2004年度07月定例会 ライブ!教育現場のファシリテーション ――ようこそ先輩森さんの授業から学ぶ東京支部

第9回東京地区研究会議事録

■日時 :7月24日(土)14:00〜17:00
■場所 :日本経営協会(NOMA)研修室
■参加者:40名(泡の会23名、泡の二次会8名)
■講師 :森時彦(FAJ副会長、テラダイン?GM)
■内容 :「ライブ!教育現場のファシリテーション
            ――ようこそ先輩 森さんの授業から学ぶ」
■ファシリテーター:西田(メイン)、古岩井(サブ)、石渡・尾村・趙(アシスタント)

1.イントロ・ガイダンス(西田) 14:00〜14:05
趣旨及びスケジュール説明とアシスタント紹介

2.森さん講義とQ&A 14:05〜15:10
○講義題名『Management of Innovation』(イノベーションをマネジメントする)
[導入]
森:『さて、皆さん、何を聞きたいですか、今日?』
    ・これは、自分がアメリカのビジネススクールで衝撃を受けた
    ある教授の授業スタイル
    ・しかも、アメリカでは、その瞬間にバババッと手が上がること
    にも驚いた
    ・日本では、...手が挙がらない(苦笑)
森:『皆さん、どんなところに興味がありますか?日本ファシリテー
  ション協会の皆さんですから、バーッと手が ...挙がりましたね
  (笑)』
   ⇒参加者の「興味があること」を引き出し、発言を必ず復唱して
    ポイントを確認(板書:西田)
    以下、参加者の「興味があること」:
   ・森さんの、このような授業に対する個人的な情熱
   ・What is innovation?
   ・講義を受けている今の学生のレベルは
   ・イノベーションはマネジメントするのではなく、ファシリテー
   ションするものでは?
   ・GEにおけるワークアウトからシックスシグマにおけるファシリ
   テーションの変遷
   ・イノベーションを生み出すプロセス
   ・イノベーションは個人の資質なのか、努力によって可能に
   なるのか
   ・イノベーションの担い手は誰?
   ・大学発のイノベーションにおけるリスク
   ・Innovation of Managementにも触れてくれるのでは
   ・Innovationの継続
森:『知識ではなく、思考プロセス重視でいきます。知識の源は世の
  中にはありあまるほどあり、ネットを使えば簡単に 得ることも
  できる。だからこそ、それをもとに自分で考えることができるよう
  になることが重要』
   [本編]
   「Innovationとは何か?」
       〜事例:EMIにおけるX線CT装置の衰退〜
   −X線CT装置は、1973年に商品化された
   −徐々に認知され、売り出し五年後のピークを境にご衰退し、
    10年後にはEMIは撤退
森『EMIはなぜ衰退したのか?知識ではなく、思考プロセス重視
  なので、皆さんどんどん答えてください』
    ⇒参加者から「考え」を引き出していく(板書:西田)。
    (森さんは、発言者のすぐそばに行って話を聞くなど、講義室
    内をぐるっと歩き回る...)
    ・マーケティング失敗
    ・競合相手
    ・知的財産戦略の問題
    ・開発した技術が不完全
    ・他社がEMIにない新技術を開発
    ・製品化する力が弱い
森『なぜGEやシーメンスは基本特許をおさえられている中で、
  勝って行ったのか?』
森『ベンチャーファンドは、どういうベンチャーに投資するでしょうか?
 アメリカのアンケートの  結果があるのですが、?技術、?製品、
  ?人物、それぞれのパーセンテージを皆さん書いてみてください。
  皆さんがベンチャーファンドだったらどうしますか?...ちょっと聞い
  てみましょうか。 どなたか自分の意見を言ってみたい方?』
  (アンケート結果は、?20%、?10%、?70%)
森『InnovationとInventionの違いは何だと思いますか?あれっ、
  手が挙がらない...。 皆さん、ファシリテーション協会の人たち
  (ジョーク交じりに参加者を刺激!?
   ⇒すぐに参加者の手が挙がる)』
○講義は、上記のように質問を投げかけ、しかも「ファシリテーション
 協会の人たち...」と刺 激しながら、参加者の積極的な発言を
 促しつつ、「Innovationとは?」や事例紹介・解説 Innovation
 とInventionの違いなどを説明
○適宜、最初に参加者から聞いた「興味のあること」にも答えていく


2.個人振り返りと休憩 15:10〜15:25
   各自で、良かった点と改善点をメモする

3.グループディスカッション 15:25〜16:10
   ・全体を3グループに分ける(単純にテーブルで割り振り。各
   グループ13名程度)
   ・良かった点、改善点を3つずつ、模造紙にまとめる
   ・時間は30分(⇒結果的には時間が足りず、15分オーバー
   で成果物が完成)

4.休憩&貼り出された結果を各自見る 16:10〜16:20
   (机をどけて、椅子のみの配置にする)

5.全体ディスカッション(振り返り) 16:20〜17:10
   ・グループ毎の発表と質疑、および森さんのコメントを頂く形式で進む
   ・並行して関西から来られた「ファシリテーション・グラフィックの
   鉄人」加藤氏にFGをご披露いただく

   ▼模造紙を使ったグループ発表(アシスタントファシリテーター
    より)

    ?趙グループ
     ■良かった点
      ・質問:使い方、全てに答えようという姿勢、タイミング、問いの
          立て方
           <例>Why〜?の使い方、「不思議って思いま
              せんか?」
      ・ロジカル:Q&Aが的確
      ・笑顔、声のトーン、ジェスチャー、動き
     ■気になった点
      ・全体の流れが見えにくかった
      ・参加者を選んでしまった
      ・後半は講義型であった(One to N)
      ・横文字が多いが、フォローが少ない
      ・最初に集めた質問の結びつけが欲しかった

    ?尾村グループ
     〜森さんへのフィードバック〜
     「ココはよかった!!」
      1)導入部(ツカミ)が良かった
        (聞き手の興味を引き出す)
        全員参加の雰囲気
      2)問いかけの仕方 「何故」を考えさせる/自分のことと
       して考えさせる
        ・パワーポイント
      3)"インストラクター"としてのPresen力
        声のトーン
        目線
        机間巡視
      (注:机と机の間を教師がまわって歩きながら指導する
      こと。教育用語)
     「ココはこうすれば...」
      1)テーマ「Management of Innovation」についての明確な
       msgが得られなかった
        (Innovationはよく分かった)
      2)結局は一方的^^;
        ・質問の答えから理解度を確認すれば良かった
        ・質問の答えをシナリオに活かせれば良かった
      3)参加者を選ぶ権威的雰囲気
         ex.ポケットに手を入れる、ジャック・ウェルチ風

    ?石渡グループ
     <良かった点>
      1.問題意識の投げかけ
      2.質問→参加(考えさせる)
      3.競争意識の喚起
      4.トピック→流れ
     <改善点>
      1.環境設定(ホワイトボード、書記etc)
      2.事前課題があるともっといい
      3.態度の改善? →目線は対等に(どこがファシリ
       テーションなの?)
      4.受講者同士の対話
      5.休憩時間の使い方
         →考えさせ方の導入(ヒント...etc)
      6.本日全体のプロセスのデザインをも少しするとよい

▼全体ディスカッション−森さんとの質疑応答(F:西田)
森さんコメント:
○ 環境設定:イスの配置や複数のホワイトボード、場所、香り、音響効果などの物理的環境を整えれば、よりインタラクティブなムードづくりはできる。宗教儀式 がそうですね。あの環境の中に入るとほとんどの人が心を洗われるような気持ちになる。しかし、今回はあえてそういう準備をしなかった。実際の教育現場や、 日々の会議でそんな場面設定ができる機会は少ない。教師側のちょっとした話し方の工夫で、ここまではやれるという問題提起をしてみたかった。

(それでも、相手が育つためにはある程度の環境設定が必要なのでは?という意見に対し)環境設定の重要性を否定するものではない。「環境が整わないとでき ないの!?」という投げかけです。「環境設定がなければファシリテーションができない」「インタラクティブにならない」ではなく、普段の生活の中で自然に 「もっとインタラクティビティの高い社会にしたい」というのが私の思い。そうすれば、「1+1>2」になっていく。

○ インタラクティブな授業では、教える側にも発見がある。
○ 知識の源は世の中にありあまるほどあるからこそ、それらをもとに「自分で考える」学生に育っていって欲しい
○反省点... 与えられた1時間という制限の中で4つのテーマこなそうとした。そうしないとManagement of Innovationという大テーマをカバーしきれないと。しかし実際には、思い切ってテーマを2つ程度に絞り込んで、もっと突っ込んだ議論を促すべき だった。これは実際の教育現場における重大な課題を反映しているかもしれない。カリキュラムに盛り込みたい量と時間との葛藤です。

○ 本日の終わり方:模擬講義なので制限時間が来た時点で終わろうと考えていた。特に意識したものではない。
○ 大学院の学生の反応:「イノベーションという言葉を初めて知った」「こういう授業は初めてだ」
○ 日米の学生の反応の違いは大きいことは理解しているが、今日はあえてアメリカ型の比較的一般的なスタイルにした。その中で、どうしたら日本の学生がもっと授業に参画できるようになるかを、皆さんと考えてみたかった。
○ 私のミッション:反対意見は個人攻撃になると恐れて発言を控える。あるいは単に違う意見を述べているだけなのに個人攻撃と捉える癖が、日本人には少なから ずありますね。議論するときに、「個人攻撃をしない」「個人攻撃ととらない」という自律した精神をつくっていきたい。

○ (グループディスカッションで、堀さんが厳しい突っ込みをしていた[cf.どこがファシリテーションなの?] が、堀さんと森さんとで、ファシリテーションの考え方が違っているのでは?)
  ⇒堀さん種明かし「今日、全員が森さんに率直に物が言えるかどうかが心配だった。だから、各グループにちょこちょこと顔を出しては、批判的なコメントをし た。私が真っ先に批判的なことを言えば、皆さんも批判的な意見を遠慮なく言えると思って...。私と森さんでファシリテーションの捉え方にズレがあるわけでは ない。お互いにファシリテーションの定義は"人と人との相互作用を促進すること"だという共通認識がある」

本日の講師の森さん メインファシリテーターの西田さん
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