2016年2月13日(土) 関西支部イベント 分科会03関西支部

このページは、2016年2月13日に開催した関西支部イベント 分科会のレポートです。

分科会 03 / 振り返りのフレームワーク「ORID」を極めよう!

ファシリテーターにとって最も重要なことは「プロセスを振り返ること」。
今回は、IAF(国際ファシリテーターズ協会)御用達の定番ツール「ORID(オーリッド)」を徹底解剖。
連続性のある問いにより、生成プロセスと統合プロセスを経て、新たな洞察や結論を導き出すORIDのパワーを一緒に探求してみませんか?

荒金 雅子 (あらかね・まさこ)

株式会社クオリア代表取締役
ダイバーシティコンサルタント
NPO法人日本ファシリテーション協会理事

ダイバーシティファシリテーター/イノベーションファシリテーター。
Standing in the fire認定(2015年)ダイバーシティスペシャリスト。
都市計画コンサルタント会社、NPO法人理事、会社経営等を経て、株式会社クオリアを設立、代表取締役に就任。

長年女性の能力開発、キャリア開発、組織活性化などのコンサルティングを実践。1996年、米国訪問時にダイバーシティのコンセプトと出会い強く影響を受ける。以降一貫して組織のダイバーシティ推進やワークライフバランスの実現に力を注いでいる。近年は組織開発の研究を続け、「学習する組織」「U理論」「アクションラーニング」「ファシリテーション」「女性のリーダーシップ開発」等の組織開発、又、イノベーションファシリテーター及びダイバーシティファシリテーターとして活躍している。

プログラム概要

【参加人数】 参加者13名+ファシリテーター1名+実行委員スタッフ2名(合計:16名)

【自己紹介】「冬」という文字から受けるインスピレーションを五感(味覚、視覚、嗅覚、触覚、皮膚感覚)に沿ってまず個人ごとにポストイットに書き出し、次にグループで共有した。感覚や気持ちなど目に見えないものを具体的に意識する練習を行った。
【STEP1:振り返るってどういうこと?】
自身が何かしたときに振り返る時間をとるか。よく使う「振り返りツール」はあるか。あなたにとって「振り返る」とはどういうことか? などの問いかけ。
なぜ、振り返りが大事なのか。リフレクティブな質問は学習(変容・成長)を生み出すことを確認した。
【STEP2:ORIDのフレーム大解剖】
ORIDとは、カナダのNPOであるICA(Institute of Cultural Affairs)で開発された振り返りのツール。シーケンシャルクエスチョン(連続した問い)により、深い学びと次への行動を引き出すことが可能になる。
*ORID:Objective question(客観的な質問), Reflective question(内省的な質問), Interpretive question(解釈的な質問), Decisional question(決断的な質問)の各レベルの頭文字。
感情にフォーカスした振り返りツールであることが特徴。
<ワーク>
ORIDに基づいた質問の書かれたカードを使い、ペアで質問。質問をしたりされたりする中で気づいたことをグループで共有。ORID質問の効果についてグループで話し合い。違和感のある質問や、使えそうだと思った質問について共有。
【STEP3:使ってみよう価値観ワークでトライアル】
<ワーク>
仕事をする上で大事に思うものの優先順位をグループで決めるワークを行う。そのプロセスをORIDを使って振り返る。
【STEP4:パワフルクエスチョンとORIDの活用場面】
ORIDによる振り返りについて、気づいたこと・感じたことは何か?
パワフルだと感じた具体的な「問い」は? 違和感のあった「問い」は? 新たに「問い」をつくるとしたら?このフレームワークはどんな場面で活用できそう?について、参加者で共有を行った。

ファシリテーター所感

プロジェクトやワークショップの振り返りは、ファシリテーションにとっても非常に重要ですが、その振り返りツールは意外と少ないし、知られていないと感じています。「内省的な問い」を探求し、個人、チームで共有するコトでより大きな変容を生み出す「DRID」というフレームワークはもっと活用されてもいいのに、という思いを込めて提供させて頂きました。短い時間でしたので、ORIDの構成された質問の流れやその意図、組み合わせなどを十分に議論できなかったことは残念でした。けれど、参加者のみなさんが様々な気づきを共有頂き、そのことがさらなる内省を生んでいたことは非常に刺激的で楽しい時間でした。まだまだ日本では知られていない「ORID」というフレームワークが、今度様々な場面で活用されることを期待しています。

参加者のコメント

・ORIDカードの質問群の中からどれを選ぶのが適切かとっさに選べない。
・使えない、というよりも、質問リストに頼ってしまうと、「こと」という言葉に引っ張られ、R,I,Dの各質問段階にあっても、Objective questionに戻ってしまう。
<STEP4でファシリテーターを務めた方より>
ORIDを使用するファシリテーターが質問力(その場に合った質問を選ぶ)を磨かないと、適切な働きかけはできない。

記録者所感

「内省的な質問」が肯定的、否定的双方の視点から用意されているなど、感情面を重視していることがよくわかる構成だと感じました。多くの振り返りツールは客観的な視点を重視することが多く、ともすれば感情面が置き去りにされがちですが、感情が場を変えていくことを考えると非常に合理的で強力なツールであると感じました。ハイコンテクストな文化の日本では感情をしっかり振り返ることは特に有効と思われ、ローカライズを進められたらと思いました。
ただし、一方で、成功に終わったプロジェクトでさえ失敗した箇所を感情と共に振り返るのは危険な作業であると考えますので、当事者の感情部分に入っていく為には、強い信頼関係・ファシリテーターによる場の構築が非常に大切だとも感じています。ORIDを現場に持ち込むためには、ファシリテーターがこの部分についての十分な練習する必要があると考えます。

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