2019年9月定例会1『〈対話〉と〈投票〉をつなぐファシリテーション』東京支部

調査研究:東京支部 2019年9月度定例会

テーマ

『テーマ1:〈対話〉と〈投票〉をつなぐファシリテーション』

開催日

2019年9月28日(土)

会 場

かつしかシンフォニーヒルズ・レインボー

講師・ファシリテーター

徳田太郎(FAJ会員)1名

企画運営担当

飯島邦子 (以上、FAJ会員) 1名

参加者数(会員)

33名

一般・見学者数

0名

テーマ詳細 プログラム内容 担当者振り返り 参加者コメントなど

【プログラム概要】

「多数決」に対して、どのような印象があるだろうか。「投票をすること」と「多数決で決めること」はイコールなのだろうか。「対話は決定のための話しあいではない」というが、では意思決定において、対話は必要ないのだろうか。この定例会は、職場や地域の話しあいを、より豊かなものにするための〈対話〉の基本と、決めごとにおいて納得度を高める、〈投票〉の効果的な用い方を学ぶ。さらに、「積極的合意形成」や「創造的問題解決」が難しいようなイシュー、たとえば、社会的・政治的な「やっかいな問題」に対して、ファシリテーション技術は、あるいはファシリテーターは、どのように寄与できるのか、対話と投票という一見相反する行為はどのように繋がっているのか、参加者の皆様と共に考えていく定例会である。

【企画の目的】

創造的問題解決や積極的合意が困難であるような問題に対して、ファシリテーション技術は(ファシリテーターは)どのように貢献できるのか、多くの会員と共に考えたい。

【参加者のアウトカム】

「対話と投票を組み合わせる」という手法を自分なりに身近な現場で活かしてみようと思えている。

【企画の目標】
上記アウトカムに到達していること。併せて参加者から企画目的に関する新しい知見が得られていると尚可。

【当日のプロセス】

・スタートまでの時間で3で使うアンケートを事前徴収
0)はじめに:お互いを知ろう
・ラインナップでFAJ歴でグループをつくり、自身のお気に入りについて1つ紹介し合う
・ミニレクチャー:入力(正統性)と出力(正当性)の話
・グループ対話:問い「正統性と正当性、より重視するのはどちら?」
・全体シェア
1)<対話>のポイントを探る
・ミニレクチャー:交渉・討議・対話・討論の話。
・グループ対話:問い「先ほどの話しあいどうでしたか?」
・グループ検討:問い「よりよい対話にするためにどのような働きかけと心構えがあるとよいでしょうか?」
・バザールでシェア
2)<投票>のポイントを探る
・ミニレクチャー:ボルダルールの話(多数決≠投票。投票の仕方で結果は変わる。結論だけでなくそこに至る理由に着目)
・質疑:カリスマの意見に引っ張られることはないのか?小グループとは何人くらい?等
3)対話と投票をつないでみる
・ワーク:山手線新駅名称を決める。
・小グループで理由の検討・全体共有→簡易ボルダルールによる予選投票→全体での理由の検討→簡易ボルダルールによる決戦投票
4)効果的なつなぎかたを探る
・グループ対話:問い「対話×投票を単純多数決と比較し結論の質や納得度の点で評価する。現場でどのように活用できるか?効果的なつなぎ方は?」
5)おわりに
・アウトカムの確認
6)今日の定例会プロセスのふりかえり
・企画目的に関する新しい知見・フィードバックの共有。

【参加者のコメント】

●単純多数決と比較し対話×投票を結論の質や納得度の点で評価してみる。
・対話×投票モデルは、判断基準の納得度が上がる。
・納得感がある
・上がるかもしれないがリスク(影響度の高い意見にひっぱられる)もある。
・自分の知らない知識を知ることができる。
・小グループの意見の後の方が全体よりも納得感・質が良かった。
・途中結果に影響される。見える方がよい?見えない方がよい?
・単純な多数決の含むリスクをちゃんと理解しておかないと。
・対話が直接気持ちを変えるものにはならなかったが、判断材料は増えた。ガス抜き?
・むしろ投票シールに誘導されたかも。
・納得度としては、投票シールによって、よくわからないけどまぁいいか、と思わせる。
・見せると流される⇔自分の意見表明をし流されない。整理する。最初の投票の意義。
・対話の組み合わせで結果・納得感が変わる。
・複数の投票はあり(間に意見交換)。何でそう思っているのか、自分の意見を熟慮する。意見が変えやすい。
●現場でどのように活用できるか?効果的なつなぎ方は?
・ボルダルールは職場でも使えそう。
・職場で導入する場合に工夫が必要。
・表彰制度。
・アイデアの絞り込み。
・ボルダルールは平均的な人気度や賛否両論あるもの、両方に使える。
・(決戦は)目をづぶって挙手や、1枚シールでも同じか?
・プロセスが見える+理解が深まる。
・自分で話す・聴いてくれる→参画意識。
・参加者のモチベーションを上げる。
・結果の質を担保するには最初のカード(選択肢)を上質にする。
・プロセスに時間がかかる。時間的制約ある時は使えない?
・まちづくりとか多い人数・不特定多数の意見を集約する(安心感・透明性)。
・関係性の薄い人々の団体。
・自治体。地域。政治・国会。NPO
・マンション管理組合。
・飲み会。
・AP開発で使えそう。
●今日の定例会プロセスのふりかえり
・テーブルの大きさ。4人グループ。
・それぞれの解釈があったことで違いが生まれた。狙いだったのか?
・対話が少し長かったかも。
・介入する必要もあるかも。
・投票の数が多すぎたのか論点が定まらなかった。
・対話になるようなコンテンツだったら良かった。(駅名は好き嫌いしかない。FAJの施策なんてどう?)
・やって欲しいテーマをこれで出すと良いのでは?
・多数いる所の方が投票に有効かもしれない。
・合意できる人数⇔合意できない人数を繰り返すといいのかもしれない。
・問い(話す内容)が段階になっている(2つをいっぺんに1つの時間で話す)。終わりの方が掘り下げ浅いかも。
・途中で声掛け(タイムキープ)があるとよいかも。
・投票の可能性は感じた。投票と多数決の言葉に何か引っ張られている?何か強い印象があるかも。
・パワポ資料を後からもらえて助かった。
・模造紙・付箋・A4自由に使ってよい、ということの良し悪しは各自あった・・・。
・投票の仕方。ビジュアル。面白さ。
・自分ごととしてとらえる工夫。
・大きいサイズと小さいサイズの対話にした狙い(小サイズを2回にしなかった理由)は何だろう?
・安定感(さすがな)。ホールド感、ゴールに向かってる感じ。
・楽しく体験した。守られていた。

【話題提供者コメント】

「対話前の単純多数決投票」「対話前のボルダルール投票」「対話後のボルダルール投票」のすべてが違う結論となり、貴重なデータが得られました。これはまだまだ深掘りできるな、という手応えを感じると同時に、社会的ジレンマへの「投票」の適用における制度設計の重要性を、改めて痛感させられました。ただ、参加者からのフィードバックにもありますように、「山手線の新駅の名称」は、対話(理由の検討)の題材としては今一つで、改善の余地があると感じました。ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました。

【企画運営振り返り】

人数が多いならみんなで話し合って納得できる結論を出すのは無理、意思決定は難しいもの、というファシリテーションの思い込みを保留する、まさに調査研究を行った定例会だった。単なる多数決とは違うやり方があること、そこに対話をかけ合わせることの効果や影響を体験から学び取り、会員のファシリテーションの可能性を拡げることが出来たと思われる。
また一連のプロセスの終了後に、話題提供者が考えたプログラムデザインの意図開きを行い、参加者共に振り返ることから、会員にとってはワークショップのプログラムデザインの学びになり、話題提供側としても扱うワークのテーマやプロセスの改善への気づきを得ることが出来た。

報告者

飯島邦子

報告日

2019/10/11