2018年3月ニューズレターにサロンが紹介されました。TOC×Facilitationサロン

TOC×FacilitationサロンがFAJのニューズレターで紹介されました。プロジェクト発足からサロン立ち上げまでを振り返る良い機会となりました。

TOC×Facilitationサロン

「TOC × Facilitation」サロンは、2014 年夏からプロジェクト活動を開始し、2016 年12 月にテーマ型サロンとして活動を開始しました。以来一貫して、「TOC とファシリテーションの掛け合わせ」というテーマで、全国に散らばる運営メンバーと共に、テーマの探求と各地域の人々を巻き込んだ場づくりを続けています。ここでは、TOC サロンを、これまでの活動と共に紹介します。

全体最適をマネジメントする

TOCとはTheory of Constraints (制約条件の理論)の略です。企業や組織の目的(ゴール)の達成を阻害する「制約条件」を見つけ、その" 制約" を最大限に活用することが全体の成果に繋がるという理論で、物理学者、エリヤフ・ゴールドラット博士が小説『ザ・ゴール』の中で紹介しました。小説では、ある製造工場を舞台に、主人公が部下を巻き込みながら工場を再建していくサクセスストーリーになっていますが、軸となるのが部分最適と全体最適という考え方。目の前にあるやるべきと思っていることは実は思い込みである可能性があり、全体を考えると部分の最適化は全体の成果には全く繋がらず意味が無いもの。本当に取り組むべきことは、如何に早く" 制約" を見つけ、そこに集中することであり、それこそが全体最適に繋がる、という考え方から「全体最適のマネジメント理論」とも呼ばれています。

TOCとファシリテーションの掛け合わせ

ファシリテーションにおいてとても大事なことの一つは、参加者の頭の中にあるものを正確に場に引き出して見える化していくことです。私たちは、往々にして前提に囚われがちであり、仮に" 思い込み" があっても中々気づけません。意識的に前提を疑って考え(クリティカルに考え)ないと、思い込みに気付くことは難しいのです。TOC ではこの思い込みを" 仮定" と呼び、その仮定が制約を生み出している可能性が高いと考えます。そのため、思考ツールを使って仮定が論理的に正しいかを検証する『TOC 思考プロセス』を体系化しています。論理的に考えることは話し合いにおいてとても重要ですが、下手に論理性を追求しすぎると、話しやすい場づくりを脅かします。とはいえ、話しやすさを優先し浅い考えのまま結論を出すと、いわゆる集団浅慮の状態になり成果には繋がらない、というジレンマを私たちは持っています。これが、TOCとファシリテーションを掛け合わせて何かやれないか? と考えた出発点です。全体最適の効果的な議論にはTOC もファシリテーションも、どちらも必要。だから掛け算として考える。サロン化前のプロジェクト活動から一貫して、この掛け合わせをテーマとしてFAJ 各拠点での定例会や例会・イベントを通して調査研究活動を続けています。ひとつの成果として2016 年のシンポジウムのF 力測定では、 知能テストではない測り方で 、クリティカルに話し合いをかみ合わせる力を測る方法を考案・実施し、多くの被験者からファシリテーションと相関性のある力を測定できると評価をいただき、2016 年度のアワードをいただきました。

サロンとしての1年間

テーマ型サロンとしての最初の活動は、2 月の関西支部イベントでの話題提供でした。ここでは対立を見える化する思考ツールを活用して、お互いの意見の背景にある要望や共通目標を考えていくことをテーマにしたワークショップを実施しました。この考え方をファシリテーターが意識することは合意形成に役立つという声を多くいただきました。その後、7 月東京、10 月岡山、12 月金沢と各地での例会主催や地域拠点とのコラボレーションによってワークショップを行いました。
2018 年1 月にはサロン化1 周年を記念して、サロンとしてのイベントを東京で開催しました。TOC × Facilitationの根底を支える原因と結果の繋がりを見える化しながら話し合うことをテーマとしました。「新しいものに触れることが出来た」、「論理的な繋がりを見える化しながら話し合う意義を感じた」という声や「TOCとファシリテーションの" 掛け合わせ" をもう少し分かり易く伝えるプロセスが必要では」といった今度の改善につながる声も頂きました。このイベントを通して、より良い話し合い、メンバーの納得度の向上、主体的な参画のためにはファシリテーションは不可欠で、それらはTOC だけでも、ファシリテーションだけでも達成できない、という我々の想いは伝わったのではないかと思っています。そして何よりも、ファシリテーションとTOC のそれぞれのコミュニティの相互交流の場を提供できたことは大きな成果であったと認識しています。私たちにとっても、イベントの準備やプログラムの作り込み時間の確保など、改めて距離を超えて繋がる活動の難しさを感じたプロセスになりましたが、参加者の方から新たなワークのアイデアやフィードバックをいただけたことで、この場から得た実りを次に繋げていこう! という想いを新たにした出発の一日となりました。

サロンになって変化したことや課題、そしてこれから

テーマ型サロンとは、距離を超えて、一つのテーマを探求するためにメンバー同士の活動をFAJ が支援する仕組みです。私たちサロン運営メンバー8 名も、北は北海道から南は関西まで5地域にまたがっています。そのため、サロン設立から1年間、継続して毎月オンラインでミーティングを行っています。
サロンになって変化したことは、運営に関する話題が増えたことがあげられます。プロジェクト時代も定期的なオンラインミーティングは開催していましたが、主に次の例会・定例会企画コンテンツ作りが中心でした。しかし、サロン化してからは、コミュニティに集まってくれた人たちの巻き込み方やサロンそのものの運営基盤づくりが中心になっています。テーマ型サロンが目指すべきは、各地域の自律的な運営と距離を超えた探求のネットワークづくりです。在住メンバーが少ない地域への相互支援活動やメンバーが集まるリアル運営会議のやり方や費用捻出については、継続的な課題となっています。
また、テーマ型サロンということもあり、新たな探求視点を持ち続けていくことも、大事な継続へのモチベーションになると考えています。2 年目の活動を始めるにあたっては、プロジェクト時代から蓄積してきたコンテンツを大切にしつつ、各地域での場づくりを活性化する施策に取り組みたいと思っています。その最初の取り組みとして3 月名古屋では、構成的なワークショップ・プログラムではなく、参加した方の実体験に基づく学び合いを大切にした気軽な勉強会という形で実施しました。多くの参加者に集まっていただき、TOC もファシリテーションも知らない一般参加者の方からは「考えるって楽しいと久しぶりに思えました」という嬉しい言葉をいただきました。
テーマ型サロンの活動はワークショップを沢山開催することではなく、FAJ 内外のメンバーが集まる調査研究コミュニティとして、探求テーマの深まりと距離を超えた繋がりを両立していくことが大切ではないかと考えています。
そのためにも、イベント性のあるワークショップだけにこだわらない場づくりをしながら、"TOC とファシリテーションの掛け合わせ"によって、世の中の話し合いが分かりやすく見える化され、"しっかり"考えることを促し、"じっくり"対話が出来るようになって、ゴールに向かう人々の活動を"より良くしていく"というサロンの信念のもと、探求と学び合いのテーマ型サロンとして今後も活動していきたいと考えています。

TOC × Facilitation サロン世話人
飯島邦子

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