書きながら問題の真の原因を見つけ出して行く過程が、うまく進まず、つい先に解決策を提案する方向に行きがちでした。
そういうときに、テーブルファシリテーターがプロセスをコントロールできるとよかったなと思いました。
わかばさん
キャッチフレーズとしてのタイトルの重要性をしみじみと感じました。
ゴールの共有として、タイトルで集まってもらった参加者が、何をイメージして何を求めて参加しているのかを感じることと、何を提供したいのか伝える事の重要さを痛感しました。
としちゃん
定例会の案内文で、問題解決よりも、その前段階である「問題の本当の姿を知ること」がメインテーマであることを書いたつもりでした。
しかし実際は、「問題」というキーワードから、「問題解決」のワークと思われた方が少なからずいらっしゃったようです。
今後、出来るだけ全員の方がスムーズにワークに取り組めるように、誤解を与えないような案内文の工夫が重要だと感じました。
大半の方は、「ブランチを読み上げる」ことにより、思い込みを見つけることができることを感じて頂けたようです。
■4.感想
■4−1.参加者としての感想
すばるさん
問題解決にあたり、つい枝葉の議論になりがちですが、少し立ち止まって、みんなで、何が本当の問題かを、問題提起者と一緒に考えていくことが、大事なプロセスだと思いました。
「その話、もう少し状況を教えていただけますか?」
という言葉かけで、みんなで考えるきっかけとなり、ブランチを書けるといい方向に行けそうです。
今回学んだブランチも書き方に慣れるよう、また学んで行きたいと感じています。
わかばさん
問題解決に向かう場面で非常に有効なスキルを学べるいいきっかけになりました。
私の業務では、他部門間の調整の場面が多く、お互いの抱える問題点の共有をどうするかが具体的に学べたので良かったです。
現場では実際にブランチの時間をかける事を勿体無く思ってしまう事がありますので、ブランチ後のすっきり感を事前に伝えられたらイイなと思いました。
まずやってみようという気持ちにさせられるかが肝心と思っています。
■4−2.TOCfEファシリテータとしての感想
岩井さん
皆さん真剣に取り組んで下さったようで、その点ではとても良かったと感じています。誰一人「こんな事をやるために来たのではない」と言わず最後まで真剣に取り組んでいたと思います。
「ザ・ゴール」 (*1) を読んで職場でできない人にとっても、基礎となる考えを学習できたのではないかと思います。
ただ、ワークショップを見ていて、議論しているチームが多かったと感じました。今回の趣旨は、議論することではなく、考える癖を付けることなので、チームの中で気づけてもらえたらもっと良くなったのではないかと思います。
この点は、我々側でも気をつけてみるべき点として学ばせていただきました。
中澤さん
ワークショップを見ていて真剣に取り組んでいらっしゃる方ばっかりでしたし、非常にワークショップの後のブランチ発表も真剣に皆さん聞いていらっしゃるなと感じました。
しかしワークショップのなかで論理とかロジックというもののイメージがかなり厳密だと感じるせいか、ロジックをつなげる時にあれも言わなきゃいけない、これも言わなきゃいけないというふうに細かいところへ走ってしまう傾向があるのでやはりgood enough (*2) の概念は大切だと思いました。
それと声に出して順序通り読み上げるのは本当に重要であると再認識しました。
読み上げるなかで色々と付箋の順序を変えているグループがありましたので、自分達で実行する時もその二点をしっかりまた押さえてツールを使って行こうと思いました。
今回参加された方にはツールの残り二つも早く体験してもらいたいと思います。
最後に今回参加させていただいてありがとうございました。今後ともよろしくお願いします。^_^
長谷川さん
皆さんの取り組み姿勢は、概ね前向きでしたし、TOC云々が興味の対象ではない方たちにもワークをやってもらえるというのは良かったと思います。
反省(というか発見)としてしは、たとえば「問題」というキーワードにも捉え方が色々あるということ、ファシリの方だからなのかワークのゴールがきっちりと見えていないと停滞する場面があるということ、ですね。
あと、すばるさんのグループでも書かれていますが、解決策を模索するのと同時に、書かれている事実が不明確だと、その裏付けを取るために脇道に逸れていく傾向があることは、ファシリ側の役目として十分お手伝いできなかったのが反省点です。
特にこの項目は、多少粗くても事実らしい所をつなげる、その間を類推して見える化することの難しさを感じました。やはり、good enough (*2) ですね。
いい機会をいただき、ありがとうございました。
また、刈谷かどこかに現れるかも知れませんので、その時はよろしくお願いします。
わかばさんのブランチをベースで、クラウド (*3) やATT (*4) に展開して、やせてもらうっていうのも面白いかも、と思いました。
前田さん
まず、初めてFAJの集まりに参加して、皆さん活発に発言していることに驚きました。さすがです。ワークにおいては、「声に出して読んでみて、うんうんと納得できる程度に細分化する」ことを上手く伝えられなかったかも、と反省しております。TOCfEは、問題構造などを見える化して、思考を手助けしてくれるツールです。興味をもって継続していただけたら幸いです。
■4−3.講師としての感想

吉田さん
同じ「ファシリテーション」と呼ばれるものでも、どのような場でのファシリテーションなのかによって、場への関わり方も少しずつ違いがあります。つまり、「問題解決の場」でのファシリテーションと、研修など「教育の場」でのファシリテーションは、少し違うんですよね。今回は、教育の場でのファシリテーションをお手伝い頂きましたが、同時に我々ファシリテータにとっても学びの場であったことに間違いないと思います。
そして、皆さんが振り返ってみて、「こんなところが参加者はうまくできていなかったね・・」という事柄も上げて下さいました。
では、もし、参加者が全てうまくできてしまっていたら、どうでしょう?
参加者全員が、good enough (*2) のブランチをすらすら書いて、不要な議論をせずに問いかけをうまく使っていて、ブランチが仕上がっていたら?
たぶん、ここで上がって来た様な「学び」は何一つ得られなかったのでは無いでしょうか?
ある行動を起こすと、それが「成功」だったのか「失敗」だったのか・・という評価をどこかでしてしまうのは、誰しもそうだと思います。
でも、たとえば、この振り返りの内容から考えて、何が「成功」と呼べるでしょう?何が「失敗」と呼べるでしょう?
実は、成功/失敗は、我々が勝手に評価を下しているだけで、行動の後起きるのは、フィードバックだけなんですよね。
そのフィードバックが的からどのくらい、どのようにずれていたのか。いや、ドンピシャだったのか・・そこから私たちの学びが必ず生まれます。
教育のファシリテーションにおいて、とても重要なのは、参加した方々が「参加した」ことで得られる価値ある体験を生み出すこと・・と私たちの会社では提議しています。
その場に居なければ得られない、価値ある体験。皆さんは、それぞれ得られたのではないかな?と私は感じました。そして、私も沢山得られました。
本当にありがとうございました。
脚注
(*1) 「ザ・ゴール」:TOC/TOCfEの創始者、ゴールドラット博士の書いた小説。
(*2) good enough:「ちょうど良い加減」。どこまで検討すれば良いのかの判断指標。
(*3) クラウド:TOCfEのツールの一つ。
(*4) ATT:TOCfEのツールの一つ。「アンビシャスターゲットツリー」の略。
TOCfEの代表的ツールは、ブランチ、クラウド、ATTである。
これらの違いを、「何を変えるかがブランチ、何に変えるかがクラウド、どのように変えるかがATT」と説明しているところもある。
以上