第117回 赤テーマ:「ファシリテーターの質問力」拡げる問いかけについて考える中部支部

第117回 FAJ中部 2015年3月定例会 赤テーマ 報告

◆テーマ:「ファシリテーターの質問力」拡げる問いかけについて考える
◆日 時:2015年3月21日(土) 12:00〜16:30
◆場 所:東生涯学習センター 第四集会室
◆参加者:20名(17名+スタッフ3名)   (会員14名 一般3名)
◆担 当:すぎさん、すみやさん、アダチ (FAJ中部支部)
◆担当からのメッセージ:

3月の定例会赤テーマは「ファシリテーターの質問力」拡げる問いかけについて考えるです。
中部支部での「質問力」定例会は4回目です。三人寄れば文殊の知恵を引き出すことを目指して、ファシリテーターの「高める、拡げる、深める」質問力(問いかける力)に挑戦してきました。
共有や発散のプロセスでは"拡げ抜く"ことが重要だと考えます。本当に拡げ抜けると収束が非常に短時間ででき、ブレイクスルーが起きます。ですから、ファシリテーターとして"場"を観察し、適切なタイミングで、拡げ抜くための問いかけるスキルを磨きたいと思います。
そのため、今回は水平思考(ラテラルシンキング)と批判的思考(クリティカルシンキング)について、簡単なクイズやゲームでその概要を確認し、実践の場でその思考を活用して、どのような問い掛けができるか、皆さんで考えたいと思います。
皆様の参加をお願いいたします。 IFラボチーム有志

◆当日の進行:

(1)イントロダクション
●チーム分け
・FAJ入会年順に並んで声掛け。できるだけ多様性を確保できるように。
●自己紹介 IFラボの成り立ち 目的などの紹介。「IFラボ」はFAJ中部の有志で行っている分科会。定例会は今回で4回目。定例会がゴールではなく、みんなで学び合おうというのが主旨。
●本日の狙い:ファシリテーターの質問力について"高める、深める、拡げる"を考える
●本日のお約束:よく観察しよう!実験を楽しもう!モヤモヤも大切にしよう!
●チェックイン 名前、今の気持ち、この定例会に参加した理由 (5分)

(2)ワーク1
●問いかけ
「渋滞している道を走っていたとします。上り坂で渋滞がひどくなってきます。ついに坂道ですべてのクルマが止まってしまいました。止まって待っているあなたの前のクルマが、ドライバーの操作のミスか何かで、ソロソロと下がってきました。あなたの後ろには少し距離を置いて渋滞のクルマがズラリと並んでいます。左右に逃げることもできません。このような状況の中、どうしますか?」 
グループで話し合い(5分)

【話し合いの中で起こったこと】
「クラクションを鳴らして前のクルマの運転手に知らせる」や「バックをする」などの論理的に導かれる解決策がでる中で、「ゆっくり前進して前のクルマの直前で止める」という意見がでた。

●ラテラルシンキング プチレク (10分)

●ラテラルシンキングゲーム (30分)
ラテラルシンキングをさらに感じてもらうために、「ウミガメのスープ」(ポール・スローン著)という、ラテラルシンキング(水平思考)ゲームを体験。
想像力を働かせ、論理的に考え、あらゆる可能性を検討するゲーム。このゲームで、質問力、推論する力などを鍛えることができる。
回答=仮説を立てて、質問をしながら答えを浮かび上がらせることができるのではないかと考えた。このゲームは真正面からのアプローチが困難な場合、問題の側面から挑んでみるというゲームで、必要なのは柔軟性、ラテラルシンキングゲーム(水平思考)といわれる所以。グループで仮説を立てたら、どんな質問をするかを考えてもらう。
・回答の仕方をオリジナルで工夫。
ポストイットに各人が質問を書く。(10秒)
5つの質問がでたら、どの質問をするかをチームで決める。(10秒)
その質問に対して、MFが「はい」「いいえ」を答え、その答えから、再度質問を考える。

【話し合いの中で起こったこと】
質問を出す時間を10秒と区切ったことで、質問がどんどん出る方と思考停止に陥る方とに分かれた。比較的、女性はどんどん質問が出ていたように感じた。
また、回答につながる質問が出た際には、場が変わり、「ひらめき」や「創造」をした時のような新鮮な雰囲気を共有できた。

●ゲーム意図開き 

●「ラテラルシンキングをファシリテーターの質問力にどう活かすか」話し合い 
(25分)
●休憩

(3)ワーク2
●クリティカルシンキング プチレク
・クリティカルシンキングは、情報に対してさまざまな角度から吟味を加える思考。
見かけに惑わされず、多面的に捉えて本質を見抜くこと。
・クリティカルシンキングの基本。
目的意識=常に「なんのために考えるか」目的を明確にして意識する。
暗黙前提=暗黙の前提を意識した上でコミュニケーションをとる。
思考枠組み=考えるための大枠を押さえる。
継続質問=なんらかの結論に達しても思考を止めないで、さらに考え続ける。
のフレームで考えるととらえやすいのでは。

●暗黙前提ゲーム
・意識下で知らないうちに持っている前提を体感する。
「私が今考えている数字 1から10までの数字の一つ、例えば3 整数で小数点等はつかない数宇を皆さんに念で送りますので、皆さんが感じた数字をポストイットに書いてください。
3は使いましたので3以外の1から10までの数字でお願いいたします。」
海外の研究によると、7を思い浮かべる人が32%と最も多い。
(ちなみに今回のワークでは、6、7、8あたりを思い浮かべた人が多かった。1、10は、まれ)

●「楽しクリシン」ゲーム
・「楽しクリシン」は、三重大学教授 南 学(みなみ まなぶ)氏が考案したクリティカルシンキングを体感するカードゲーム。ゲームの目的は、クリティカルなツッコミをして、手持ちのカードをたくさん減らしていくこと。

【ゲームルール】
1) 1グループのプレイヤーは 5名
2) ツッコミカードを各プレイヤーに 5枚ずつ配る
3) 問題カードをめくり、プレイヤーに見せる
4) 右回りに進め、最初のプレイヤーは、手持ちのツッコミカードを出しながら「なんでやねん!」 と言ってからツッコむ。パスは可能。
5) 次の順のプレイヤーがそれよりもよいツッコミができると判断した場合は、手持ちのツッコミカードを出しながら「なんでやねん!」と言ってからツッコむ。パスは可能。
6) もし 2つのツッコミが出た場合は、残りの 3名で判定する。
7) 負けたプレイヤーは、山からツッコミカードを 1枚とる。
8) 最終的に手持ちのカードが少ないプレイヤーが勝利する。

●「楽しクリシン」ゲームを体験してみての気づきの共有

●「ファシリテーターの問いかけを考える」ワーク
・問いかけ
「あなたは学生を対象とした少子化対策を考えるワークショップのファシリテーターを依頼された。全5回のワークショップの2回目。1回目は出産にまつわるビデオを見てもらった。
女子学生は「学ぶことが沢山あった」と言い、男子学生は「授業で習った通りで、既に知ってることだった」といった。
「2回目の今日、あなたはどんな問いかけを準備してワークショップに臨みますか?」

目的意識、暗黙前提、思考枠組み、継続質問のフレームで考えてみる。

・ワーク気づきの共有

(4)振り返り
・アンケート記入
・アンケートを持って、全員で車座に。
今日のワーク全体での学び、気づきを共有。

◆アンケート:
●各パートの内容はいかがでしたか?
【パート1】ラテラルシンキングの説明
A.理解できた        10
B.理解できなかった    3
C.その他           3
・もやっとしている
・まだモヤモヤ
・もっとシンプルでも良かったかと

【パート2】ラテラルシンキングのワーク
A.良かった     10
B.悪かった     1
C.その他      5
・10秒制限の体験はおもしろいかも。水夫には気がつかなかった。
・レベルが高いが面白かった。
・考えているうちにどんどん先に進んでしまっていた
・ワークを沢山出来る時間が欲しい
・よくわからない
・もう少し考える時間、選ぶ時間があれば、Aだった

【パート3】クリティカルシンキングの説明
A.理解できた       8
B.理解できなかった    5
C.その他         3
・実はわかってない (?_?)
・4つの分類の説明の理解不足にとどまった
・まだモヤモヤ

【パート4】クリティカルシンキングのワーク
A.良かった     9
B.悪かった     2
C.その他      5
・これもレベルが高かった
・むずかしかった
・もやもや〜
・よくわからない
・クリティカルシンキングのフレームワークとのつながりがモヤモヤ。ゲームはいらない気が・・・

【パート5】ふりかえり / 個人ふりかえり〜エンディング
A.良かった     11
B.悪かった     2
C.その他      2
・ワークでむずかしかったところがあるため深いリフレクションができない
・今やっている所なので・・・ でも時間をとっている所は◎  

※各パートをより素敵にするための案があれば教えて下さい
・初めての参加だったので、他の全員の方と比べ知識もないので、根本の知識を少し導入してもらえるともう少し分かりやすかった。  
・クリティカルシンキングの説明の際、各項目の前提がもう少し共通理解出来ると良い  
・楽しクリシンをトレーニングとして切り出すのもアイデア  
・時間的に制約があるが、学習する時間を増やすといいと思いました。  
・ラテラル、クリティカルそれぞれ理解するには、もう少し時間が欲しい。別立でやっても良かったのでは?
・もっと、それ自体を積極的に体験できるワークに特化した方が良かったかも。  
・ラテラルとクリティカルの違いをもう少し時間をかけて説明があったら良かったと思います。

●感じたこと、気付いたこと、シェアしたいこと等、自由にお書き下さい。

・様々な人の考え方を感じれたので、おもしろかったです。自分でも勉強をして、知識を深める必要があると思いました。
・ファシリテーション自体をもっと深く知りたいと思った。
・すばらしい内容
・批判的思考や事実と感情を切り離すのは、やはり普段から意識する必要がある。
・自分の発想にカタヨリがあることに気づけた。考える時間の長短で発想に違いがどのように出るのか?
・本質的理解することがまだまだ。
・これは全国のFAJ定例会でも十分通用するすばらしい出来です。
・自分の脳が春なのにフリーズしていた。カタイコオリだった。
・とても人に気を遣ったワークだった気がします。
・純粋に楽しかった。
・全体的にダウンロード型っぽく進行していたので、担当者とディスカッションがもっとあっても良かったかも。
・「カミポ」素晴らしいです!

●全体を通して、いかがでしたか? 5段階のいずれかに丸をつけて下さい。
1 - 0 (悪い)
2 - 1
3 - 5
4 - 7
5 - 3 (良い)

7.IFラボ活動に参加してみたいと思いますか。
A.参加したい       5
B.参加したくない     1
C.その他         9
・分からない
・興味はある
・もう少し勉強してから・・・
・よく分かりません
・時間が・・・
・参加中だけど日程が合わない
・メールは頂いています
・参加したいと思うが九州に戻るので。
・どういう事をやっていくのか、定例会でみていきたいと思った。

◆担当者より:

今回の狙いとして、ファシリテーターの質問力の中でも、"拡げる"ための質問にフォーカスをして、ラテラルシンキングとクリティカルシンキングを取り上げました。
既成の枠にとらわれていると"拡げる"ことができにくいのではないかと考えました。
短時間のワークで、ラテラルシンキングとクリティカルシンキングの両方を盛り込むことへ迷いもありましたが、結果としては良かったのではないかと思います。
共有 → 発散 → 収束 → 共有 という話し合いの流れの中で、発散をしつくすことができると収束に向かいやすいのではないかという仮設をたて、発散をしつくす"拡げぬく"ためのスキルとして、ラテラルシンキングとクリティカルシンキングは有効なのではと考えました。
ファシリテーターは、解決に導くというよりは、グループが自ら持っている答えを引き出すために、「質問する人」であるほうがよいとも言われます。
これからも引き続き質問力を取り上げ、実験していきたいと思います。(すぎさん、アダチ)

これまで、中部支部の質問力の定例会に参加したくても、中々予定が合わず、今回初めて、参加者兼スタッフとして出ることができました。
質問の仕方ひとつで場の流れが勢いづいたり、行き詰まったりした経験がありますので、常々質問の引き出しがもっと欲しいと思っていました。
しかし、引き出しを作るには知識だけではなく、反復練習も必要だと、ワークをしながら思いました。
そこのところをIFラボを通して、お互いの進捗を交換できたら、嬉しく思います。
最後の振返りパートを担当して、この場で一緒に学んだ皆さんのそれぞれの見方、感じ方はとても気づかされるものがありましたが、まだ遠慮があった様にも思えました。
時間の制約が無ければ、それこそ引出す力の質問力を使ってみたい場面でした。
メインファシリテーターをされた、アダチさん、杉さん、参加者の皆さん、どうもありがとうございました。(すみや)