2008年度06月定例会 2.ファシリテーション はじめのい〜っぽ 第6回東京支部

ファシリテーション はじめのいっぽ 2008/06実施報告書



日 時:6月28日(土) 13:00〜17:00
会 場:日本経営協会(NOMA)3F301号
参加者人数:15名(+スタッフ10名)
企画運営担当(敬称略):
・ ファシリテーター:上村
・ スタッフ:池田隆年, 大川喜教, 菊地秀雄, 木下亘, 曽我泰, 中村洋一, 西岡能範, 林正浩, 富士慎一郎, 松尾貴寛
・ ゲスト:なし

ファシリテーションはじめのいっぽ 企画趣旨

はじめのいっぽ定例会の大まかな紹介
1年ほど続いている定例会です。ざっくりいうと「とりあえず、ファシリテーションをやってみよう。やった結果を観察して、フィードバックを返します。」という流れの定例会です。

ポイント
 参加者全員が1度はファシリテータを担当する。
 ファシリテータを経験した人には、スタッフがフィードバックを返す。
 フィードバックを行うために、スタッフが1名ずつチームにつく。

いつものタイムテーブル
Title Time(min) Description Leader
挨拶・スタッフ紹介 挨拶とスタッフ、趣旨の説明
アイスブレーク アイスブレーク
ワーク説明 ワークの流れ説明
ワーク1 work 20 ワーク
ワーク1 Feedback 10 フィードバックを行います。
ワーク3~4 40 ワーク1と同じ流れを繰り返し
全体振り返りや発表 10
アンケート + FAJの歩き方 10





Concept

1. 積極的なファシリテータを増やすために、フィードバックを活用する。
「やったことが無いので、気軽に試せる場所が欲しい」や「ファシリテーションをやるのに不安がある」という参加者のマインドを転換します。実際にファシリテーションを体験させて、さらにフィードバックを返すことで向上心や好奇心を煽り立てます。

2. 企画スタッフも成長しよう。
フィードバックするために冷静に場を見つめることが、ファシリテーションについて深く考える機会になります。なにより第三者視点でミーティングを見つめる機会なんて早々ありませんし、観察するのは純粋に楽しいものです。


はじめのいっぽの論点


フィードバック
現在は各スタッフにフィードバックのやり方を任せています。着目点・重視することは各スタッフにより異なりますが、多様性を活かす為に統一化はしていません。その代わり、チームごとに最低でも2人以上のフィードバックを体験できるよう途中でスタッフの入れ替えをしています。

ケース
ワークのコンテンツにもなる、ケースをどのようなものにするかで毎回悩んでいます。ケースによって参加者の体験は全く異なったもとになるので、よいケースが出来ることがひとつの到達点と言えるでしょう。
ケースの論点
 自然と対立構造を生むものかどうか
 選択を行うものは簡単になりすぎるかもしれない
 成果物をこちらから要求するケースは、「成果物を定義する」というステップを省略してしまう。
 ガイドしすぎるとリアルじゃない。でもガイドしないと難度が高すぎる
 ワークごとにケースを作成するか、それとも全体を通して1つのケースとするか


今までやってきたケースの大まかな流れと特徴
分類 ケース 特徴
4つのケース 「学園祭実行委員の意思決定」
選択肢3回、発想を1回 やや易しく、対立が置きにくい構造だったため参加者は最もリラックスして望んでいた会。すんなり進みすぎてフィードバックする内容が繰り返しになるという危険性もあった。
2つのケース --やっていない-- --やっていない--
1つのケースで
3つの成果物 「シャッター商店街の治安回復アイデア作成」
企画型 :
選択肢1回、以後は発想系 最初に解決の方向性を選択肢で選ばせ、その内容を詰めるという構成だった。最初に方向性を決めてしまうため不自然感が漂っていたが、やりやすかった模様。
1つのケースで
2つの成果物 「自治体で花見の出店企画を作成」
企画型 : 発想系 経営センスの有無がコンテンツの難度を左右している上、40分ごとに成果物が必要となるので難度が高かった。
だが最もフィードバックする内容が多かったともいえる。
1つのケースで
1つの成果物 「新人交流を意識した社員旅行を企画する」
企画型 : 発想系 社員旅行がベースなので、対立が生まれにくい。いつでも「エイヤ」で決められるためプレッシャーがゆるくリラックスして進められた模様。
最後の1人が成果物作成のためのファシリテータになってしまうという問題点がある。


はじめのいっぽの実施記録

開催 その回の特徴 MF
1st
2007/03 ガイドを余りしなかったため、ボロボロになるファシリテータが続出。一方で熟練者が紛れ込むなどとても荒削りな回。その分、全体振り返りが最も効果的に進んだ回でもありました。もちろん池田さんの熟練がなせる業でもあります。 池田
2nd
2007/06 ワークごとにケースを用意した回。すべて選択式のケースであったため、メリットデメリット比較表が全チームに伝染してしまいフィードバックしがいが薄れた回。
スタッフの間ではこの現象が焼きついて離れなかったりします。
この回で導入した「バブルマップ」が好評。また、この回の経験者たちが自主勉強会を始めています。 上村
3rd
2007/09 第1回、第2回とフィードバックシートを進化させ続けた西岡さんの仕事がここでひと段落。
これ以降フィードバックシートには「時間軸」に加えて「空間」が加えられました。 西岡
Facilitation
Park
2007/12 ワークとフィードバックによる初めの一歩とはことなるアプローチを試みた回。
もともとMFを担当していた人が重圧に耐え切れずに脱走...というトラウマ付。 大川
4th
2008/03 大川さんに連投をお願いした第4回。この回でパターン化がほぼ確定。
ケースのつくりと、振り返りのやり方に工夫の余地が残る。 大川
5th
2008/06 今回実施しました。 上村



2008/06月のワークショップ設計
ケース


みなさんは、町内会活性化プロジェクトチームのメンバーです。
みなさんの住む地域は都心から少し離れた再開発まっただ中のベッドタウン。交通や商店などの整備が進み生活が便利になる一方で、住民同士のつながりが希薄になっています。子どもたちを守る防犯活動や、美化・清掃・雪かきといった身近な環境整備、困りごとの助け合いなど、人は増えているのに、町を良いものにする住民活動になかなか人が集まりません。そんな中でもごみ出しルールを守らない住民や、騒音問題、老人の孤独死、治安悪化への不安...といったお決まりの問題がこの町でも散見されるようになってきました。
ここには様々な人が住んでいます。この町を終の住処に決めた一人暮らしの高齢者の方、子供が生まれたばかりの夫婦、働き盛りの方、退職間近の老夫婦や、もちろん育ち盛りの子供のいる家庭も。住民活動に積極的な方も、面倒だという方もいらっしゃいます。
町内会では、住民同士のつながりを太くするのが、地域で起こっている様々な課題に対応する一番の方法と思っています。会って話してみると住んでいる人は皆個性的で、いろんな経験をお持ちで、第一魅力的な方ばかりなのですが...
そこで今回、町内会活性化プロジェクトチームとしては「住民同士のつながりを太くする」ために「町内の交流を増やす」ことを考えました。いろいろなアイデアが出ましたが、まずは、回覧板から手をつけることになりました。「みんなに読まれてなおかつ、町内の話題づくりや課題解決に役立つもの」にしようという結論になりました。

さて、皆さんはプロジェクトチームとして、新回覧板の構成を考えていただきます。
回覧板の内容
 5,6名で編集して月1回発行できる構成としてください
 紙面構成と企画・内容を考えて構成してください。
ワークの成果物
これからファシリテータをバトンタッチしながら、20分*4回で以下の内容を3分で発表できるようにしてください。
 形態と内容
 どのように回覧するかの方法
 なぜこういう回覧板を選んだのか、その理由
 この回覧板にすることで、具体的にどんな効果が得られるのか








進行表

Title Time(min) Description Leader
挨拶・スタッフ紹介 10 挨拶と、この定例会の進め方を説明。 MF
アイスブレーク 10 アイスブレーク
バブルマップに今日やることを記入しつつ自己紹介。 MF
ワーク説明 10
TGT: 13:30 お題の説明 & 作戦タイム MF
ワーク1 20 FB前半
フィードバック1 10 FB前半
休憩 5
TGT: 14:05
ワーク2 20 FB前半
フィードバック2 10 FB前半
休憩 10
TGT: 14:45
ワーク3 20 FB後半
フィードバック3 10 FB後半
休憩 5
TGT: 15:20
ワーク4 20 FB後半
フィードバック4 10 FB後半
休憩 10
TGT: 16:00
成果発表 20
TGT: 16:20
一人振り返り 5
振り返り 35
TGT: 17:00 MF及びスタッフ
アンケート 10
現状復帰 --
合計 250
バッファ20


ワークショップの説明

挨拶・スタッフ紹介
軽く挨拶と、スタッフの紹介。
それと、今日の大まかな流れや企画趣旨の説明をします。

アイスブレーク
最初のフィードバッカーがチームごとに分散してから、今日の目標をバブルマップに書いて自己紹介しつつ発表。
1人1分です。


図 1 バブルマップ

ワーク説明
今回は全員1回はファシリテータをやってもらうこと、20分/4回のどれかを担当してもらうことなどを説明する。続いて各チームには、誰がどのタイミングのファシリテータで、どこまでを成果にするかを決めてもらいます。

ワーク
ワークをします。フィードバッカーは第3者視点を得るために非干渉とします。

フィードバック
フィードバックを行います。フィードバッカーは客観的な事実を伝えると共に、「何が起きていたか」を参加者から引き出してファシリテータへ伝えます。
振り返り 目標の達成確認
まずは自分のバブルマップに記入して、今日を振り返ります。

振り返り
以下、手順
1. 一人で書き込みながら、他の人と共有したいテーマや考えたいことが出てきたか聞いてみる。
2. 先着5名分を共通テーマとしてグループを作り、会話してもらう。参加者の移動は自由。
スタッフは各テーブルに2名くらい着く感じで配分。グループごとの人数均衡は無視。
3. スタッフがテーブルオーナーとしてついて、20分くらい話す。



スタッフの動き

Buddyを組みます
極力、スタッフ全員がフィードバッカー役をやることにします。 前半フィードバッカーと後半フィードバッカーを1組にして、ひとつのグループにつきます。前半フィードバッカーは、後半は参加者として。後半フィードバッカーは、前半は参加者として加わります。

Buddyの構成
・前半FB候補は、当日10時集合できる、いっぽ経験者を優先します。
・後半FB候補は、当日11時30から合流する人、いっぽ未経験者とします。






動き
1. ワーク1,2
前半フィードバッカ : フィードバックを行う( タイマーのお守り )
後半フィードバッカ : 参加者として参加

2. ワーク3,4
前半フィードバッカ : 参加者として参加
後半フィードバッカ : フィードバックを行う( タイマーのお守り )

3. ワーク4の後の休憩
場のセッティング

4. 振り返り
時計回りで隣のグループへ移動してテーブルオーナーになる。



会場設営と備品

会場設営
前回と同じく、最初からシマ化 + ホワイトボード設置。ボードはすべて壁を背にするように設置して、声がなるべく壁に向かうようにする。

配布物
スタッフ用資料

使用した備品
 キッチンタイマー 6台
 ポストイット 3色 5個
 マーカー 5セット
 模造紙 15枚
 養生テープ 3ロール


この定例会のためのTips

 表示の大きなキッチンタイマーをすべてのチームに配布して、残り時間を掴みやすく。
特に初心者はタイムキーピングで失敗しやすいので、残り時間をつかめるだけでも大きな失敗を防ぐことが出来る。


2008/06月の実施とそのフィードバック

ワークの設計について

タイムテーブル
ほぼ計画通りの時間と内容で進行した。ワークショップの性質上、タイムコントロールが非常にやりやすい。

ケース
ワークの感想として、参加者からは
 大変だった
 「本当にどうしよう」と思う場面があった
などの声が聴かれた。やりづらさや失敗体験として捉える参加者は見当たらなかったたため、ケースとしてちょうど良い難度、背景であったと思われる。


フィードバッカーをBuddyにしたことについて
スタッフの人数増加に併せて、スタッフ全員がフィードバッカーを担当できるようにBuddyとすることにしたが、副次的な効果として新たなメリットが見つかった。
 他のフィードバッカーがどのようなフィードバックをしているかがわかり、勉強になる
 フィードバックを担当する回数が減り、フィードバッカーを勤める敷居が下がる。

振り返りついて
今回の振り返りの手法は、全体の振り返りを濃密にする意味で効果があったと思われる。
 メインファシリテータのスキルに大きく依存しないため、この方法であればメインファシリテータの敷居が低くなる。
 全体として意見を募る形式よりも会話が濃密になる


参加者の満足度について

アンケートより参加者の声をいくつかピックアップしました。好意的かつ「自分の実践したい」という声が多く、定例会の目標は高いレベルで成功したと言えます。

「はじめのいっぽ」の経験を好意的に捉えた意見
・ 実際にやってみることがFを学ぶには一番だと感じました。
・ ファシリテーションとしてのアイディアだしの経験が出来たことがよかったです
・ 普段ファシリテーションについて一緒に考える相手がいないので、とてもよい刺激になった。
・ 実践的なファシリテーション体験ができ、ファシリテーションの大変さ、難しさが分かった。


実践につなげたいという意見
・ 会社の事業部ビジョン作りのために会議を開くので、そこで使います。
・ 「失敗を恐れず」を胸に続けて生きたいと思います。
・ 試行錯誤をくりかえしつつ、とにかく現場で色々やってみたいと思います。
・ 「自分の中にフィードバッカーがいるといい」と思いました。会社でも意識し続けたい。
・ 2、3人の少人数のミーティングでも、ファシリテーションを行うことが大事だと思う。



出席率について
この定例会は「全員がファシリテータを経験する」のがコア要素となるため、欠席者・遅刻者の対応に苦慮している。なお、今回の欠席率及び遅刻者数は以下の通り。
 出席率 75%
 遅刻者数 3名

また、第1回目に比べて「ワークショップ経験なし」の参加者が減少しているように感じられる。今回のワークショップ未経験者は4名であった。


以上。

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