第21回:2006年7月15日 構造化脳を鍛える〜問題解決型ファシリテーションにおける構造化のスキル〜中部支部

■日時:平成18年7月15日(土) 13:00〜17:20   
■場所:東桜会館
■参加者: 合計 21名(担当2名を除く)
 森部、加藤、空井、松浦、野口、上井(うわい)、宇井、森、天野、上種、堀、大山、上田、下谷、角谷、安藤、水谷、内藤、西園、石黒、長田
■担当: 東 卓(FAJ中部会員)
■当月担当運営委員:masa川上

■テーマ:「構造化脳を鍛える〜問題解決型ファシリテーションにおける構造化のスキル〜」
■学習のねらい(東さんからのメッセージ)
 構造化というと、ファシリテーションに関する書籍に、いくつかの構造化のフレームワークが紹介されていますが、私も含めてどれだけの人がそれらを使いこなせているでしょうか?また、ファシリテーショングラフィックの達人は頭の中に構造化の道具箱を持っていて、いつでも必要なフレームワークをその引き出しから取り出してこれるのでしょうか?
 こんな疑問を解くべく、今回はファシリテーター自身が"問題とは何か?"、"問題を構造的にとらえると?"、"問題解決って何をすること?"ということについてもっと理解を深める場を考えてみました。

■当日の流れ
(1) グループ分け
13:00  受付にて自分のロジカル度を1〜10の度数でポストイットに書いて自由に着席してもらう。
13:10  全員部屋の中央に出てもらい、受付で書いたロジカル度の高い方から順番に一列に並んでもらう。
・順番に1〜4までの数を言ってもらい、同じ番号の人で4つのグループにシャッフルする。(1チーム5〜6名)

(2) 自己紹介
13:18 グループの名前を決める。→「楽器」から名前を選ぶ。
13:22 グループ内で自己紹介
13:27 グループ名を発表する。
    1.マラカス、2.ニ胡(にこ)、3.オカリナ、4.三線(さんしん)

(3)アクティビティ
13:28 本日のテーマ内容を説明
・問題解決型ファシリテーションには、「場のデザイン」、「対人関係」、「構造化」、「合意形成」の4つのスキルがあるが本日は「構造化」を取り上げる。
・「構造化する」とは、"議論の全体像を示す"ということ。すなわち、発散したものを収束する過程で、同じ意見を束ね、意見のつながりを分かりやすく示しながら、議論の構造を明らかにしていくこと。
・1.目的・目標の設定、2.原因の探索、3.原因の分析、4.原因の発見、5.アイデアの立案、6.アイデアの評価・統合、7.解決案の決定 の基本プロセスのうち2と3を今回取り扱う。

 □ワーク1
13:33 問題とは何か
・普段、私たちは「問題」ということばをどのような意味合いで使っているか、できるだけ多く列挙してみる。
13:45 グループ発表1
・マラカス:困っていること(エライこっちゃー、あちゃー、という感情に代
表される現象)、何とかしなければいけないこと。
・ニ胡:こうなければいけないのに、こうでない状態。ありたい姿に対する現
在の姿。
・オカリナ:人間の認知のプロセスに関係する混沌としてわからない状態。
認知しても抜けがある。抜けがなくても忘れている(モレ)ことがある。想定
外、予想外、課題。
・三線:目標とのギャップ。解決したことに対する矛盾や対立。問題として認
識するかどうかが問題。解決すべき、要請されるもの。質問、勉強の問題。

13:56 問題とは何か(解説)
・問題という言葉は否定的にも、肯定的(建設的)意味にも用いられる。
○否定的→困っていること(困惑、悶着)、変わっていること(異常、逸脱)、予期せざること(事故、事件)、差し障りがあること(障害、支障)、どうにもならないこと(拘束、不条理)
○肯定的→わからないこと(疑問、質問)、達成すべきこと(課題、タスク)、議論すべきこと(議題、テーマ)、結論を出すべきこと(懸案、提案)、意見が分かれること(争点、論点)
・「問題解決」には、1.現状に対して何らかの不満があり、これを取り除こうとする問題解決と、2.新しい満足を生み出そうとする問題解決がある。

14:00 問題解決を正しく行うために(解説)
・問題解決を正しく行うためには、「問題」、「問題点」、「問題解決」という言葉の概念を厳密に用いることが大切。
・「問題」の論理的定義は以下のとおり。
 ○問題は目標と現状のギャップであり、解決すること。
 ○何を問題とするかは立場によって異なる。
 ○立場が異なるということは目標と制約条件が異なることを意味する。
  つまり、問題の基本構造は目標と制約条件によって決定される。
14:05 「乱暴運転をして交通事故を起こしてしまった」ケースの問題、問題点、問題解決とは何か。
・問題→交通事故、問題点→乱暴運転、問題解決→乱暴運転に対策を打つこと

 □ワーク2
14:10 ケーススタディ「ある人が通勤途上で交通事故を起こした場合の問題点は何か」
・事実は1.酒気を帯びていた。2.運転技能が未熟だった。3.現場に大きな穴が開いていた。4.雨が降っていた。
14:40 グループ発表2
・オカリナ:1,2は本人の状態、3は道路管理側、4は自然、で1〜3は対策が可能な事柄であり、本人の自覚の欠如が大きい。
・三線:背景のストーリ立てをする。→本人の問題だけでなく会社の組織風土まで広げて議論。直接的な問題点は1
・マラカス:外的要因と内的用要因、一時的と常時についてマトリクスを描いて分析。外的要因(雨、穴)は避けられるが、内的要因(飲酒、運転技能不足)は本人の問題。
・ニ胡:4つの要因があって、社会的責任感が欠如。

15:00 「問題点」の解説
・事故という「問題」を起こした原因は全てであるが、4の雨は対策を打つことができないため、「問題点」とはしない。→1〜3が「問題点」である。
・「問題」一つに対して、「問題点」は複数ある。
・「問題点」とは手の打てる原因のことである。
15;05 休憩
15;15 問題の構造化、原因分析における構造化(解説)
・問題を正しく認識することは、問題の構造を理解すること。
・問題の論理構造を解明することで問題解決が図られる。
・問題解決においてもっとも難しいのは原因分析のステップであり、原因(条件や要因)をいかに体系的に構造化して捉えるかが大事である。
・構造化の一つの考え方として、入力(飲酒運転)があって、プロセス(行動の事実)に至るまでの制約条件(運転未熟、道路の陥没、雨降り)のもとで、結果(事故)が起きた、と考えてみる。目標(目的地に安全に到着する)ということに対するギャップがここでの「問題」である。

 □ワーク3
15:25 ケーススタディ「八甲田山死の彷徨」〜青森第5連隊のリーダー神成文吉の立場で原因分析(構造化)してみる。(目標→無事に八甲田山の山越えを完了すること)
16:25 グループ発表3
・一人の発表者を立て、他グループの人たちが回遊して他グループの考え方を聞いてまわる。
16:42 各グループの考え方と感想
・三線:「入力」を何にするかがポイントだった。
「入力」=「前進」とした。理由はこの命令がなければそこに留まって、彷徨って遭難することはなかったはず。制約条件に対する大前提がこれであった。
・ニ胡:成功事例があるので比較してみた。そうすることで原因が出てくるのではないかと考えた。「入力」に始まる構造化モデルが分かりづらかった。
・オカリナ:あえてファシリテーターを立てずに議論をしてみたところ、推定が多くなって話が発散した。二つの隊を比較してみた。
・色分けして成功例、不成功例を対比させてみた。制約条件は同じで何が入力で、何がプロセスか分かりにくかった。

■当日の振り返り 17:00〜17:20
(主な内容)
・構造化モデルの「入力」を何にするか、意味づけがしっくりこない。
・「問題」、「問題点」、「問題化解決」と、ここまで考えなければいけない
のか。
・ワーク1をもっと掘り下げたらよかった。もっと深めたかった。発展させたかった。
・興味あるテーマであったが、日常起きている問題にうまく収まらない。
・「入力」を何にするかが難しい。
・ロジカルに考える良い経験だったが、もっと内容を深めてもらったらよかった。
・グループワークでは、最初にフレームワークを決めてしまえば後は進めやすい。意見が出やすい。
・八甲田山はロジカルより(何を入力とすべきかの)直観力の訓練か。事実の認定に想像力がいる。ワーク3は推論が多すぎてやりにくかった。
・内容が難しいのでどう議論していくかが難しい。「入力」をどこにおくか、また、対策を打てないものは問題点ではないと決めつけてしまうと思考の落とし穴にはまる恐れがある。

■担当者から(感想ほか)
 バックボーン(職業、事前の知識理解)が異なる参加者の方々がグループワークを行うにあたり、こちらから基本的知識やフレームワーク(思考の枠組み)を提示しながら進めました。しかしながら、それらについて参加者の方々の腹落ちが不十分なままワークに取りかかるケースが見られるなど一部に消化不良の感があったと考えます。
 結果として、やみくもにワーク3のような総合問題に発展させるのではなく、ワーク1,2についてもっと深堀してもらったり、全体で議論するなど、あくまで参加者自身の深い洞察と気づきを促すような進め方をすべきであったと思います。
 今回の反省を踏まえ、次の機会にリベンジマッチをしたいと思います。参加者の皆さん、運営委員の皆さん、当日駆けつけて下さった堀会長、ありがとうございました。