第29回 その2:2006年4月8日 スパルタ道場:要約力を磨く!関西支部

第29回関西地区研究会議事録 その2

日時:2006年4月8日(土)13:30〜17:00
場所:きらっ都プラザ京都産業会館 2Fコンファレンスルーム
参加者:38名
担当:加藤
 
適宜お手伝い:舟橋、堀
テーマ:「スパルタ道場:要約力を磨く!」

意図
FAJの会員として、ファシリテーションの基礎スキルをみっちり磨
く機会をちゃんと持ちたい。今回の定例会では、ファシリテーション
・グラフィックを書く立場になったと想定して、要約する力、論点を
つかむ力に焦点を当てて練習した。
また、良い要約をするための勘所は、実は分かっているようで分かっ
ていない(言語化されていない)。これを少しでも言葉にすべく、皆
で勘所を討議した。

全体の流れ
【1】導入:ファシリテーションで求められる要約の特徴は?
【2】アイスブレイク:漢字一文字で自己紹介
    東京フォーラムで青木氏が紹介してくれたワークを早速実践
【3】お稽古 第1幕:読んで要約
    「読んで要約」できて初めて「聴いて要約」できる
    短文から長文まで6つのお題に取り組み
    一つ乃至二つ終えるたびにグループ内で軽く意見交換
【4】お稽古 第2幕:聴いて要約
    対話やらシンポジウムの長い発言やら3つのお題に取り組み
【5】グループ討議:良い要約をするための勘所は?をアイデア出し
【6】討議の途中結果を全体で共有 
 討議が表面的になってる!
【7】グループ討議:勘所を深堀
【8】全体討議
【9】お稽古 第3幕:最後にもう一度練習
【10】感想タイム

中身概要
【1】導入:ファシリテーションで求められる要約の特徴は?
・入学試験や入社試験で求められる要約とは性格が違う点を確認した:
  −目ではなく耳
  −リアルタイムに要約していかねばならない
   自分でコントロールするのが難しい
    
なので、あまりに長い要約文は現実問題無理
  −正解があるわけではない
   出来映えに対して他人から点数をつけられるわけではない
  −部分部分で勝負せざるをえない
   後からみて「あれはポイントじゃなかった」という可能性もある
  −コンパクトさが必要

【3】【4】お稽古 第1幕、第2幕
・文章で書く人、図解を得意とする人、等いろいろ。
・お手本になりそうな人のサンプルを前に掲示。
・お互いの書き方を見せ合うだけでもなかなか良い練習になると実感。

【5】グループ討議:良い要約をするための勘所は?をアイデア出し
【6】討議の途中結果を全体で共有 
 討議が表面的になってる!
・良い要約をする勘所として、各グループが挙げた典型的なものは:
  −キーワードをつかむ
  −発言相互の関係性をつかむ
  −すてる勇気を持つ
  −あせっちゃダメ  等々
・でも、これらは実は表面的な勘所にすぎないのではないか!?
「キーワードがつかめるのなら苦労はしない」とみんな思っている。
《どうやったらキーワードがつかめるようになるのか?》《具体的にど
 うするのさ?》−−そこを考えねばならない、と全員で再認識した。
・そこで各グループで、「これ」と取り上げた勘所を、深堀。
 
 【7】グループ討議:勘所を深堀

【8】全体討議
・どうやら以下が勘所のようである。

まず、要約という作業を、3つのレベルで捉える。
 (1)
数多ある発言の中から、取り上げて記録する対象をまず絞る
   (というのも、全部を取り上げるのは物理的に不可能だし)
 (2)
取り上げることにした個々の発言を要約する
 (3)
チーム全体の討議を要約する

(1)対象を絞るには?
・いかに上手に手抜きをするか/棄てるか、がポイントである。
・具体的には
  −手抜きをするか否かの判断基準は、テーマに沿っているか、
   話し合いの目的にかなっているか、なので、今話し合っている
   テーマ・目的をちゃんと理解しておくことが必須
  −その意味で、ファシリテーターは、話し合いのテーマに関して
   ある程度勉強しておかねばならない
  −テーマ・目的がよく分からないときには、繰り返し登場する内
   容に焦点を当て、それを重点的に取り上げる
  −テーマ・目的がはっきりしていない(話し合っていく内に、そ
   れらがはっきりしていくような場合など)ときには、とりあえ
   ず全部取り上げていくしかない。特に話し合いの初期段階では
   そうならざるをえないと腹をくくる
・留意点
  −ファシリテーターとして、皆の意見を受け止めねばならないの
   で、ホワイトボードや模造紙上に記録として残さない場合でも、
   一旦きちんと聴いて受け止めることは重要
  (要約のポイントではないけれど)

(2)個々の発言を要約するには?
・キーワード/キーフレーズをどう見つけるか、がポイントである。
 例外はあろうが、以下のガイドラインが参考になりそうだ。
  −繰り返し登場する単語・節
  −発言の最初と最後(そのあたりで発言者の気合が入る)
  −数字:「3つのポイントがあります」「まずひとつには・・」
   といった発言の近く
  −接続詞で判断する:「まず」「はじめに」「つまり」「要する
   に」などの接続詞の直後
   逆に「たとえば」「具体的には」の後は手抜きのチャンス!
・原則どんどん書いていって、あとで大事だと判明したところをハイ
 ライトする、という手段もある。
・お手上げの場合は、発言者に要約してくれるように求める、という
 究極の技もあることをお忘れなく。

(3)チーム全体の討議を要約するには?
・関係性をつかむのがポイントである。
・《その関係性をどうやってつかむのか?》という話になるが、実は
 関係性をつかもうと最初から努力していない人が多いのではないか。
 まずもっての出発点は、関係性を見つけようと意識することだ。
・関係性の基本を頭に入れておくといい。
  −並列
  −対立
  −時間軸
  −因果関係
 ぐらいでたいていは事足りる。これらのうちのどれに当たるのかを
 考えながら、関係性を見つけようと集中する。
 この場合も、道しるべになるのは接続詞(例:でも
対立)。
・Tチャートやポジショニングマップ(2軸のやつ、ね)といったフ
 レームを使って、メンバーの意見を整理するのも有効。まず形から
 入るスタンス。
 これを繰り返していくうちに、関係性を整理する自分の能力も磨か
 れていく。

心構え
・いずれにしても「その人がほんとうに言いたいことは何か?」を考
 える訓練は常に積むこと。
全体討議の場では顕わに出なかったが、個別にお聞きした意見の中
 で、重要だと思ったので、記録しておく

【9】お稽古 第3幕:最後にもう一度練習
・ペンを走らせる音が「減った」!
 皆、まず「上手に手を抜くこと」から意識した人が多かった模様。

担当の個人的感想
3時間半、こういう訓練を皆ですると、全員が「この人の言いたいこ
とは何か?」「この人は、要は、何が言いたいのか?」を真剣に考え
るようになるのだなと実感した(たとえ一時的にせよ)。それが、ピ
リリとした部屋の雰囲気に現れていたと思う。
ちょうど武道の型稽古をしているようなもので、それがファシリテー
ションの訓練の場合でも有効なのだと思う。

 

ワークのポイントを説明する加藤氏     読んで要約、ひたすら要約

                                                キーワードをつかむ、とは?