2023年 3月 25日(土)
オンライン
尾上昌毅、米岡裕美、豊嶋新一、中島美暁、浦山絵里(ファシサポ委員)、岸 靖久(FAJ会員)
尾上昌毅、米岡裕美、豊嶋新一、中島美暁、浦山絵里(ファシサポ委員)、岸 靖久(FAJ会員)
15名
0名
【本テーマの主目的】
ファシリテーションサポートデスクには、FAJ外からファシリテーションに関する様々なご相談や依頼が寄せられ、これらに対して依頼者に質問したり確認するヒアリングというプロセスをはじめとした一連の対応過程がある。お話を伺うなかで現場にあるニーズの芽を大事にしながら、依頼者に次の行動につながる何かが生まれてくるのを私たちがどう支援できるのかを模索している日々である。こうしたヒアリングと言う場でのファシリテーションをロールプレイでやってみて、依頼者が主体となるためのコーディネーションのキモを事例から参加者と一緒に考えたいと思い、この定例会を企画した。
FAJ会員の身近な現場でも、各種の「相談ごと」を受けることがあると思うが、そういったときに"何をどう聞くのか"という「ヒアリング」をファシサポ委員会に入った事例をもとに考えロールプレイする経験をしてもらう。その経験から、相談してきた依頼者が主体となるためのヒアリングや具体的な支援につなげるコーディネーションに必要な"要素"とは何かを、参加者が考えそれを言語化できていることをアウトカムとした。
【主目的の実施結果】
参加者各人がヒアリングをするうえで大事だと思ったことを言葉にしてくれた。正解がない中で全員が今回の事例をもとに以下のように出してくれた。アウトカムは一定程度達成できた。
どこまでも依頼者の考え・気持ち・何が起きて以来にいたったのかを具体的に聞くこと
依頼者の主体、依頼者の気持ちをしっかり聴く。依頼者以外の人の話も大事なのかな。依頼者の立場や思っていることは掘り下げる方法もあるが、組織全体で把握している現状の問題にギャップがある場合もある。組織の問題に気づいてもらうようなアプローチも必要
事例のやりとりを聞いていて、その人に空気感・オーラを合わせていくのが大事
うまくいかなかったときのヒントがたくさん出た。組織全員参加の場合むりやり参加してる人もいる中で、いかに気づいてもらうことを増やすか、ワークの組み立てが大事。依頼者以外の人や雑談も含めて、実態を聞けるのが大事
言語化されていない最初の依頼文にあるような抽象化されている裏に隠れている、本当の課題は何なのかを常に想像し、確認してすり合わせていくのが必要
ヒアリングの段階で、依頼者の期待していることとこちらの解釈がずれないように、途中でのすり合わせが重要な要素。気づいたらずれていて修正利かないとこまで行かないようにするのが重要。割り切りも大事
依頼者が話されていることと、組織にとって何が必要なのかはもしかしたら少し違うかもしれないので、周りの方にも話を聞くのが大事。組織の全員が参加する場合だと一層難しい。受講者が役立つ、というワークを提供しないと満足につながらないのは難しい。Fって様々な側面があるので、何を取り上げるのかは考えどころ。
わかってない人達から来る依頼文も多々ある。わかってないことに気づいてもらう話し方や問いかけが重要なんだ。
わかってないことがわかってない人はいる、「どうなりたいですか?」 これって大事な言葉やったんかな。この回答から、次の質問が出せるのでは。
ヒアリング...始まる前は依頼者からやりたいプログラムはどんなのかを聞くのかと思っていたが、依頼者の人柄やポジションを知ってからその先に行かないと、依頼者の求めるプログラム作りはできないんだな。いうがままに進めるのではなく、依頼者のことを知るのが大事。
依頼する方の課題とゴールの姿を明確にすること。課題も、本当にリアルで解決したい課題。一番Fが必要だと思ったときの具体的な状況を明らかにするとか、本当に望む姿を明らかにするとか。
ヒアリングで大事なことって、依頼者と信頼関係をつくって、依頼した背景を探ること。関係者も含めた形で背景を探るのが大事。
言葉にならない背景から、本当にどうなりたいか、を関係者を含め、ニーズを引き出して、それを見た上で、これをやったらきっとよくなる、という期待感を一緒にすり合わせていく、のがFAJならでは。
話題提供者の話を聞いていて思ったのは、依頼者と一緒に、研修を作っているんだな。それが大切だし、これがFAJらしさ。
【実施内容】
第1部では、昨年6月に開催されたファシリ―ションサミットでのポスター発表内容をベースに、ファシサポ委員会に現在どんな種類の案件が来ているのか、どう実施までもっていっているのかをデータでご紹介し、それをもとに小グループで対話する時間を設けた。
対話のあと以下のような感想が出された。
依頼案件数が多いけれど実施件数が少ない 選べるんだ!
件数が多い このメールが来るたびに受けて、ミーティングをして相談して決めているのかな?時間取られている?
依頼してくるところはさまざまということだったけれど、FAJという名前で依頼してくるというのはFに対するイメージとか解決策としての仮説を持ってこられているのかな
研修が多いのは、それをすることで問題解決をするのかな?
プロセスを学ぶなどで解決につながることをされているのかなと感じた
行政 会議などの介入依頼だと寄り添うのは大変になってくると思う。ミーティング成果が変わるので寄り添ってニーズを聞くことが必要だと思った。
第2部では、外部からFAJ(ファシサポ委員会)に依頼やご相談が入ったとき、「依頼者のニーズを理解するためのヒアリングをどう組み立てるか」という、ヒアリングの現場をにフォーカスして展開した。
まずは、"ファシサポでのヒアリング経験"として、ヒアリングの背景と、これまでやってきて分かりかけたことをまとめた資料を提示紹介した。
次に、"模擬事例"として、ある学校から来た"教員向けF研修"の依頼をケースとして、どんなヒアリングをするか、個人で考えてもらい、その後2人組で共有してもらった。
ケース内容
国立工業高専で教員をしております、大神と申します。 本校の教職員を対象とした研修会にご登壇可能な方をご紹介いただけないかと思いご連絡を差し上げております。 参加予定人数は40〜50名程度で、講演時間は約90分、ワークショップ形式を取り入れてのご講演をお願いできればと思います。 授業や卒業研究指導、学級運営において、学生たちの可能性を引き出すためのファシリテーションのスキル向上や有効な問いかけ方の習得(+そもそもファシリテーションという概念を知ってもらうこと)を目的にしております。時期的にはX月の平日を希望します。
さらに、1組にはロールプレーでヒアリングをZoomで体験してもらった。
その後、アウトカム、プログラムの骨子を考えてもらった。
第3部は、本年実際に依頼のあった事案で、ある公立学校の教職員向けにプログラムを考案して3月に実施したばかりの「ファシリテーション研修」(対面)をケースとして、会員の岸さんから紹介してもらった。依頼からヒアリングまでをどうやったのか、それを踏まえて当日どう進めたかも話していただいた。この事例についてQ&Aを行い、その後、全体の振り返りとして「相談してきた依頼者が主体となるためのコーディネーションに必要な要素って何だ?」をペアになって考えてもらい、全体で共有して終了した。
【プログラム】
13:00
1.1オープニング:アウトカム、アジェンダ、ルール、役割を紹介
1.2チェックイン:ブレイクアウトルームに分かれて「名前、場所、今日期待すること」を話す
1.3ファシサポの実績データ紹介(2021年度まで)
1.4紹介データを見ての感想をブレイクアウトルームに分かれて対話
1.5メインルームで感想を共有
《休憩1》
2.1ファシサポでのヒアリング経験:これまでやって分かりかけてきたことを紹介
2.2考えてみようヒアリング内容:お題説明、個人で考える、ペアで考える
2.3やってみよう:ペアでヒアリング実施:1組(手挙げ)、準備、ヒアリング、本人振り返り
2.4プログラム骨子の作成:2時間で扱う項目やワークを考案:個人思考、4人で共有、
2.5メインルームで共有
《休憩2》
3.1事例紹介:石川高専でのケース:依頼からヒアリングまで、MFとしてやってみて
3.2聞いてみたいこと(QA)
3.3振り返り:「相談してきた依頼者が主体となるためのコーディネーションに必要な要素って何だ?」を考える:ペア
3.4ペアで話して出たことをチャットに入れてもらい、チャットでチェックアウト
CO:アンケート依頼
17:00
終了後、希望者で茶話会
【参加者の声】
1,良かった点・改善点・お気づきの点
・実際のリアルなケースをもとにヒアリングを考えたり、プログラムを考えたり、そして経験談を聞いたりと、とてもリッチで臨場感のあるプログラムで非常に学びが多いプログラムでした。
・ヒアリングはなかなかテーマにならないから
・実例を聞けたことで、具体的、立体的に課題が見えた点。
・具体的な実施話がきけてよかったです。
・事例を元にしたロールプレイがよかった。ヒアリングが今回のテーマですが、そこからどうプログラムに繋げるか? それを考えた上でのヒアリングが重要だと気付きました。 一点気になったのは、デモで大・神さん=がみさんとの役割を先に言って頂ければ、よりイメージし易かったかな?と思いました。
・進行プログラムの構成が明快で、進行が分かりやすかった。具体的な事例・実話に基づく話だったので、実際的に考えることができた。
・具体的な事例をワークを通して実体験できて、ファシサポの流れの一部が体感できた。
・机上の話ではなく、いまここにあるというものを取り扱ったことが良かったと思います
・今回、事例紹介の話題提供のために参加させてもらったのがきっかけでしたが、途中普通に参加参加者としても興味深かったし、この部分について注目して形にして問いかけられたことも良かったと思いました。
・実際の事例・やり取りが知れたこと。
2,学んだこと、今後に活かしたいと思われたことは何でしたか?
・相手のニーズを聞き出すこと。そして時間が限られる中で、何をやって何をしないかという選択です。
・ヒアリングは依頼者がやりたいことではなく、依頼者の本当の目的を聞き出すことが大事だと学びました。
・ゴールとしてメモしたことを整理して、今後に活かしたい。
・最後の問いに対しての参加者の回答がよかったです。
・依頼者との期待・解釈ズレのリスクが起きないよう、途中の擦り合わせ。 ファシリ側が誘導しないよう、依頼者と一緒に考えること。 この2点が重要で今後に活かしたい。
・"依頼者のニーズの深め方や深める必要性"について理解することができました。「ファシリテーションを届ける」ということがスキルを届けるというよりも組織の問題解決にファシリテーションを役立てるということを感じることができました。機会があれば、ファシリテーション導入の目的を意識したヒアリングをしてみたいと思いました。
・相手(そもそも誰の為にどんな風になるといいのか、なりたいのか:最終的に子供たちの為とか)主体のヒアリング、コーディネーション
・聴くの意味することを深める
・ヒアリング、事前の準備、当日の場作りなどのある意味広義のロジまわりについては、いろいろ観察や判断、協議の場があるかと思うので、そこをもっと大切にしたり関わるみなさんで探究できたり、振り返れたりすることができたらと感じました。
【企画側の気づき】
・ファシサポの活動では、ともすると実施件数や内容など"実施場面"にばかり目が行きやすいが、ヒアリングの部分の重要性についても知ってもらいたい気持ちが、ファシサポ委員にはある。それは会員が普段の現場で相談に応じたり、そこで相手から引き出すというのにリンクしていることを改めて確認できた。
・ヒアリングはどのように大事なんですか? そしてどのようにやっているのですか? までは、今回、言語化できていないと思う。その一方で、ヒアリングを構造化し概念化しようという取り組みは初めてであり、やった意義があると感じた。
・「寄り添うってどうやるのかな?」という質問があったが、良く考えてみると、こちらにそういう気持ちはなかったが、結果的には寄り添っているかも。相手が主役って相手を認めるとか対等であるということで。もしかしたら寄り添うっていう言葉は、誤解を招きやすいかも。
(寄り添う側の方がランクが高そうに見えちゃう:寄り添ってやっている、という感覚)
・ヒアリングの模擬ケースと、現実の事例をリンクさせた仕掛けは良かった。おそらくヒアリングのコツと言った資料だけ見ても広がらないし、事例だけ見てもそれだけで終わりがち。ロールプレイと事例を絡めたのがよかった。
以上
尾上昌毅(FAJ会員)
2023/4/23