第89回:2012年8月18日 青テーマ 臨床心理学から見た「安心安全の場」って何?〜PCAGIP(愛ある事例検討法)体験!〜中部支部

中部支部 8月定例会(青テーマ) 報告

■日 時:2012年8月18日(土) 13:00〜17:30
■場 所:東桜会館 第2集会室
■参加者:38名(会員36名、非会員2名)
■担 当:成田有子、鳥羽秀人(中部支部)、林加代子(中部支部)
■テーマ:臨床心理学から見た「安心安全の場」って何?
     〜PCAGIP(愛ある事例検討法)体験!〜
【担当者からのメッセージ】
 昨年の支部イベントのスピンオフ企画第2弾です。今回は、支部イベントのゲスト、臨床心理士の成田有子さんをお招きして、臨床心理学とファシリテーションの関係を考えてみたいと思います。
 ファシリテーションの教科書(?)には、場を温める、和ませる、信頼を築くなど心の動きに注目する部分がありますよね。もしかしたら、心理学!?と思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか?
 そこで、臨床心理学のパーソンセンタードアプローチによる「安心安全の場づくり」、に触れてみようと思います。
【ねらい】
・ ファシリテーションには欠かせない「安心安全の場」を心理学のアプローチで考える
・ PCAGIPを体験することで、安心安全の場づくりに必要な要素を考える。
【プロセス】
1. 導入
(1) アイスブレイク
  グループごとに、今の気持ちや体調などを話して(フォーカシング)チェックイン
(2) ミニレクチャー
  フォーカシングの意義、臨床心理学とファシリテーションの関係、パーソンセンタード、PCAGIPについてのレクチャー
2. デモンストレーション(30分程度)
  講師の成田さんがファシリテーターとなってデモンストレーションをした。
  参加メンバーは、各グループから1人+担当2人=7人
  フィッシュボウル方式で行った。
  PCAGIPの進め方は、事例提供者1人、ファシリテーター1人、グラフィッカー2人で進める。
  はじめに、事例提供者から「お悩み(特に人間関係について)」の事例提供をする。


事例提供のしかた

タイトル:○○さんについて
 
   「○○さんとの関係で、なんとか△△にしたいと思っているのだが、なかなかうまくいかず困っている」

  次に、メンバーの中で事例提供者に一人一問で質問を順番にしていく。
  最低2周する。これは、事例の状況の理解や共有をするためである。
  このとき、事例提供者は自分の思うままのこと話してもよい。(メンバーは、必ず一回につき一問のみ)
  質問や答えをグラフィッカーは協働して書きとっていく。
  そして、メンバーから具体的な実行案を提案し・検討する。
  グループに戻って、ふりかえりをした。
3. グループワーク(2回)

  各グループで、PCAGIPを行った。

4. 全体ふりかえり

 全員で円になり、ふりかえりを行った。
・ ファシリテーションの原点を体験した気がした。
・ 参加者を守るという視点がなかったことに気がついた。
・ いま一つ、ファシリテーションとの関係性がつかめない。
・ PCAGIPが進んでいくにつれて、事例提供者の気持ちに寄り添っていた。
・ 質問によって、課題が再定義された。こちらが本当の課題であったと思った。
・ 質問に答えるうちに、自分が気づいていないこと、本質に目をそらしていたことに気づいた。
等のふりかえりの言葉があった。
【担当者の感想】
 事例検討の場でのファシリテーターは、とても気を張っていて緊張した。事例提供者を守ることがファシリテーターのミッションといわれ、そこに注力した。何が事例提供にとって批判的な言葉なのか見分ける力が必要だと思った。
 この経験は普段の定例会などでのファシリテーションからは、置き去りにされていたことだと実感した。
 みなさんが、事例提供者に寄り添って質問をし、なんとか解決したいという気持ちが会場に広がった。安心安全の場ができたと思った。
 担当とはいえ「PCAGIPとは一体全体何なのか?」からスタート。いろいろ事前勉強したものの、本当に腹落ちしたのは当日。やはり体験あってこその学びであることを痛感した。
 ファシリテーションと同じルーツを持ちながらも違う世界で開発されたPCAGIP、そのままで使える現場は限られるもののその成り立ちや価値感は大いに参考となり、ファシリテーターとしてのあり方を問うような体験を得られた。
 お忙しい中、快くプログラムを引き受けていただいた成田さんに感謝。
【全体ファシリテーターの感想】
・運営委員の方が、告知や資料づくりやパソコン設定など、とても親切に準備して下さったので、スムーズに時間どおりにスタートすることができました。
・デモをして、みなさんに見ていただいたことはよかったと思います。雷と雨音の効果音がすごすぎて、運命だった?と感じました。
・各グループで行われているPCAGIPを見て、さすがFAJだなと思いました。ファシリテーターは場を良くみて、発言、介入をされていたと思いました。
・アンケート結果を見て、全体ファシリテーターとしてもっと「ファシリテーションとPCAGIP」の関係や、なぜこのPCAGIPがファシリテーションを行う上で参考になるのかを、明確にあらかじめご説明しておくべきだったと思いました。
・とはいえ、少なくとも傾聴の大切さ、質問力、など、体験していただいているうちにファシリテーションスキルの中の「対人スキル」の参考になるとはわかっていただけたようで、嬉しく思います。