第7回: 2004年9月4日 FAJ九州研究会のビジョンづくり九州支部

第7回九州地区研究会議事録

≪今回の狙い≫
  ビジョンづくりのプロセスを通じて、発問の違いから導き出される成果、その発問の根底にある目的の違いを再確認する中から、チームの力を引き出すためのファシリテーションのバリエーションを体感していく。その中からビジネス系やコミュニティ系のファシリテーションの相違への気づきとする。

1.アイスブレイク(2人一組になってもらう)(10分)

・「ここまでおいで」
  …お互いに向かい合い、近づけるところまで近づいてもらう。
   近づけた理由、近づけなかった理由を述べてもらい、対人距離感への気づきを共有する。

・「ミラーゲーム」
  …お互いに向かい合い、「親」と「子」を決める。
   親は好きなように動いてもらい、子はその動きを鏡に写るかのようについていく。2分ぐらいで親子交代、同様に動く。
   身体を動かすことによってほぐしていくと同時に、相手の動きを見たり、予測する中から対人関係の構えに対する気づきを持つ。


アイスブレイク後、メンバーを1班、2班の2チームにわける。

2.ビジョンとは?(15分)

◆ミッション、ビジョン、バリューの定義
 ・ミッション(目的)、ビジョン(目標)、バリュー(基準)
 ・カタカナ日本語の訳されかたによるイメージの違いがある
 ・社是、社訓、経営理念なども経営者によって捉え方が違う
 ・各々の定義に注力するよりアクションへつなげることが大事
◆ビジョンづくりのフロー
  ・共有→発散→収束→統合の4ステップ
  ・収束へ向かうまでの「共有→発散」のプロセスをおろそかにせず、最初の事実と意識の共有に時間をかけるのが大事
   →その中から「共感」が生まれると収束は早い

3.ビジョンづくり・パート1(65分)

  1班→大島、久冨、水上
   ●イメージ化タイプ(←外部からどう見られるかを意識)
     ・新聞づくり→キャッチフレーズ化
     ※社会的アプローチ

   2班→鮫島、平山、葉
   ●自分探しタイプ(←自分自身の中にあるものから導く)
     ・フレームワーク型→ミッションステイトメント
     ※個人的アプローチ

4.ビジョンづくり・パート2(60分)
   1班、2班共に各々のアプローチから導き出されたビジョンを素材にしてFAJ九州の「事業計画づくり」を行う

5.発表と振り返り(30分)
   ●「イメージ化タイプ」から導き出されたビジョン→事業計画へ
     →「九州ファシリテーションコンソーシアム設立」
       ・ファシリテーションを教育現場に活かす組織づくり
       ・地域のあらゆる分野の参画を目指す  等々
   〔参加者の気づき〕
    ・まず、目立つことを考えていった
    ・イメージからだんだんと現実的になっていった
    ・メンバーの問題意識や立場の違いが鮮明になっていった
    ・その中から「地域に対する危機感」という共通項が見つかっていった
       ・共有を目指すプロセスの中からビジョンの枠が見えてくる

  ●「自分探しタイプ」から導き出されたビジョン→事業計画へ
     →「これからのリーダー像づくり」
      ・ファシリテーションをつかってのリーダー育成
      ・スターづくり、PR戦略  等々
   〔参加者の気づき〕
      ・自然に流れていき、自己の発見から他者の発見→共通項の共有→一般化が進んでいった。
      ・自分自身の内面からチームや組織にコミットできることを再認識した
      ・個人の背景を素材にした作業が公的なものに変わっていく様子が鮮やかで驚いた
      ・世間、社会、あるいは世界が大きなものになっていっても所詮個人の考えていることが、組織の原点だという事がわかった

6.ファシリテーター雑感 〜今回の狙いに対する意図開きと気づき

当初は関西研究会で行われたビジョンづくりのプロセスのバリエーションを知って体感することをイメージして3パターン(イメージ化、自分探し、事業計画づくり)を3グループに分けて行っていただくよう準備していたが、今回は参加者も少なかったこともあって2グループしかできず、急遽少し内容を組み替えてみた。

準備していた3パターンの中から比較的似た「イメージ化」と「自分探し」を選び、発問の違いから導き出される成果、その発問の根底にある目的の違いを再確認することを試み、その後にその成果をより鮮明にするための方法として「事業計画づくり」という課題を共通に行ってもらい、「締まる内容・成果」を目指した。

結果的に、コミュニティ系の気づきの場づくりを行って、その後、ビジネス系の事業計画づくりを行うというプロセスとなり、このような組み合わせが有効なのではないかと気づいた。また、個人とチームとの関わりにおいて、いかに個々人が「チームに自然とコミットしていく仕掛けづくり」が必要なのだということを感じた。

特にビジネスの場においては、結果・成果を早く求めていく傾向にある(最近はコミュニティにおける市民と行政との協働の場においても同じ傾向にある)ので、とかく「共有→発散」(引き出す)というプロセスを面倒に思われて端折られてしまい「収束・統合」(まとめる)というプロセスに気を取られがちである。

しかし、その「面倒」を切ってしまうと、メンバー同士も疑心暗鬼となり、結果的に良い成果を生み出しにくいと改めて感じ、「オフサイトミーティング」の効用もここにあるのだろうと改めて確認した。

ファシリテーションには、例えば「効率」と「非効率」といった対極にある概念を時に「両刀使い」していくような感覚が必要だろう。

よく対比される「ビジネス系」と「コミュニティ系」のファシリテーションの一長一短をうまく活かしあいながら、チームの力を引き出すためのファシリテーションのバリエーションを使いこなしていき、これからもより良いものを目指していきたいと感じた。