第51回 その2:2008年3月8日 共感・共有の新ツール「クロスロード」に挑戦しよう関西支部

第51回関西支部定例会報告 その2

■日時 :2008年3月8日(土) 13:00〜16:30
■場所 :たちばな職員研修センター
■参加者:25名
■テーマ1:共感・共有の新ツール「クロスロード」に挑戦しよう
  〜今話題沸騰のリスクコミュニケーションツールを試す〜
■担当 :西
■サポート:浜(faj会員 神戸クロスロード研究会)
■概要:クロスロードのツールとしての魅力と可能性を体感する
    クロスロードの長所を生かしてFAJ的な応用に挑戦する
■全体の流れ
13:00【オリエンテーション】
   ・スタッフ紹介
   ・テーマの解説〜進行説明
   ・グループ分け
13:10【ミニレクチャー】
   ・「クロスロード」の生い立ち
   ・普及状況や活用事例
13:30【体験してみよう】
   ・実際にオリジナル「神戸編」クロスロードゲームを体験する
   ・クロスロードの「強み」と「弱み」を考える
14:00【FAJ的応用に挑戦!】
   ・各自の体験の中からクロスロードの設問のネタになりそうな経験を紹介する
・グループで設問をつくりA3用紙にまとめる
   ・実際にゲームとしてやってみる
16:15【ふりかえり】
   ・振り返りシートを使ってグループ内でふりかえり
   ・全体にフィードバック

■内容
【オリエンテーション】
 ・スタッフ紹介
 ・全員輪になってチェックイン(名前・所属など・このテーマを選んだ理由)
 ◇グループ分け
 ・5人×5チーム
 ・メンバーの年齢や性別に偏りがないように気をつけながら自由に席につく
【ミニレクチャー】
 ・クロスロードの生い立ちと現在の活用状況
『クロスロード』
 阪神・淡路大震災での貴重な体験を伝えるため
 膨大なインタビュービデオを元に作られたYes/No形式のシンプルなゲーム
 現在は震災の神戸編以外にも多くの設問が作られてきており、
 決断を迫られるジレンマを疑似体験するリスクコミュニケーションツールとして
 注目を集めている。
【体験してみよう(4問)】
・あなたは避難所の食料担当
 被災から数時間。避難所には3000人が避難しているとの確かな情報が得られ
 た。
 現時点で確保できた食料は2000食。以降の見通しは、今のところなし。
 まず2000食を配る?
 YES(配る)/NO(配らない)
・参加者は「自分ならどうするか?」を決め、手持ちのYES・NOカードを裏返し
 て出す。
・一斉にカードを表に返し、多数派の意見であった人は、青い座布団をゲット
・少数派でも、意見が一人だった場合は「金の座布団」をとる
・グループ戦でお菓子も獲得
◇震災時実体験のコメント (西、浜)
◇ふりかえり クロスロードの強みと弱み、または質問
◇グループでディスカッションと結果発表
 <強み> 
  YES/NOしかないのでシンプルでわかりやすい。
  時間の融通が利く
  道具立てが少ない→どこでも気軽にできる
  正解がないので多様な意見が聞ける
  意見を気兼ねなく言うことができる
  実体験を伝えることで深みが出る
  経験者がいることで伝える機能が増す
 <弱み>
  当事者の気持ちをサポートする必要がある
  2択だと思いがですぎる=あいまいさが残らない
  ゲーム的すぎ(金ざぶねらい)
  まわりの考えを読みすぎて自分の考えが出せない
  経験者としては違う考えを出しにくい
  経験者がいるとグループの中で引っ張られる
  深堀りができない=単にみんなの意見を聞くだけ
  決着が不要なのでふくらまない
◇金座布団やゲームについてコメント(西)
・ゲーム形式をとったことにより,重いテーマに取り組みやすい。
・少数意見を尊重するのがもともとの発想だが、金ザブ狙いと言いながら、
 実は自分の意見を言うひとがいる
・心理学的にはゲームとして勝負に徹してもらうのも面白い。
 勝つためには、他の人がどう考えるのかを真剣に考えなくてはならない。
【休憩】
【FAJ的応用に挑戦!】
・自分の体験の中から「困った・迷った・しくじった」を出し合い共有する。
・その中からクロスロードの設問をつくる
◇作問のポイント
 ・「Yes/No」で応えられる問いにする
 ・ あまり細かな設定はいらない
 ・「こんなことに出くわすんや!」を伝える=「体験」・「体感」・「実感」が大切
◇できた問題を実際にやってみる(11問)
●あなたは災害ボラセンの職員です
子供連れで参加のグループがある。規則では不可だが現場では人が足りない。
子供の参加を許可する。
YES(許可する)/NO(許可しない)
●あなたは幼稚園児の親
子どもがなぐられて帰ってきた。ケガはなかった。相手をなぐり返しはしなかった。
相手方の親にTELする?
YES(する)/NO(しない)
●あなたは高校生 部活動のチームのキャプテンです
地区大会決勝戦の前日、練習前に恋人が事故で救急車で運ばれたと聞きました。
顧問からは「大丈夫でたいしたケガもないから練習に集中しろ」といわれています
が、いてもたってもいられません。練習を抜け出して病院に向かう?
YES(行く)/NO(行かない)
●あなたはWSのファシリテーター
WSが2/3を経過。突然、ある参加者から「WSの内容と目的がずれている!」
と言われ、場が混乱した。このままWSを続ける?
YES(続ける)/NO(続けない)
●あなたはファシリテーターです
30人のワークショップで半分が遅刻。遅刻者の半数からは連絡がありました。
ワークをスタートしますか?
YES(スタートする)/NO(スタートしない)
●あなたは保護者です
子どもが今日は学校に行きたくないと言ってきた。熱は37.1度。子どもは勉強が
遅れがち。
学校を休ませる?
YES(休ませる)/NO(休ませない)
●あなたは研修担当者
長年、請け負っている新入社員研修のN社から直前に「今年は予算がない」と3割
カットを告げられた。
このまま仕事を請ける?
YES(受ける)/NO(断る)
●あなたは探偵
借金癖のある奥さんから行方不明のご主人を探してと依頼されました。彼はあなたの
友人です。
探したところ、彼は現在別の家庭を持っており、幸福に暮らしています。
本人からは「妻には内緒にしてほしい」と言われました。あなたは奥さんに言う。
YES(言う)/NO(言わない)
●あなたは20代後半の女性です。3年付き合っている男性がいます。
ある日上司から遠方への転勤の命令がありました。明らかに大抜擢の栄転です。
転勤する?
YES(する)/NO(しない)
●あなたはFAJの定例会運営責任者です。
「私に来月やらせてください」と手を上げた会員がいる。定例会のプログラム作りを
任せたところ、
直前になってもできている様子がない。もう時間がない。最後まで信じて任せる?
YES(任せる)/NO(任せない)
●あなたはコンプライアンス担当
日頃、大変お世話になっている上司から「お前、交通費水増し請求していいぞ。みん
なやっている。
これは命令だ。」とささやかれた。指示に従う?
YES(従う)/NO(従わない)

◇結果発表(個人戦)

◇ふりかえり(代表的なものから)
<クロスロードの有効性について>
・重いテーマもさらりと簡潔に扱える。
・ゲーム性を強く出すことで重いテーマを話しやすくする効果のすばらしさ。
・ゲーム感覚で取り組むことの楽しさ。

・クロスロードは汎用性が高い。質問項目の綿密さがとても重要。
・シンプルに見えて実は深い。
・「遊び心」という要素がとても重要であることを再認識した。
・経験が浅い自分でも議論に参加できた。

・「金座布団」の効果は大きい。
・金座布団がゲーム性を高め少数意見を言いやすくしている。効果のある道具だ。
・少数意見を胸を張って言えるというのは貴重な体験。
・金座布団的あそびを他の場面でも考えてみたい。

・震災について考えるきっかけになった。
・決断することの難しさと大切さ。
・YesNo双方から考えることで自分の思考のかたよりを防ぐ効果がある。
・他者の価値観、考え方を知るよいツールだ。

・アイスブレークしながら成果を求めるやり方(に驚いた)
・アイスブレークに苦心してきた。参考になる。
・自然とアイスブレイクできた。

<活用のイメージ>
・自分がおこなうWSで使ってみたい。
・自分のプログラムの幅が広げられるかも。
・使う場面をイメージしてビジネスに応用してみたい。
・自分の職場で活用するにはどんな場面か考えてみたい。

・数値化、マニュアル化しにくい介護業界の研修では有効かなと思う。
・体験の集積に使えるので環境ボランティア内でつかえそう。
・コンプライアンス研修に有効だと思った。
・新型インフルエンザ対策のようなときに使える。
・悩ましい問題の共有化に役立つ
・チームワークの形成に役立つと思う。
・組織の成り立ちや歴史を知り愛着を持ってもらうのによいのでは?

<さらに工夫を>
・対象者のレベルによっては作問は難しい
・ストーリーテリングの側面が面白かった。もうひとひねりできるかも。
・「する」よりも「つくる」ほうが共感・共有につながる。
・2択ではややつまらない。弁証法的な正→反→合の合にあたる議論ができないか
 な。
・共感・共有はいいが、深みを出す工夫がもうひとつほしい。
・YesNoの後にディベートを入れるともっと有意義になると思う。

■ファシリテーターから
・今回も多くの方に、ファシリテーションツールとしてのクロスロードの可能性を感
 じていただけたようで
 ほっとしています。
・問題作りのテーマを特に限定しなかったので、話題の中心がなく、
 人生劇場のごとくバラエティに富んだ問題が続出でしたが、
 逆に純粋な交流やチームビルディングのツールとしても使えることがわかりまし
 た。
・多くの方が自分の職場や活動の場でどう使おうかと考えてくださっていますので
 今後もクロスロードが発展しながらいろいろな分野に広がっていくことを期待した
 いと思います。
・ディベートとの組み合わせなどもうひと工夫できるのでは、といった
 今後の取組みについての提案もいただいており、さらにプログラムの工夫を考えた
 いと思います。