第46回 その1 :2007年10月13日〜14日 ワールドワーク〜「対立の渦中、小さな声にきづく」〜関西支部

    第46回関西支部定例会報告 その1(第3回関西合宿) 

■日時: 2007年10月13日(土)13:00〜14日(日)14:00                                     ■場所: 東浦サンパーク(淡路島)                                                              ■テーマ: ワールドワーク〜「対立の渦中、小さな声にきづく」〜                                              ■ファシリテーター:   
     桐山 岳大(きりやまたけお)さん
     米国PWCP公認 プロセスワーカー(プロセス指向心理学)
     桐山 岳大 荻窪心理面接主宰
■合宿実行委員: 中川、坂東、岡本(行)、信川、鈴木、大野(記)   
■参加者: 35名 (東京支部3名、九州支部1名)
■狙い
   ・合宿の目的は、『対立の中で参加者全員の"心の声"を感じ拾い上げること』
   ・対話やロールプレイを通して、感情の対立や個人の内面の葛藤など、様々な問題
    と向き合う
   ・現在、日本に数人しかいない"認定プロセスワーカー"として活躍している                                   
    桐山岳大さんをファシリテーターに迎え、"ワールドワーク"を体験する                                               ■プログラム
  
 13日(土) 
   13:00 オリエンテーション
   13:10 第1ワーク
   18:00 入浴
   19:30 夕食
   20:30 第2ワーク
   22:00 泡の会

 14日(日)
    8:00 朝食
    9:00 第3ワーク
   12:30 昼食
   13:30 解散                                                                        

■内容                                                                              <1日目>                                                                           −オリエンテーション(13:00〜)
  
  まずは、恒例の新入会の方、他支部から来られた方の自己紹介。
  その後、2日間のスケジュールと注意事項を合宿委員の岡本さんから説明。
  合宿委員の自己紹介のあと、桐山岳大さん(以下、岳さん)の自己紹介。
  みなさま、2日間、心ゆくまでワークを楽しんでくださいね〜
     
  自己紹介の後、急遽仕事で研修に参加しなければいけなくなった、坂東さん
  が帰ることに!
  この日を心から待ちわび、準備をしてくれた合宿委員だけに悔しさは人一倍。
  お気を付けて!

 −第1ワーク(13:15〜)

  ◆体の内なる声に耳を傾けよう
   
   いよいよワークがスタート。これから何が始まるのかみんなの期待が膨らむ。 
   岳さんのゆっくりとしたアルトボイスが、昼下がりの穏やかで静かな空間に響
   いている。
   「少し体を動かしてみましょうか?」その問いかけに、みんなうなずく。
   
   「皆さん、目を閉じて体に耳を傾けてください。
   体が伸ばしたい所を思いっきり伸ばしてあげてください」と岳さん。
 
   日頃の緊張感から開放されて、各人、好きなポーズをとる。
   背中の筋肉、首筋、アキレス腱を伸ばすなど、そのポーズは様々。

   「それでは、体が向かいたい方向に移動してください。そこで、好きなポーズをとって
   ください」 
   
   岳さんのその声で、全員がゆっくりと動き出した。
   窓際で佇む人。部屋の角で足を抱える人、だらりとうなだれる人。天を仰ぎ寝そべる                                  
   人。そのポーズは、千差万別。

   「今、日頃の自分に、声を掛けてあげてください」と岳さん。     
    数分間そこにとどまり、まるで、時間が止まったようだ。
    どこからか、かすかな寝息が・・・
    まだ、現実を引き摺って明日以降のことを考えている人、
    これからのワークに集中する為の準備をしている人、
    ・・・
    みなさんは、このとき何を考えていたのでしょうか。

  ◆ワールドワークのセオリーを少し学ぶ

    ワールドワークには、幾つかの共通言語が存在する。
    全員で共有し、理論を身につけた上で、ワークを体験しましょう。

    

    <ロール>
     学校、組織、コミュニティ、家庭など、人や社会の関わりにおいて個
     人が担っている役割。
     ロールは、個人やグループを超えたもの。色々な局面において、その
     役割を取られ入れ替わり、交代して演じられるもの。目的論的なもの。
     ロール間における極は葛藤を作り出すが、それによってグループその
     ものの気付きを促進させる。
      
    <ゴーストロール>
     グループ内でその事について語られてはいるが、直接そのグループの
     誰かによってそのロールが取られていない、また、誰もがそのロール
     を自分が取っていると認識していないもの。
     ゴーストロールは、場に、プレッシャーや影響を与えている。
     その部屋にはいない、「悪い人」「環境」、隠されていること、脇に
     追いやられていることなど。
    
    <ロールスウィッチング>
     ある人がロールを取って(演じて)いたとしても、ある時点で別のロー
     ルを取っていたり、他の人が取っていたロールを取っているというこ
     とが起こること。ロールスウィッチングは自然な傾向。
     自分がどんなロールにいるか気付き、ロール間を行き来する自由を自
     分に与えることは自覚のトレーニングとなる。

    <エッジ>
     知っていること(既知)、知らないこと(未知)との境界。自分の内
     部で超えられない、思いとどまらせる何か。超えられない自分。

    <一次プロセス・二次プロセス>
     一次プロセスは、エッジのこちら側にある自分(グループ)が知って
     いる(同一化)自分のこと。自分だと思っていること。人に自覚的に
     見せている自分。
     二次プロセスは、自分とは思えない、できないことやまだ知らない部
     分、気付いていない部分。一次プロセスと二次プロセスの間にエッジ
     がある。

    <ホットスポット>
     グループにおいて、エッジが出現した瞬間のこと。そのために、意外
     なことが起こったために、全員が静かになったり、凍りついたり、はっ
     となった瞬間。ホットスポットに気付き、それに向き合い、意見が対
     立する両サイドの感情を深く探っていくことはとても大切。

     
  ◆ワールドワーク体感スタート!

−今、場に漂っている雰囲気を言葉で表現しよう

     ・何かやりたい ・知的好奇心 ・緊張と弛緩
     ・居心地わるい ・ちょっとこわい・いつもと違う
     ・まどろみ   ・土曜の午後 ・リラックス
      
    −テーマの選定      
    
     さて、穏やかな午後に、岳さんの声はあまりにも心地よく、、、
     そろそろ体と心を動かしたくなってきた頃に、休憩を挟んでいよいよ
     ワールドワークがスタート。
    
     「皆さんで話し合いたいテーマを挙げてください。
      グループの問題、個人の問題、社会の問題なんでも結構です」と、
      岳さんが発すると、ポロリ、ポロリと、テーマ候補があがる。

       ・単身赴任をなくすには?
       ・年寄りの居場所
       ・日本の将来
       ・なぜ失敗プロジェクトはつづく?
       ・ワークライフバランス
       ・長時間労働をなくすには?
        
        などなど。

      最終的に、人気投票でテーマが決定。
   
      テーマは、
      「(個人が特定できない形での)愛すべきキャラクター(着ぐるみ)
       へのなりきり願望。自己顕示欲か、自己開示か?」    
      程度の差や、状況の差はあれ、誰にでも変身願望があるのか、自己
      開示に引っかかったのか、受け止め方は様々だか、共感を得たのは
      確かなようだ。

      まずは、テーマについての文脈を、問題を抱えた当人が語りだす。

    −ワールドワークプロセスの解説

      ここでワールドワークのプロセスについて少し解説。
      振り返ると、こんな感じでやったように思います。

       ・発言者に同感した人は、発言者と同じ思いであるという意思表
        示として、発言者の周りに集まる。
        (発言者を勇気付ける意味もある)
       ・個人の問題として話している発言者の「ロール」に気付き、発
        言者の「ロール」を、第3者が取っかわり、「ロール」を演じる。
         ※セオリー1:ロールとは、色々な局面において、その役割
          を取られ入れ替わり、交代して演じられるものである。
       ・同様に、対立する「ロール」(問題を抱えている人のエッジと
        反対側にあるロール)に気付いたら、対立する「ロール」の立
        場で、誰かが発言しロールを演じる。
       ・話し合いの中で、ロールが少しづつ変わるなかで、「エッジ」
        が浮かびあがる。
       ・「エッジ」が見えた所で、対立する「ロール」を深め合うこと
        で、ロールの関係性が変わりだす。

    −第1ワークの状況
      
     (ここはどうしても、主観が入っているかもしれませんが、ご勘弁を!)
 
      ・テーマに対して、共感の軸は様々。色々な軸が浮かびあがる。
      ・その度に、いくつもの島ができる。
      ・「個人」と「ロール」の分離ができず、戸惑いの空気が流れる
      ・なんとか真意を探ろうと、発言者に、第3者的な立場で質問を投げる
      ・自分の立場を探そうと戸惑う人。なんとなくいごこちが悪くなり始めている人
      ・この問題(事象)を一般化して、本質的な課題提起を行う人
      ・対立の軸が現れては、消える・・・

      もやもやした中で、少し何かが見え始めた所で、タイムアウト!
      ワールドワークの、さわりを少し体験できた。      
      まだまだ、深い所がありそうだ・・・

      夕食後の第2ワークへ期待。              
      
 −入浴・夕食(18:00〜)

     入浴は、離れの温泉へ。ぬるりとした泉質が気持ちいい・・・
     この頃、鈴木さん到着(お仕事お疲れ様!)
     夕食は、BBQ.ほんの少しアルコールも入って気分も上々!

      

−第2ワーク(20:30〜)
 
   温泉で汗も疲れも流して、すっきりした面持ちで第2ワークがスタート。
   まずは、第1ワークの振り返りからスタート。

   ・ロールと個人が行き来して捉え所がなかった
   ・ロールに入れず、傍観者になってしまった 
   ・ゴーストロールが良くわからなった
   ・・・・・
   ・対立により感情を出すことで、自分がどういう状況に陥るのかわならい
    (だから、一歩踏み込んで自己開示するのが怖い)
   ・昨年度の合宿でも、対立ワークがうまく機能できなかった。
   ・ファシリテーターという"ロール"が、対立を生み出すことに対して、
    妨げになっているのではないか? 
   
   ここで、岳さんがすかさず、場を止める。

   「何故、関西FAJでは、対立ワークが成立しないのか」をテーマに、2つ
    のロールを取り上げた。

   第1のロール、
    「ファシリテーターは、常に冷静で、自分の感情を露にして自分の感情
     のみに陥るのではなく、場を観察し、場の論理や感情に対処しなけれ
     ばいけない。ファシリテータを目指す人が集まる集団だから、
     感情を出すということに対して戸惑いがあるのではないか」
   
   これをゴーストロールとする。
   つまり、誰もが言語化してはいないものの、心の底にある囚われのロール
   である。

   第2のロール、
    「感情をむき出しにすることで、相手を傷つけるかもしれないし、自分
    が傷つくかもしれない。これからも関係性の続くグループだから、それ
    が怖い」

   

   この2つのロールに対して、共感した人達が次々と発言、役者が変わり、
   いつしか、ロールが少しづつ変わりだす・・・
   「エッジ」が浮かびあがってきた所で、
   「ロール」の対立から、当事者同士の個人の対立へ。
   岳さんは、時に2人の会話を止め、戻し、二人の間に起こっていることを
   全身で受け入れ、二人に問いかける。
   一歩踏み込んだ所で、関係性が変わりそうだと、みんなが思い始めた所で
   ワークは終了。

   感情の対立を一歩踏み込むことで、確かに関係性が変わり始めている、
   プロセスワークの片鱗が掴めたようなそんな感覚を持てたのではないだろ
   うか。

 −泡の会(22:00〜)
     
  いよいよ、お楽しみの泡の会!
  遅れて来た、宮田さんの発声により乾杯〜
  一升瓶片手に熱く語れば、聞こえ来るは合宿ソング♪
  はたまた、大きな頭を抱えてくまさん握手会
  
  それぞれの泡の会を心ゆくまで楽しみました。^^                                                                                                                                                                                                  

                                    
     
<2日目>

 −朝食(8:00〜)

   朝から温泉に入ってすっきりした後は、朝食会場へ!
   とってもシンプルな朝ごはん。

 −第3ワーク(9:00〜)
  
  ◆軽い体を使ったワーク(ボディタッチ)

   軽いストレッチ体操の後、2人ペアになり、体を使ったワーク。
   背面を布団と見立て布団を叩く気持ちで、パタパタと頭の先から足の先まで軽く叩く。
   これが結構気持ち良い。

   次に、後の人は前の人の背中を手の平で軽く触れ、目を瞑りそのまま数分静止。
   お互いにどんな気持ちだったか、振り返りを行った。
   「相手の鼓動を感じた」
   「生命を感じた」など、感じ方は人それぞれ。

  ◆セオリーを学ぶ、第二弾

   昨日のワークを振り返りながら、セオリーを学ぶ。

   対立のプロセスには、3つの段階がある。

   1.個人
     
     未解決の問題。相手、自分の中に内在するその人と未完了のやり取りをしている。
     個人の中でぐるぐる廻っている状態。

   2.コミュニケーション(ダブルシグナル)
 
     双方向のコミュニケーションを行っているが、相手のとの関係におい
     てダブルシグナルを発している。
     ダブルシグナルとは、言葉と体で相反するメッセージを発すること。
     (例えば、「あなたと親しくなりたい」と言葉では伝えているが、顔
     はそっぽを向いている状態)ダブルシグナルの時は、それとなく、ダ
     ブルシグナルを発していることを本人に気付かせることが大切。

   3.フィールド

     ロールにはまっている状態。中に入りたいが入れない。
     ある役割にはまってしまっている。自分がどういう役割にはまってい
     るのか気付くことが大事。

   対立のレベルが違うと対立にならない。
   対立は、すれ違いやすい。
   自分がいけないのだと、袋小路に陥ってしまう。
       
   さらに、ランクには、「社会的」「心理的」「スピリチュアル」「文脈」
   の4つのランクがある。
   ランクとは、個人の持つ力の違いのこと

   社会的ランク・・・社会的な地位、文化的地位など
   心理的ランク・・・自分のことをどの位知っているか
   スピリチュアルランク・・・大きなものと繋がってる、霊的なもの
   文脈ランク・・・グループで持っている情報量
  
   自分は、どのランクで対立が起こりやすいか、パズセッションを行った。

   高いランクを持っている人は、一般的に低い人が持っているものやことが見えな
   くなる。上の人は、他の人が見えているもの、ことが見えてなくなる。

  ◆今の気持ちを表現しよう!

    ここで、岳さんから、西さんにファシリテーターバトンタッチ!
    岳さんと西さんのファシリテーター、コラボは見ごたえ充分!

    

    今の気持ちを人間マトリックスで表現しました。
    横軸は、ワークノリノリ度。
    縦軸は、ワールドワーク理解度。

    今の気持ちを軽くパスセッションしてもらい、さて、第3ワークスタート。

    

  ◆ワールドワーク(3回目)

    昨日同様、みんなで話し合いたいテーマを挙げました。
    そして最終的に決定したテーマは、
    「外では客や部下の話を良く聞く理解のあるサラリーマンなのに、何故
    家では、妻に対して、理解のある良き夫になれないのか(外と同じよう
    にコミュニケーションが何故できないのか)」
    
    夫婦の会話は、普遍的且つ共有的なテーマ。

    −妻の話をきちんと聴かない夫(夫は妻の話を聴いているが、妻は聴い
     てもらっていると思っていない)
    −聴いているからこそ、きちんとアドバイスする夫 
    −単に聴いて欲しいだけなのに、次々とアドバイスすることを鬱陶しく
     思う妻
    −聴いて欲しいと思っていたはずのなのに、いつの間にか、傾聴のアド
     バイスをしてしまている妻(ロールの逆転)
    −単に聴いて欲しいのではなく、自分も夫のことがもっと知りたい、双
     方向のコミュニケーションを求める妻
    −話さなくても、妻はわかってくれていると思う夫

     

    次々と、色々な「妻」「夫」のロールが飛び出す。
    
    夫婦間の双方向のコミュニケーションに何かのエッジがある、
    全員の意識はそこへ集中した。
    
    そこで、岳さんは、場を止める。
    
    「今の所をもう少しゆっくり話してもらえませんか?」

    「もう少し、どのようなことがあったのか、具体的に話してもらえませんか」
    
     岳さんは、二人の気持ちを体一杯受け止めながら、時には場面を戻し、
     時には、気持ちを制するように働きかけるが、決して、真実を探るような                                         
     追求型の質問は投げかけない。

     家庭が一番であることが大切である思いは同じであるが、求める価値                                             
     観の違いそれをうまく言葉で表現できない
     二人の感情が、自分の体の中に流れ同化し、思わず涙をこらえる。
   
    「夢の中で、今の気持ちを寝言でつぶやくとしたら、どんな言葉ですか」
    「・・・・」
   
    言葉では表現できない何かを感じ、
    でも、確実に二人の関係性はこれから変わるであろうことを予見させながら、
    ワークはここで終了。
    岳さんより、このワークで起こったことを個人で振り返ってみましょう、との
    促しがあり、しばし目を閉じてみんなで黙考。
    その後、3人一組で振り返りを行ない、数名の方から振り返り・気付きを発言
    してもらい、なんとも深いワークでした・・・

 −昼食(12:30〜)

    昼食の「から揚げ定食」の後、全員で記念撮影。パチリッ。

    

 −解散(14:00)

    お迎えのバスが来て解散。
    皆さま御疲れ様でした。
 
    それぞれの、合宿楽しめましたでしょうか?  


<参加者の皆さんからの感想>
※全体で振り返る時間を充分取れなかったため、MLで皆さまから感想を寄せて
  頂きました。全部は紹介しきれてません。ご容赦くださいませ。
 
合宿の感想は...文字にできない、これこそ体験の場でした。
自分のエッジから関西のエッジまで、体験できました。この体に残った
感覚を大切にしたいと思います。

自分のエッジが何か、わかったつもりになっていましたがそれを超えたと思ってい                                   たらまたその先にエッジがあった!という感じです。
普段はなかなか触れられない、皆さんの深い想いをともにすることが出来たことが                                  とても嬉しい2日間でした。

たけさんがその場に起こっていることにぐっと集中し、観察し、感じ取ろうとされている                               その姿勢自体から、たいへん学ぶものがあったように思います。
その場自体に、場を動かすエネルギーが内在されていること、それを信じて取り組ま                              れているように感じました。

日常的にエッジにふれている機会は非常に多いが、それを意識していることはきわめて                             少なく感じます。
ここで、「エッジ」という存在を認める「自分」に気づくことがやはり重要なのですね!