第90回:2012年9月15日 赤テーマ 「多人数の合意形成に挑戦! 〜ワークショップの意見をまとめる方法は」中部支部

中部支部9月定例会(赤テーマ)レポート

■日 時:2012年9月15日(土) 13:00〜17:45
■場 所:名古屋市東生涯学習センター 第2集会室
■参加者:14名(会員13名、非会員1名)
■担 当:林 加代子、角谷 裕司、花木 篤、斉藤 俊哉(FAJ中部支部)
■テーマ:多人数の合意形成に挑戦! 〜ワークショップの意見をまとめる方法はあるのかな?〜

【担当者からのメッセージ】
ワークショップでは5人〜7人くらいが適切なグループサイズだと言われています。話し合いが活発になり、参加者意識が高まるとワークショップを取り上げた本には書かれています。
実際に30人や40人の意見をまとめる、合意を形成するということになると適切なサイズのグループからの提案が、4つ、5つとできてきます。これら各グループ内では納得した提案ではありますが、まとめるとなると...いったい、どうしたら一つの合意としてまとめることができるんだろう?
今回は、マンションの管理組合を例に、合意形成に挑戦しようと思います。

【ねらい】
コモングラウンドを形成することによって、多人数での合意形成が促進されることを検証します。

【プロセス】
1.担当自己紹介と趣旨説明
・今回のテーマに至った背景(過去の定例会)と本日の目指すところ

2.チェックイン (参加者のプロフィールをリサーチ)
・集合住宅の経験は? マンションにどんなイメージを持っているか?
・マンションを所有すると適用される法律(区分所有法)の概要説明(受付時に資料配布)

3.コモングラウンドをつくろう
・過去15年のタイムラインを全員で作る。
・「今から10年後に、私たちはこのマンションでどのように暮らしていたいですか?」との問いに対して、「合意リスト」と「合意できないリスト」を作る。

4.合意形成に挑戦!
・築15年のマンションの大規模修繕を行う事例において、自らが居住者として、どの様な修繕を行うかを討議し、合意形成を試みる。
「本事例では、最低限の補修でも修繕積立金の不足が発覚します。また、居住者の事前アンケートから要求仕様を盛り込むと一戸あたりの一時金が40万円を超えます。さあ、どうしましょう。(事例資料配布)」

5.ふりかえり
・コモングラウンドの考え方の説明(テキストの紹介「会議のリーダーが知っておくべき10の原則」2012栄治出版)
・最終的に意見は2つに分れ、ちょうど半数ずつで、完全な合意に至らなかった。
・そこからの学びは。。


【参加者の感想】
・難しいテーマだった。
合意前に時間をかけるやり方、自分のやりたいことを考えるきっかけになった。
自分がこれまで切ってしまっていた意見を出す時間であったことが良かった。
・ケースでのファシリテートで、情報がしっかりあって考え易かった。
ファシリテータには、前提として専門性、相場感が要る?
・コモングラウンドという概念は良かったが、合意できたリストがハラに落ちなかった。
やり方の問題? お金や手間がかかることが合意リストにのり、モヤモヤが残った。噛み砕いて、使えるスキルにしたい。
・コモングラウンドを見出してから決める考え方を職場でも使ってみたい。
・自分の希望と共通の希望をリストアップする際、イコールにするには条件があるということが気づき。
その条件は、コスト、嗜好など価値観であるということ。対立する軸が何なのか、もう少し議論を深めておけると(解決までしなくとも)納得感があったと思います。
・現代人はコストパフォーマンスにとらわれ過ぎているかも。コモングラウンドから合意を目指すべき? 参考になりました。
・それぞれの意見、価値観が十分に表出されることが大事。明確にすること、それによってお互いが刺激を受けて、考えが収斂していったように思う。合意には到らなくても、プロセスを味わえたので意義があった。
・コモングラウンドを見出す場面で、標語でくくる場合、中身は消えてしまう、というところ⇒容易にはくくれないという感じがした。⇒コモングラウンドを見出すのは大変。
・タイムラインの有効性が今一つ分からなかったです。
・自分の中ではどうしても譲れないものがあり、それをくつがえすのが難しかったように思います。
・マンションの課題解決の場面で、バックグラウンドが違い、価値観の違いが重なってくる事で、より複雑になっていくので難しいと思いました。
・「合意できたリスト」にモレがあったことに気付きました。モレなくやる方法(タスク分析、ゴール分析)を取り入れたら?
・プロセスがすすむにつれて全員の発言が増え、本音を言い始める過程が非常に勉強になりました。

【担当者の感想】
・半日の定例会では、時間不足。まず考え方を学ぶことだと思う。
リストの優先順位(お金に関しても)あったら、合意まで行けたかもしれない。
・とにかく、まずは共有できるコモングラウンドを探るという考えはいろんな機会に応用できそう、と感じられたことがわたしにとって一番の収穫でした。

・前半(コモングラウンド)と後半(マンションでの合意形成)の繋がりが難しかった。後半への繋ぎとなる問い掛けに失敗したかもしれない。
・定例会終了後の今の時点で、書籍を再読してみたのですが、以下の文章が目を引きました。

 コモングラウンドを見出す方法が適切かどうかは、全員が合意している項目について最後までやり遂げようとする積極性がどの程度かによって見きわめることができる。
<中略>
ところが、実際に行動するか否かで賛成か反対かを示すように求められると ― つまり、コモングラウンドが見出された各項目についてほかの人たちとともに全力で行動するよう求められると ― 、人々は別のことを優先してしまった。いざ行動する段になると、医療に関しても誰も、行動する用意ができておらず、進んで行動する気もなく、実際にできなかったのである。(「会議のリーダーが知っておくべき10の原則」p.133より引用)

前半で未来への希望をコモングラウンドにしたが、後半のマンションの合意形成では、金銭的支出も含めて、具体的な行動が求められ、なかなか合意できなかった....。
上記の視点を、コモングラウンド作成時にどのように入れていけば効果的なのか、思いつきませんが、大切な観点だと思いました。
・合意できないこと、現実として受け入れるとのテキストの理解は難しい。
・初めての担当で大変だったが、各担当のファシリテートが大変ためになった(特にみんなの意見を引き出すために忍耐するところなど)

・今日は合意に至らなかったが、すぐ次の議題に繋がる終わり方だったので、コモングラウンドの影響が出ていると思うので、使える考え方だと思う。
・多人数と言える人数では無かったですが、後半のケースへの参加者の集中力が高く、昔の中部みたいな雰囲気を感じました。合意には失敗しましたが、参加者の言葉が具体的に一杯あって、多くの学びがあった様に思います。。
・短時間の準備で、ここまでできたのは、皆さんのお蔭です。ありがとうございました。

・タイムラインをして過去を共有することで一体感ができると思ったのですが、個人・自分の地域・日本&世界としたことに無理があったようです。
そもそも自分の地域を共有していないのに...ここから、参加者が共有できるサイズにしたほうがいいのだなぁと思いました。
コモングランドをつくっていくときに、ポストイットを使ったのですが、参考書にあったように一人一人語っていただくと、よりコモングラウンドが見つけやすかったのかなぁと思いました。
今回は、とてもチャレンジングな試みでした。参加したみなさんとも、ふりかえりやフィードバックが深いものとなり、その場にいる全員でつくった定例会になりました。
ありがとうございました。(林)