第71回 2010年1月9日 フィンランド教育に学ぶ対話型コミュニケーション関西支部

第71回関西支部定例会報告


日 時 2010年 1月 9日(土) 12:00〜17:00
場 所 京都商工会議所 2階 第1教室〜第4教室
ファシリテーター 北川 達夫(きたがわ たつお)さん
 
ねらい

本講では、旧来の「教えこみ・覚えこむ」を廃し、「考えさせ・身につける」ことを主眼としたフィンランド教育の手法に従って、対話の技能の育成方法を系統的に紹介したうえで、演習を通じて「対話教育」を体験する。

内 容

1.場づくり

百名規模のため、机は講義形式。レクチャーの合間に、演習(個人&グループワーク)を実施。

2.なぜ外交官から教育者に転進したか

ソ連の崩壊を契機に80年代後半から90年代前半に多くの国が生まれた。
外交官をしていた、北川さん
「言わなきゃ分からない」→知識・見識には、限界がある。理解できない。
という、気づきを得る。

が、やっぱり、方法は「話すしかない」という気づきにたどり着き、
それから「伝えるを極めよう、受け止めることを極めよう」へ。
それでも再び「分かり合えない」という境地へたどり着く。
ループに気付いた時、あきらめずに対話を続けることに意義を見出した。

・フィンランド教育のすべてが、いいわけではない。

−「底上げ」教育でPISAのランクが上がってきた。
−世界で求められている「力」を育むための教育改革に成功した数少ない事例
−歴史は浅い(90年代半ばから)

Ⅰ.世界の変化 求められる力の変化

3.演習1

・個人演習
できるだけたくさんの三文字熟語を書きなさい
(20秒間)

・グループワーク
発問:どういう手法をとれば、できるだけ沢山の三文字熟語が書けるか?

4.レクチャー(1)

激変する社会で必要とされる力とは
・基礎知識の集積だけでなく、必要に応じて
−外部から知識を取得して
−既有の知識や経験と関連付け
−活用する能力(→創造的問題解決能力)

5.演習2

「2」「5」「ネコ」
−この3つの単語を必ず使って、数学の問題になるように400〜600字程度の物語を考えなさい。
・フィンランドの小学校2年生では、即答を求められる。

6.レクチャー(2)

寓話、雛形がある。型通りに書くこと、型通りに読むことを練習する。話をする場合、緩急が付く。問題解決のお手本になる。あらゆることに対して観方ができる。

7.演習3

ちょうど35キロ  二人の男の子
−なぜ、なぜ、なぜを人を変え、主人公が取った行動の理由を推測していく。(読解)
−問題の重層化を読み解いていく。
ⅰどのような問題をどのように解決したか?
ⅱその解決策の良いところ/悪いところは?
ⅲ他に解決策はないか?
ⅳ最善の解決策は何か?

Ⅱ.対話

8.レクチャー(3)

〜80年代:価値観の共有を前提としたコミュニケーション
90年代〜:価値観の共有を前提としないコミュニケーション
→対話:違いを認識し、尊重して活用する。
対話の基本姿勢:
(1)徹底した言語化
(2)知識と経験の共有
(3)戦わない
対話の基礎技能?:エンパシー(自己移入)
相手の気持ちは分からないという前提

9.エンパシー演習

−ちょうど35キロ:対極解決案を論理づける
増やす方法はあるか?
減らす方法はあるか?

10.演習4

「ビジュアル・テキストの解釈」 薬物乱用防止の啓発用パンフレット
−テキストに間違い
 良い点/間違い (なぜそうなのか?)
−ビジュアル
 何に見えるか?
 どのような商品、サービスのパッケージで利用できるか?
 理由はなぜか?

11.レクチャー(4)

対話の基礎技能?:メタ・コンセンサス
−前提:対話は合意形成を目指すものであるが、合意形成を保障するものではない。
−対話を続けることに意味がある。
 対話の目指す合意形成とは、「異なる理由に基づく同意」

対話を阻むもの
−「自分の意見」=「自分自身」という発想
−教養主義的発想(象徴的暴力)
−特殊性への逃避
−価値の絶対化

対話を育むもの
−知識と経験を「共有する」という発想
−「みな違う、ゆえに究極的には分からない」という発想
−価値の相対化
−「自分」を変える勇気

12.演習5

対話のために思考法演習
広場での対話
殺人容疑者を養護する主張を大衆に向けて扇動する。

■感想(藤井)

・自然なコミュニケーションにでも「対話」を目指すため、質問力を磨いて行きたいと感じましたっ。身近な周りの人へ、実践していきたいと思います。

 印象に残った点

・フィンランドの教育現場で、生徒が他の生徒に「絶対違うよ」と言ってしまうと、先生は発言した生徒に『「あなたは、なぜそう考えるの?」と聴きなさい』とアドバイスする。

・対話による合意形成には、妥協もある。