2020年03月定例会テーマ1レポート『アートファシリテーションでワークショップデザイン』東京支部

調査研究:東京支部 2020年03月度定例会

テーマ

アートファシリテーションでワークショップデザイン

開催日

2020年03月28日(土)

会 場

ZOOMオンラインミーティングシステム

講師・ファシリテーター

薮田 雪子(FAJ会員) 1名

企画運営担当

時久 剛、飯島邦子(以上、FAJ会員) 2名

参加者数(会員)

9名

一般・見学者数

1名

テーマ詳細 プログラム内容 担当者振り返り 参加者コメントなど
【概要】

今では、気軽にワークショップに参加することができるようになった。丁寧に設計されたワークショッププログラムも沢山増えてきた。しかし、ただワークショップに参加して学んだ気になってしまったり、出来合いのプログラムのファシリテーターをするところだけにフォーカスしてしまっている人が多くなっているのではないだろうか?という薮田雪子さんの問題意識から、この定例会は生まれた。
ファシリテーターになる方法は千差万別、ファシリテーターの数だけある。でも、頭で理解したり、誰かが作ったプログラムをやってみるだけでは、ファシリテーターとしての応用力は培われない。やはり、応用力を培っていくためには、自分自身でプログラムコンテンツを作り、それを自分自身でファシリテーションしてみること、そして、しっかりと振り返りを重ねること。それをやってみるところがFAJの定例会であるはず、という想いを込めて、この定例会は企画されている。まさに「体験する→考える&自分で作る→やってみる→ふりかえる」というプロセスを体験を通して考える定例会である。
体験するワークショップは「アート鑑賞ワークショップ」。これはこのFAJの定例会から創り出されたプログラムである。芸術的思考を「見る力」「対話する力」「聞く力」「楽しむ力」という視点で鍛える。今回は、この「アート鑑賞ワークショップ」の一部を体験した上で、実際にワークショップをデザインし、全員でその体験を分かち合う。
当初はリアル会場で実施する前提のプログラムであったが、COVID-19の影響でオンライン定例会となったため、プログラムデザインを大きく変更し、オンラインに対応できるよう様々な工夫を組み込んでの実施となった。期せずしてではあるが、アートとワークショップデザインをオンラインで融合するという、まさに調査研究のワークショップとなった。

【プログラムの流れ】

11:45~
●開始までの時間(スライドを画面共有)
オンラインzoom環境のチェックを促すスライドを掲示。
12:00~
●オリエンテーション(スライドを画面共有)
FAJのこと、定例会は会員の相互研鑽・学び合いの場であること、話題提供者・企画者メンバーの役割について共有。
話題提供者自己紹介とzoomを利用するにあたってのルール等、を確認しあう。
●チェックイン(ギャラリービュー)
今日の目標は?
●アイスブレイク(画面共有⇒スピーカービュー)
アートカードを画面表示(一枚ずつ⇒全体を一覧)し、好きなカードを選ぶ(かぶった場合はジャンケン)
それぞれが、理由を話す。
12:40~
●アート鑑賞ワークショップのインストラクション(スライドを画面共有)
改めて目的の確認「ワークショップの作り方をアクティブラーニングで学ぶ」
定例会の意義を確認「体験する→考える&自分で作る→やってみる→ふりかえる」
●アート鑑賞(スライドを画面共有)
ゴッホの絵画を鑑賞。
13:05~
●アート鑑賞の意図開き(スライドを画面共有)
自分との対話、他者との対話、作者との対話を促している。
●プログラムデザインのミニレクチャー(スライドを画面共有)
目的と目標。ワークショップの方針を決める。やりたいこと/やれること/やらなけれなならないことの重なり。やれることにはオンラインを考慮。その上でプログラム詳細を考える。
「最も大切なことは失敗を恐れないこと」
~休憩5分間~
13:30~
●グループワークですることのインストラクション
ブレイクアウトルームでおこなうワークの制限時間は50分。そこで20分間のワークショップをデザインする。
~30分たったところで休憩5分間~
その後、グループワークの続き。
各グループはGoogleドキュメントで書き出すチームや紙芝居を作成するチーム等それぞれで工夫していた。
14:30~
●それぞれのデザインの発表
各グループの代表から発表。
①客観と主観の見える化
②見えないコロナをアートで表現しよう
③アート作品のタイトルを付けよう
発表を聴いたうえで、全員でやってみるワークショップを一つを決める。
~休憩10分間~(ワークショップ実施チームは打ち合わせ)
15:40~
●ワークショップを体験
②の見えないコロナをアートで表現しようを体験
●体験をグループでふりかえる
ブレイクアウトルームで体験を分かち合う。
16:10~
●全体共有
グループで出たお話を共有する。
・絵を観て感じることは人それぞれ。
・手を動かすことで、オンラインだけど参加感があった。
・コロナはキャッチーだが目的と合致していたか?
・ワークショップは誰のために実施するのだろうか?
・オンラインの難しさ。シンプルが大事。
・ビジネス領域で感情を扱うのはハードルがあるがアートを活用するとできるかも。
16:40~
●グループ振り返り
自分たちの作ったワークに対する振り返りを行う。
●全体に戻ってQA
Q:脳をアートにするとは?
A:アート鑑賞する時、掲示されているキャプションを読んだり、イヤホンで解説を聞く等をすることが多いが、それは「情報として絵を観ている」ということ。情報の頭で絵を観てしまうと、目の前の絵を観れなくなる。
なので、まず、頭を切り替えるためにアートカードで絵を観る体験を入れ、カードをじ~っと見て、感情を言葉に出す。この訓練が大事で、それを踏まえてゴッホの絵をみてもらう、それが脳をアートにするという意味。
●チェックアウト
~17:10

参加者コメント

・各グループのプログラムデザインに対して、ここまでFBできたのはオンラインだったからかも(独立性のあるブレイクアウトルームだと本音がが言えた)。
・改めてワークショップのテーマ、素材選びは目的に照らして考えることが大事。
・12名が丁度よい。
・ワークショップは不平等は名言。
・アートやれるんだ!あれよあれよと気づいたら17時になっていた。
・リアルで会いたい。
・グループワークの時、隣のグループの声が聞こえないのがいい。
・2時間が限界?と思ていたけど、オンラインなら感情がアートによって扱える。
・プログラムデザインって難しい。全体を振り返って目的と合っているか確認することが大切。
・リアルアートしかダメだと思っていたが、オンラインでもできるという感触がつかめた。
・心地よく、ゆっくり進んだ。深い議論が出来て良かった。
・普通時間に追われる感じになるが、今回は「はじめとおわりはきっちり、だけど中身はゆったり」というワークショップの方針を言っていただき、それがよかった。
・ブレイクアウトルームがクローズドになるので、対立を利用したチーム対抗のワークができそう。

話題提供者コメント

FAJ定例会から始まった「アート鑑賞ワークショップ」を題材に、ワークショッププログラムのデザインができるようになるワークショップを企画しました。最初はリアルで考えた企画がオンラインで、直前になって東京に行くことができなくなり、結局は運営スタッフともオンラインで開催することになりました。環境に邪魔されないように、ZOOMについて研究をした結果、運営側の意図が参加者に伝わったように思います。運営側のチームワークと最後まで諦めなかったことがいい結果に結びつきました。全国のFAJのみなさんともお話ができて、本当に有意義でした。ありがとうございました。

企画者コメント

・やぶちゃんのファシリテーションに熱量を感じ、プログラムを作る時にものすごく研究される方なのだなと直感した。そのやぶちゃんを東京支部とつなぐことで、場を創りたいと思う人が増えればいいな、という想いがあった。また、教える・教わるという関係性ではなく、ホンモノのファシリテーターのファシリテーションを体験してもらいたい、という想いからこの企画にやぶちゃんを招聘した。
・そもそもアート鑑賞ワークショップというものがどういうものか分からない状態で、リアルワークショップからオンライン化することになり、どうなることか不安もあったが、色々な方面から情報を集めて薮田さんに共有したり、事前のテストを何度も行い、トライできたことはよかった。
・当たり前ではあるが、本質はリアルだろうとオンラインだろうと同じで、参加者は誰なのか?その人たちを集めるのは何のためなのか?そしてその参加者のゴールイメージを忘れないこと、というワークショップをデザインする時の大切なことをしっかりと再確認できた良い時間だったと思う。また、zoomのオンラインワークショップ独特な制約でもあるが、参加者をおきざりにしないサイズ感として、且つ、オンラインをファシリテートする側の観点からも、ギャラリービューで一目できる定員に抑えたことはベストな選択だった。
・途中1名接続不調で離脱された。参加者側のネット環境はどうすることもできないので、事前の参加者の環境の確認は重要かもしれない。

オンライン定例会のふりかえり
  1. アカウント
    事前に、ホストアカウントでないとできないこと・できることを確認した。
    FAJアカウントは制約事象を鑑み、話題提供者自身のアカウントを取得して利用することにした。
  2. 事前テスト
    薮田さんご自身が様々なデバイスを活用してテストを行ってくれた。
    直前まで複数デバイスを活用していたところ、当日の朝にしばし接続できなくなるトラブルがあったが、午前10時から企画チームでテストすることにしていたため本番へは影響無く解決することが出来た。
    ⇒直前の設定変更は要注意。時間的余裕が大事。
  3. ブレイクアウトルーム
    人数が必要なため、薮田さんのWSD仲間と共に事前確認・テストを行った。
  4. プログラムデザイン
    当日までの間に、企画メンバーでプログラムデザインと動作確認テストを数回実施した。
    当日の午前中も、改めて、プログラム全体を流し、画面表示の切り替えやブレイクアウトのタイミング、画面共有する資料などを確認した。
    ⇒企画メンバーでプログラムの流れを握り合っていることが重要。
  5. OARRやインスト等の紙芝居
    掲示ができないため、スライド化(4up)し、PDFにして事前に参加者に手元資料として配布しておいた。"
  6. 参加者のzoom環境の確認
    開始15分前から、zoomルームを開き、スタートまでの時間帯にzoom設定の確認をお願いするスライドを画面共有して、参加者自ら環境確認をしてもらうよう促した。
    zoom_inst1.jpg
    ほぼそれでスムーズに確認が出来た。1名だけビデオ表示にトラブルがあったが、途中の休憩の段階で再度入り直してもらって解消した。
    インターネット環境が不安定な方がいて、途切れ途切れになっていた。途中自ら参加を断念されて抜けていった。
    ⇒クライアント環境のスペックはどうにもならない。
  7. zoomのルール
    話題提供者からこの場のルールとして参加者と認識を合わせた。
    具体的には、ミュートにはしない/うなづきは無言で/顔を出してね/バーチャル背景の注意/分からないことはチャットへ/画面設定の変更の仕方確認/途中退室・入室はNG/休憩時間は3回とるよ、等。
    zoom_inst2.jpg
  8. 役割分担
    zoomホストは、ワークショップのファシリテーションとシームレスに行うためにMFが握り、掲示する資料を企画メンバーがMFのインストに沿って画面共有するという連携を行った。
    定例会の冒頭で、役割分担を参加者に共有した。
  9. 定員
    場をホールドする意味でも1画面で確認できる人数に拘った。
    ⇒全体で話すことが出来て良かった。
報告者

飯島邦子

報告日

2020年4月7日