2018年12月合宿定例会『組織が動く"ミドルアップダウン"が創り出す場の秘訣をファシリテーションの視点で紐解く合宿定例会』東京支部

調査研究:東京支部 2018年12月度合宿定例会

テーマ

『組織が動く"ミドルアップダウン"が創り出す場の秘訣をファシリテーションの視点で紐解く合宿定例会』

開催日

2018年12月1日(土)~2日(日)

会 場

碓氷峠コテージ「くつろぎの郷」

企画運営担当

チームち~む:飯島邦子・長橋良智・柳隆文・東憲治・辻真弘・(花田孝之)・(本橋邦弘)(以上、FAJ会員)

参加者数(会員)

10名

テーマ詳細 プログラム内容 担当者振り返り 参加者コメントなど

<概要>
組織開発とは、人と人の関係性や相互作用にフォーカスし、組織の力を最大限に引き出していくこと...。知識創造プロセスの比較研究で著名な野中郁次郎氏はトップダウンとボトムアップという西洋の伝統的マネジメントでは、組織的知識創造に必要なダイナミックな相互作用を促すことはできない。更には、ミドルアップダウン型が実現できている組織こそ、最も強い組織力を発揮する、と論じている。
この合宿企画では、FAJに所属している会員は何かしらの組織に所属し、その組織の力を引き出し、貢献したいがために、ファシリテーションの学びをしているという前提のもと、日常から少し離れて、美しい自然の中で、組織とファシリテーションについてチームでじっくり考える合宿定形式と定例会。
中心となる考え方は、野中郁次郎のSECIモデル、そしてEdgar H.Scheinのプロセスコンサルテーション、等、様々な組織開発に関連する素材を取り入れながら、この"組織の力を引き出すファシリテーション"を参加者と共に深めていく。

<プログラム>
Day1
・オリエンテーション(OARR)
・導入ダイアログ
・マネジメント体験ワーク
・話題提供(SECI・ミドルアップダウンマネジメント)
・Day1クロージングダイアログ
Day2
・朝の散歩(内省)
・チーム活動体験ワーク
・話題提供(グループプロセスコンサルテーションの氷山モデル・プロセスとコンテント)
・えんたくんカフェ
・ハーベストタイム
・合宿のチェックアウト

MF・担当者振り返り
この2日間のテーマは、SECIモデルが回る場の重要性とその場におけるファシリテーションでした。
SECIモデルとは、知識変換モードを4つのフェーズに分けて考え、それらがスパイラルアップしていくことで組織として戦略的に知識創造(イノベーション)していくという野中郁次郎先生らが提示したナレッジマネジメントの考え方です。
我々の仮説としては、『ただ、知識伝承されていくためのナレッジマネジメントをすれば組織が成長するわけではなく、そのSECIが回る場には様々な場があり、そこに適したファシリテーションも様々であること。例えば、その人にしかできない技術やあり方という暗黙知ならば共に共通体験をする場のファシリテーション、氷山モデルの水面下にある思考・感情という暗黙知ならば深い対話の場のファシリテーション、etc.そして、それらがマッチした上でミドルからトップへそしてメンバーへと繋がっていく場が創っていけたならば、SECIがスパイラルアップし、組織が成長していく。』というものでした。
その仮説のもと、今回の合宿定例会では、リアルな組織に起こりがちなプロセスを体験する「マネジメントゲーム」を皮切りに、SECIモデルと組織のミドルアップダウンマネジメントをテーマにした企画チームメンバーの論文を取り上げ、話題提供しました。一日の終わりのダイアログでは、体験ワークとリアルな実体験との繋がりを考える対話の場となりました。また、二日目はチームでの協働体験ワーク「シグナルポール」とその振り返り、グループプロセスコンサルテーションから氷山モデルの考え方とプロセスにもタスクプロセスとメンテナンスプロセスがあるという話題提供を行い、ファシリテーションのプロセスへの働きかけを如何にSECIを回す場に活かしていくかを考えました。
企画当初はミドルアップダウンマネジメントというテーマとチームアクティビティとの繋がりに悩みましたが、マネージメントゲームでは、まさによくあるマネジメント実体験の省察を引き出し、シグナルポールでは、その振り返りの話し合いにおいて場のプロセスが動き、この振り返りのプロセスを振り返れたことが今回の合宿で大きな気づきを引き起こしました。二つのアクティビティの振り返りには動画を活用し、リアルなフィードバック体験から考える時間をつくりました。
SECIの「場」を回していくために、場づくりの技術であるファシリテーションを共に探究していくという立場の私たちとして再考したい点は、我々の仮説をもっとしっかりと伝えてもよかったかもしれません。また、話題提供の内容とアクティビティとを紐づけていく「問い」の立て方と「介入」にもまだ工夫が必要だと思っています。そういう意味では、2日目の振り返りで、もっとガッツリ話し合う場を作ったら、その後のワールドカフェも深まっていった可能性があると考えています。
全体としては、会員限定企画で1泊2日の合宿形式をとった定例会は、組織開発というテーマを考えるには、通常の場とは違う雰囲気の中で対話をすることは効果的であり、このテーマに思いを持って参加する参加者の皆さんに助けられました。

スタッフ振り返り
合宿定例会は、泊りがけ企画になることもあり、日程告知がもう少し早めに行えるよう、企画内容の確定を前倒しにしていく必要がありますが、今回はテーマが難しく、企画詰めが難航し、運営の詳細が確定するのも直前になってしまいました。打ち合わせも当日になった部分もありましたが、企画チームの現場対応力で合宿運営を乗り切ることができました。また参加者にも大いに助けていただきました。
〇参加人数:12月開催ということもあいまって、想定よりは少な目となりましたが、結果としてはちょうどよい人数になりました。
〇合宿会場:過去チームち~むで合宿を行った実績のある碓氷峠のくつろぎの郷の体育館をベースに活用したため、運営はしやすかったと思います。
〇食事:夕食は隣接する温泉施設で各自精算。2日目の朝食はコテージで自炊としました。朝食作りでは、食材の調達料も丁度よく収まり、皆で協力しながら作る過程も合宿ならではの時間となりました。
〇経費徴収方法:懸念だった合宿にかかる経費の集金については、現地集合現地解散とし、交通費や食事を個別精算として、一括で予約する必要があった宿泊経費のみを事前に集めることにしました。集金方法はPassMarketを活用して宿へのキャンセル対応を行い、集金金額は少な目に設定することで、当日不足分のみを集めるという形をとり、不明瞭なお金を発生させないよう意識をしました。細かい余剰金は発生しましたが、現地で参加者に復興支援活動への寄付という形を了承していただくことで、お金の流れを明確にしました。
※なお、合宿形式にすることによる旅行業法への対応については、会員限定企画であり参加費無料であることを明記することで、抵触しないことを確認の上、実施しました。

参加者コメント
・ともどんの論文からの話を最初にインプットしたら、どう感じたか気になった。
・プロセスの影響を与えてくれたこと。マネジャーゲームでは情報共有の安全性や本人の役割・行動の認識が深まった。シグナルポールは単純に面白かった。理由は情報を多く持っている人と持っていない人で共有がないまま各論に入る。ファシリテーション的にはただ待っているしかなく、質問がない。また、参加者からの様々な企業の問題の話などが勉強になった。
・SECIモデルの論文発表がこの2日間何を学んだかはっきりさせた。
・MGゲームでGL体験で思ったことの確認の大切さを知った。シグナルポールでタスクに囚われているとファシリテーションの基本が飛んでしまうことを知る。自分の職歴とのアナライズができた。今まで知っていたこと、やっていたことを別の視点・論点から見直すことができた。
・タスクプロセス・メンテナンスプロセス・SECIモデルについて考え深めながら、いろいろな参加者との対話・ワークを通じて、様々なことに気付きました。「問いかけること」「聞くこと」「暗黙知から感じること」「共有すること」など合宿体験の中で多くの気付きました。
・タスクプロセス・メンテナンスプロセスが1番持って帰りたいキーワードとなる。しかし、ミドルアップダウンは殆ど深堀できなかった。
・シグナルポールの体験は合宿ならでは体験。全体的に熱量抑えめ感じが参加して楽しかった。ただ、チームを考えるという点では、もう一歩メンテナンスプロセスに踏み込み、それをどうやるのか?SECIをどう回すのか?考えてやってみて、それを振り返るということもあって良かったのでは?具体的な課題をくれた人に対して、何か皆で解決するようなプロセスも有ればいいと感じました。

報告者

東憲治・長橋良智・飯島邦子

報告日

2019年1月5日