第50回 その2:2008年2月9日 「空中戦」を考える関西支部

第50回関西支部定例会報告 その2

■日 時: 2007年2月9日(土) 12時30分〜17時45分
■場 所: TSB(トータルサポートブレインズ)
■テーマ: 「空中戦」を考える
■担 当: チーム☆ポケットを落としたドラえもん
       中井(1号)岡田(2号)油谷(3号)神田(4号)
■参加者: 16名
■ねらい 
ホワイトボードにマーカーといったおなじみの道具を使わずに、
ファシリテーションを行ってみたら、どうなるでしょう?
身ひとつでどれだけ議論を進められるかの限界にみなさんで
挑戦しながら、道具のないファシリテーションについて考えていきます。


◆前説(15分)
<趣旨説明>
スライドを使って趣旨説明。内容は以下の通り。

・ファシリテーションについて語るとき、つい道具の話になってしまうことが

 あるが道具を使うことがファシリテーションの目的ではないはず。

・道具を使わず、言葉のやりとりだけで話し合うのを空中戦にたとえること

 がある。論理が飛んだり、感情に左右されたりして、困った状態になる

 ことが確かに多い。

・このため、空中戦に対する姿勢としては、空中戦をネガティブなものとし

 て考え、空中戦を避けるか、空中戦から抜け出すというアプローチが

 一般的だった。

・しかし、空中戦は絶対に避けるべきなのか?関西合宿に出た人は覚え

 ていると思うが、桐山岳大さんのワールドワークは、空中戦をやってい

 事例と言えないだろうか。

・今日のワークでは、空中戦のままで何とか話し合いの結論を出すことを

 目標に空中戦でのファシリテーションがどうすればうまくいくかをみんな

 で考えてみたい。

・地上戦と空中戦の2つの場合について、議論の過程でどのような方法を

 とっているかを比較してみた。特に整理や収束の場面で、良い方法を

 見つける必要がありそうだ。

<プログラムの説明>
本日行うワークの流れについて説明。

<アンケート>
ワークに入る前に、空中戦に対する姿勢についてのアンケートを実施。
結果は「とびこむ」8名、「ぬけだす」4名、「わからない」3名。

◆空中戦体験ワーク、グループ分けと説明(20分)
議論したいテーマに集まるようにしてグループ分け

<体験ワークのテーマ>
・カレーの中身を決める
・飲み会の会場を決める
・社員旅行の行き先を決める
・駐輪問題の対策を決める
・スポーツ大会の種目を決める
・学園祭で演劇の演目を決める
・飲食店の販促プランを決める
・市役所の消費電力を減らす方法を決める

〜グループに分かれたところで〜
・体験ワーク2回目のテーマを選択する
・ファシリテーターと観察者をワーク毎に各一名決める

◆体験ワーク(10分×2回)
<道具なし>
・ポストイット、プロッキー、模造紙などは使わない
・結論は出さなくてもかまわない
・観察者は観察者シートを使い、場を観察する
・体験ワーク2回目はファシリテーター及び観察者を交代する

◆グループで体験ワークの振り返り(10分)
<道具あり>
・観察者シートに沿って
・道具を使わずにやってみてどうか
・ファシリテーター、参加者、観察者、それぞれの立場で気づいたこと
...などなど

◆全体振り返りと共有(10分)
〜各グループからの感想〜 ※一部抜粋
・話の方向がわからなくなってしまう
・自分の意見ばかり言って、人の意見が聞けない。
・有効な意見が記憶に残らない
・ファシリテーターとメンバーが1対1のやり取りになってしまう
・話の論点、何を話し合うか認識が共有できない
・選択肢の比較ができない
・本当に合意がとれたのか疑問が残る
...などなど

◆空中戦のまま議論を進めるためのアイデア出しワーク(35分)
<道具あり>
グループ毎に、模造紙の左半分にアイデアを記入
(右半分は次のワークにて、アイデアを評価するのに使う)

〜アイデアをまとめるポイント例として〜
議論の場における4つの局面を意識する
・場を作る
・引き出す
・すり合わせる
・まとめる

◆休息(5分)

◆アイデア試行ワークの説明と準備(15分)
<趣旨説明>
出したアイデアを実際に使って、結果どうだったかを共有する

〜各チームのアイデアの簡単な紹介〜
他のチームがどんなアイデアを出したのかを聞きたいというリクエストがあり、
簡単な紹介を行う
※時間の関係でプログラムから省いたが、やっぱり必要だったと反省

〜各チームでアイデアの確認と役割決め〜
・ファシリテーターと観察者を各一名決める(体験ワークとはちがう人)

◆アイデア試行ワークの実践(15分)
出したアイデアを実際に試すワークをしてもらう

<道具なし>
・ポストイット、プロッキー、模造紙などは使わない
・体験ワークのテーマのどちらかを選ぶ
・結論は出さなくてもかまわない
・観察者は観察者シートを使い、場を観察する


◆アイデア試行ワークの振り返り(25分)
ワークで実践したアイデアが有効だったかを振り返ってもらう
アイデア出しワークの模造紙の残り半分に結果などを書き込む

〜振り返りの視点について〜
・アイデア:試した案
・結果:有効だったor有効でなかった
・理由:結果みたいになった理由

◆休息(5分)

◆アイデア試行結果の説明と共有(45分)
各チームの試行結果を説明してもらい結果を共有する

〜各グループからの有効だったアイデア〜 ※一部抜粋
・同意の確認:一本締めなどみんなで確認するのは有効
・前提条件を決める:すりあわせがないと議論がぐちゃぐちゃになる
・体を動かす:程度の差を立つ位置で表現すると理解しやすい
・3つに分ける:論点を3つに絞って、それ以上は記録して別途検討
・ルールを最初に決める:進むけどイライラ感も残るので、発散タイムも

 あった方がよい
・話すことの確認:テーマを10回みんなで声に出して言う(でも、10回は

 多いので5回でいい)
...などなど

◆休息(5分)

◆「空中戦」についての振り返り(10分)

プログラムを通じて、「空中戦」に対する印象がどのように
変わったのか、または、変わらなかったのか、各自で意識して
もらうことをねらって冒頭と同じアンケートを再び実施。

結果、「冒頭のときと答えが変わった」という人、「答えが同じ」
という人はどちらも7名であった。
(内訳:「とびこむ」12名、「ぬけだす」4名、「わからない」0名)
  ※途中から参加した人もいるので合計数は増えている

〜「答えが変わった」人の感想〜 ※一部を抜粋

「ぬけだす」→「とびこむ」
・空中戦が怖かった。仕事場でもたいてい空中戦をしている。
 無理にでも道具を持ち込んでいたが、無理に道具を持ち
 込まなくても、空中戦を軟着陸に持って行けると感じた。
 今日、応用できるスキルを知って、今後は少し安心できる。

「とびこむ」→「ぬけだす」
・日頃、お茶(茶道)の集まりで70代から90代の方々と
 空中戦で話すことが多く、慣れているんじゃないかな、
 と思っていたが、今日のワークを通じて、空中戦を何とか
 するには合意したルールが要ると感じた。
 それが難しい集団では、やはり地上戦の方がいい。

〜その他、空中戦についての感想〜 ※一部を抜粋

・(何もルールを決めず)空中戦で話し合ったときは、それぞれ
 責任放棄しているような感じがした。役割やルールを決めれば、
 道具にこだわらなくても、議論がばらばらにならなくてすむ。

・「2次元」の地上戦に比べて、「3次元」の空中戦は議論が
 すれ違いやすい。ただ、「空中」でも互いの「高度」や「角度」
 を揃えれば、議論できるんだと感じた。

◆プログラムについての振り返り(5分) ※一部を抜粋

・プログラムで扱う空中戦の定義が、「道具を使わない話し合い」
 なのか、「議論が混乱している状態」なのか、どちらか分かりにくかった。
・アイデアを試すワークではトピックを新しいものに変えた方が
 良かった。その方が有効かどうかを確認できたと思う。
・「観察者」が、「ファシリテーション」を観察するのか、「場」を
 観察するのか、ハッキリしなかった。
・「観察者」を入れて良かったと思うが、ワーク後の振り返りに
 観察者が観察した内容が反映しにくかった。
 (まず、観察者のフィードバックから振り返りを始める・・・
 といった何らかの設定があった方がさらに良かった)


☆★☆担当者の感想★☆★

・初めての定例会担当が、「空中戦」というなにやら分かり難い
 デーマだったので、どうなるか不安でしたが何とかできました。
 当日は、参加メンバが積極的にどんどん進んでいってくれるので、
 事前に検討した不安などは吹っ飛んでしまいました。
 結果的に、考えもしなかったアイデアがたくさん出てきて、
 「空中戦」=「道具を使わない」という制約だけで、進めて
 良かったという思いです。
 私は、「空中戦」中の音を聞いていたのですが、「体験ワーク」では
 どのチームも最初静かでしたが、時間がたつと居酒屋での会話のように
 周りのことを気にしない雑然とした音になってました。ところが、
 「試行ワーク」では雑然さは、非常に少なくなっていたのを発見しました。
 また、進め方についても事前検討の時にすっきりできなかった部分が、
 本番もないかうまくいかないという経験は、これからのプログラムデザインに
 役立ちます。
 参加いただいた方、一緒に検討してくれた、ドラ2号、3号、4号の皆さんに
 感謝します。ありがとうございました。
  (ドラ1号/中井)

・「正解がない」プログラムだったので、どうなることか心配
 でしたが、参加してくださったみなさまのお力で、とても楽しい
 と同時に非常に実り多い時間になったように思います。
 「完全に道具なし」という条件下でファシリテーションを実践
 してみて、普段とは違う何かを感じていただけたのなら本望。
 最後の振り返りがやや駆け足になってしまいましたが、
 貴重なご意見の数々ありがとうございました。
 ・・・私もワークに参加したかったです(>_<)
  (ドラ2号/岡田)

・空中戦をうまく行うためのアイデアについては、
 準備の時にもメンバーであれこれ話し合っていましたが、
 本番ではこちらが思いもよらなかった方法が次々と出てきました。
 みんなで議論することのメリットを改めて実感しました。
 不自由な状態でのファシリティーションにお付き合いいただき
 有難うございました。
  (ドラ3号/油谷)

・事前の打ち合わせで、体験ワークやアイデアだしを試行してみましたが
 定例会ではグループでの話し合いが活発で、またアイデアを
 試すときはとても楽しそうで、なにやらうらやましく感じました。
 また、今回の定例会を担当するにあたり、何度も打ち合わせを
 行う中で、改めてプログラムデザインの奥深さを学ぶといった
 貴重な経験を頂きました。
 ご参加いただいたみなさま、ならびにチームドラ'sに
 感謝いたします。ありがとうございました。
  (ドラ4号/神田)