第66回:2010年7月17日 青テーマ プロセスデザインの技を磨く〜話し合いの流れを作ってみよう〜中部支部

中部支部 7月定例会(第66回)青テーマ 報告書
                          2010年8月16日
              西野靖江、柴田朋浩、内藤信吾 (作成:内藤)

◆日 時:  7月17日(土)  13:00〜17:30
◆場 所: 名古屋市東生涯学習センター第4集会室
◆テーマ:    
      プロセスデザインの技を磨く                                      〜話し合いの流れを作ってみよう〜
◆担 当: 西野靖江、柴田朋浩、内藤信吾 (FAJ中部)
◆出席者数: 16名 (終盤のみの参加者1名と担当者3名は含まず)
 (募集定員33名)

◆ねらい -------- 定例会開催案内に掲載した内容: 「話し合いの"流れ"をあらかじめ設計しておくこと」これがプロセスデザインのひとつの側面です。一度始まってしまえば、話し合いは生き物のように進んでいきます。話し合いが始まる前に"流れ"を設計し、そして設計したとおりに進んだかどうかをチェックしながらファシリテイトしてみたら何かが変わるかもしれません。 "流れ"を設計する技術を磨くことを目指します。

1.総括
参加者16名中4名が初めての参加であった。若干スケジュールの乱れがあったものの大きな混乱はなく進めることができた。
今回の主題は「アジェンダ」の作成。アジェンダという具体的なテーマを取り上げてワーク(演習)を行うことにより、プロセスをデザインすること、それを形にすること体感していただけたのではないかと思う。
ワークの中で生まれたアジェンダは、それぞれ4〜5項目に箇条書きされたもので、各項の予定時間配分が記されたものもあった。作成の過程で、または振り返りの段階で、「この項目とこの項目は順番を変えたほうがいいかもしれない」といった議論も出ていた。 (ワークで作成されたアジェンダは次章に記載)
次に、定例会のプロセスを振り返る。フィードバックシートによると冒頭に行った「10分間レクチャー」で印刷した資料が配布されることを評価する声があった。しかしながらレクチャーそのものの効果なり影響がどうだったのかは検証できなかった。 (レクチャー資料は別紙添付)
また、ワークを進めた中での注目ポイントとして、?ワーク1での迷走、?「振り返りの切り口」を設定したこと、の2点が挙げられる。 (これら2点についてはそれぞれ3、4章に記載)

2.ワークで作成されたアジェンダ
ワーク1ではグループのメンバー(5名または6名)で親睦を深めるための夏の旅行を計画する。「『行き先』と『何をするのか』をこの後のワーク30分の話し合いで決める。」 この話し合いのアジェンダを作成する。
各グループで話し合って作成されたアジェンダは以下のとおり。
●グループ1
1.各人にどこで何をするのか案を出してもらう。 理由は何か (6分)
2.何を重要視するのか基準を決める。 (14分)
3.基準に従って各人のアイデアを評価。 (5分)
3.5(追加).いいとこ取りのアイデアを追加。 
4.評価に基づき話し合って決める。 (5分)
話し合いの結論:北海道で、いろいろなことを楽しむ。

●グループ2
(1)職場のコミュニケーションの課題を出し合う。
(2)メンバーの強みを把握。 他己紹介で他人の強みを出し合う。
(3)課題解決の方向を見出す。 メンバーの強みを活かすことを考えて。
(4)どこで、何をする、案を出す。
(5)共通項を絞り込む。
以上のアジェンダを見直した後、??→??→?→決定 という順序に変更した。
話し合いの結論:御在所岳で伊勢えびバーベキュー

●グループ3
1.各自提案を作る。  どこで何をしたい、どうしてそうしたいか  (15分)
2.決め方を決める。  基準とか採点方法とか、 (5分)
3.各案検証。 (5分)
4.実際に決める。
話し合いの結論:北海道の牧場でのんびりする。

3.ワーク1での迷走 ---- 定例会プロセスの考察材料?
ワーク1でグループのアジェンダを作成する際、グループ3では「何をどこまで決めるためのアジェンダなのか?」という前提条件の合意するまでに多くの時間を費やしていた。「各グループのメンバー(5名または6名)で親睦を深めるため夏の旅行を計画します。『行き先』と『何をするのか』をこの後のワーク30分の話し合いで決めてください。」という趣旨を説明したはずであるが、グループ3では、次のような解釈が生まれてしまった。
(a) このメンバーの他、社内各部門が参加して大人数で旅行に行く。
(b) 1回の話し合いで全部決めるのではなく、回を重ねて計画を詰めていく。
このため、全体ファシリテータが介入して軌道修正を行った。定例会企画における準備あるいは説明と確認において改善の余地があったと考えられる。

4.振り返りの切り口---- 定例会プロセスの考察材料?
(1)話し合いに参加しない観察者がタイムラインを記録し、それを見ながら
・アジェンダに沿った流れになっていたか?
・アジェンダどおりにならなかったのはどこ?
・それはなぜ?このアジェンダはどうだったか?
を振り返った。
(2) 「良いアジェンダを作るために心がけることは何?」というシンプルでわかりやすい問いかけに答える形で振り返りを行った。

5.企画チーム・・・全体ファシリテータ・・・からのコメント
☆西野(すばる)
プロセスデザインの中でも、非常に重要なアジェンダの作成に焦点を当てたワークショップとなったことが、今回とてもよかったと思います。参加者それぞれが、アジェンダについて気づきを深めて頂けたことが、アンケートからも伺えました。
進行側の反省点として、今回、グループの夏の旅行という仮想で話し合いをしましたが、この仮想旅行は会社規模、目的、予算など、できるだけ詳細に場面設定することが必要でした。そして、ワークの円滑な進行のためにも、参加者がワークの初めから終わりまでの流れをイメージできるように、丁寧な説明が重要だと再認識しました。
この定例会が、次のよりよいプロセスデザインのワークショップに繋がってほしいと思います。
☆柴田(しばちゃん)
観察者からのフィードバック、グループ討議、全体でのシェアといつもよりも長めの振り返りを行ったことで、より心地の良い時間が過ごせたようで、楽しかったです。
この定例会のアジェンダを作るプロセスで、アジェンダづくりの重要さを再認識させてもらいました。
☆内藤(ナイト)
10分間レクチャーを担当した以外は好き勝手に場内を渡り歩き、各グループの奮闘振りを拝見・拝聴して少しの学びとたくさんの刺激を楽しませていただきました。定例会の本番もさることながら、3人で進めた準備の過程がとても充実していました。なかなか時間が合わない中、スカイプという無料ネット会議システムを使って数回打合せをしたのですが、その気になれば一度も顔を合わせなくてもちゃんとやれるということが実感できました。

三人より謝辞:計画段階でいくつかアドバイスいただいた堀公俊さんに感謝いたします。

6.定例会の経過
13:00 オープニング
グランドルールについて等、定例の説明。副支部長挨拶。

13:10 今日の狙いの説明
今日は、アジェンダを作ってみましょう。アジェンダとは何かを簡単に説明。プロセスデザインではこんなことします。

13:15 グループ分け
誕生日順に並び番号順に「1,2,3」を呼称してもらい、3つにグループ分け。人数配分は5名,5名,6名。

13:25 導入
各グループ内で自己紹介の後、「これまでに不満を感じた話し合いはありませんでしたか?何が不満だったか話合ってみてください。」「不満を感じていなければ、満足している会議の話でもOKです。」と投げかけてグループ内で討議。

13:35 レクチャー
別紙資料(添付)「10分間レクチャー」を配布してプロセスデザインの基本形を説明。

13:40 テーマの説明
「夏のチーム旅行について」

13:45 個人ワーク
テーマに沿って自分でアジェンダを考える。

13:50 グループワーク1
グループでアジェンダを作る。テーブルファシリテータを置くかどうかは、グループに任せる。

14:10 グループ発表&質疑応答
各グループのアジェンダを発表する

14:30 グループワーク2
アジェンダの修正と決定

14:35 ファシリテータと観察者を選ぶ
観察者のポイント:場の雰囲気、メンバーの顔つき、盛り上がり度(タイムライン作成)、論点の推移

14:45 グループワーク3
アジェンダに沿って、テーマを話し合う

15:15 グループ発表
話し合いの結論、ファシリテータ及びメンバーの気持ちを短く発表

15:25 休憩

15:30 アジェンダの振り返り

15:30 観察者からフィードバック
アジェンダとタイムラインからの振り返りを観察者から発表。

15:40 グループ討議
・アジェンダに沿った流れになっていたか?
・アジェンダどおりにならなかったのはどこ?
・それはなぜ?このアジェンダはどうだったか?

16:00 
アジェンダの振り返りの発表と他グループからのQ&A

16:20 グループ討議 : 良いアジェンダを作るために心がけることは何?
各自、大切だと思うことを紙にも書く。

16:45 グループで出た話を全体でシェア
「良いアジェンダを作るために心がけることは?」
グループ1:アウトプットをイメージする。会議を複数回に分けることも時には有効
グループ2:準備のための準備が必要。動詞を使った表現にすると具体的になる。
グループ3:アジェンダのしばりが強すぎない方がよい。時間配分を明記するとよい。
個人振り返りを予定していたが時間不足のため取り止め

17:10 事務連絡、次回案内、泡会案内、会場復帰

17:30 終了

以上

※別紙資料: 10分間レクチャー (A4、2ページ)

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(別紙資料)
10分間 レクチャー

1. 言葉の解釈
プロセスデザイン ≒ プログラムデザイン
アジェンダ ≒ プログラム

Process(名詞)
1.(物を作り出すための)過程; 処理、作業; 手順;
2. 経過、推移; 進行、進展
3. (一連の)作用、変化

Program(名詞)
1. (行事などの)プログラム、次第書
2. [・・・の]計画、予定(表)
3. 教科課程、カリキュラム; 講義要目

Design (名詞)
1. [・・・の]図案、設計図; (芸術作品などの)構想
2. [ある目的のための](入念な)計画、企画; もくろみ; 下心、陰謀

Agenda (名詞)
1. 協議事項、議事(日程表)
2. 予定表、 備忘録; (行動の)指針
*訳はGENIUS英和辞典より引用抜粋

2. アジェンダとは
・ 話し合いの順序を計画したもの (順序 ≒ 流れ)
・ 何を(What)、何のために(Why)、どのように(How)話し合う のか? を示すもの

問いかけ;
・ 話し合いのゴールは何ですか?
・ 早く結論が出ることはいいことですか?
・ みんなの意見を出し尽くすことは大事ですか?
・ 参加者はこの話し合いに何を望んでいますか?

3. プロセスデザインの基本形 ・・・ 例を少しだけ
・ 起承転結型
・ 目的・目標の設定(確認)
・ 意見・アイデア出し、情報の収集/整理
・ 議論、反論、アイデアの修正/発展
・ 合意形成
・ QCサークル活動型 ≒ 環境適合型
・ 改善したいこと(問題・課題) やりたいこと(願望・課題)
・ 改善できそうなこと やれそうなこと
・ 改善すべきこと やるべきこと
・ 改善すること(結論) やること(結論)
・ 戦略策定型 ≒ シナリオプラニング
・ 目的の設定(または確認)
・ 目標の設定(または確認)
・ キーファクター (大事なことは何と何?)
・ドライビング・フォース (風向き、世界の動向、ホットな出来事)
・ シナリオ (こうしてみたらどうだろうか?という計画案を3つぐらい作る)
・ 検証 (計画通りに行くだろうか? 判断材料を探し、シナリオの未来を予測)
・ シナリオ(=実行計画)決定
1回の話し合いにおいて一連のプロセス1回だけで終わらせる場合もあれば、何度か回すこともできる。(回を重ねる話し合いにおいても同様。)

☆ 本日の定例会で、新たな基本形が生まれることを期待します。

4. 例題
話し合いのテーマ: 「会社に制服は必要か?」
食品販売の商社であるA社(従業員1.000名)には制服が無い。総務部、人事部、部門代表、労働組合委員代表の計10名で構成される「A社活性化委員会」でこのテーマについて60分間話し合い、その結果を社長に報告する。活性化委員会の委員長(総務部長)より議事進行を任されたあなたはどんなアジェンダを準備しますか?

■アジェンダ例1
1. 参加者一人ひとりにとって制服が欲しいか要らないか?その理由を話してもらう。(全員)
2. 制服のメリットとデメリットを思いつくまま挙げてみる。
3. メリットとデメリットを社員の立場、経営者の立場、取引先の立場を考えながら議論する。
4. 委員会としての結論をまとめる。

■アジェンダ例2
1. 全員で自由に意見を出し合う。
2. 制服が必要かどうかを考えるとき何が大切なことなのか。
3. 今日の会議のゴールを話し合って決める。
(「必要」または「不要」と明快な結論を目指すのか、それとも賛否織り交ぜた意見を要約したものを報告とするのか、あるいはそれ以外か)
4. 全員で自由に話し合う。
5. 委員会としての結論をまとめ、全員で社長向け報告書のリード文(100字程度)をホワイトボード上で作成する。(ボードに書く役は立候補、またはファシリテータ)

■アジェンダ例3
1. 制服の導入に賛成、反対で2つグループに分ける。(中立派もいたらもう1グループ)
2. 賛成、反対の理由を出してもらい、それを糸口に全員で議論する
3. グループに分かれて議論する。
4. ここまでの話し合いの結果、賛成・反対の立場を変える人が出てきたらグループ再編。変更した理由を説明してもらう。
5. もう一度全員で議論する。
6. 委員会としての結論をまとめる。 「制服は必要」または「制服は不要」のどちらかの結論を目指す。(結論が出なかった場合はもう一度会議をやる。)
(もしも最初の問いで全員が賛成または反対だった場合は別のアジェンダに変更する。)


以上

【参考文献】
「会議は変わる!成果を上げる7つの行動」 著者:佐藤 正浩、出版社:東洋経済新報社
「ワークショップ入門」 著者:堀 公俊、出版社:日本経済新聞社(日経文庫)
「シナリオプラニングの技法 (Best solution) 」 著者:ピーター・シュワルツ、出版社:東洋経済新報社