2021年2月定例会レポート VUCA時代に求められるファシリテーターシップ 第5弾 『利他学』から考えよう! 「どうしたら人は協力し、助け合うことができるのか?」東京支部

調査研究:東京支部 2021年2月度定例会

テーマ
VUCA時代に求められるファシリテーターシップ 第5弾
『利他学』から考えよう!
「どうしたら人は協力し、助け合うことができるのか?」 

開催日

2021年2月27日(土)

会 場

オンライン(Zoom)

講師・ファシリテーター
話題提供者:小田亮(名古屋工業大学教授)
ファシリテーター:斉藤俊哉(FAJ会員)

企画運営担当

永野直樹、石森昌子、立花浩司、山田一郎、早川聡(以上FAJ会員)

参加者数

会員:79名
一般:8名 

本テーマの主目的・検証したかったこと
狙い:「利他行動の進化」に関する研究成果から人の集団活動を支援・促進するファシリテーターとして応用できることを探る
ゴール:人々が協力し、助け合う社会を実現するための、ファシリテーターとしての知見を得る
主目的・検証したかったことについての実施結果

人間の「生物としての利他性」を理解した上で、人々の協力や助け合いを促すとしたら、
どんなことをするのが効果的なのかをファシリテーター視点で考えてもらうことができた。

実施内容

1.オープニング
2.チェックイン:名前、今いる場所、人を助けた/人に助けられた経験は?その時の気持ちは?
3.話題提供1:利他⾏動の認知⼼理的基盤 -互恵性を⽀えるもの-
4.対話・共有1:わたしたちの身近なグループにおいて、
         メンバの協力を促すために、どんなことをしたら良いと思いますか?
5.話題提供2:利他⾏動の認知⼼理的基盤 -互恵性を超えて-
6.対話・共有2:VUCA時代の社会において、人々の助け合いを生み出すためにわたしたちは何ができるでしょうか?
7.チェックアウト:今日の気づきは?明日からやってみたいことは?
8.クロージング

企画側の気づき

・110名を超える申し込みがあり、「利他」に対する関心の高さを感じた。
・大学の研究者による進化生物学や進化心理学のアカデミックな話をFAJの定例会でぶつけるというチャレンジができた。
・研究者に話をさせた場合、往々にして制限時間オーバーで早口になることが多いので、
 可能な限り事前に資料を共有してもらって話のポイントを絞ってもらう準備が必要。
・話題提供の内容とグループ対話の問いとの間のつながりが弱いとのことで、困惑している参加者が見受けられた。
 これに関しては、話題提供内容を事前に企画側が理解をし、問いに反映できなかった点は今後改善すべきポイント。
・問いのチャンクが大きすぎ、範囲が広くて的が絞りにくいと直接言われた。
 ただし人数次第ではあるが、グループ対話に企画側が加わり、ひと言解説を添えることによって改善は可能。
・企画側が意図した内容を参加者にしっかりと伝えることはやはり難しい。
 実際に定例会等で体験するからこそ、その難しさに気づくことができる。
・モヤモヤが残ったけど、それ故に引き続き利他について考えていきたくなったと思ってもらえたのならば、
 定例会としては成功と言えるのでは。
・もやもやが残るのは企画側の意図するところではあっても、参加者側、特に有料で参加する方の中には本人が期待していた
 ゴールに達成できなかったと捉えられる方もおられた。
 (会員限定の参加費無料のイベントと異なり、会員外にも有料での参加を認めるイベントに関しては、
 投資金額に見合うだけの完成度を期待されるという意見)
・100名近くの人が同じスライドにアクセスした場合、かなり重くなった。
 スライドのアクセス先を4つに分けることで負荷を分散できた。
・利他性には、自分の気持ちの持ちようと行った、内面的なものを想像し期待する人が多かったが、
 利他をやるシステムがあるという結論を最後に言われた事に対し、参加者の期待と違うという声が聞かれたが、
 企画としては、それも内省を促し、学びを引き起こす内容なので、ワークショップとしては良かった。

参加者の声

▼テーマについて
・理系の視点から利他学の話を伺えるというのはとても新鮮で興味深かったです。
・なんといっても、ゲストスピーカーによるプレゼンが非常に興味深く素晴らしかったです。
・「利他」という切り口が斬新でした。様々な立場の方の意見を聴くことができてよかったです。
・利他性が他者から評価が高いから環境としてやっているものだという考え方に驚きましたが、
 色々と考えるきっかけになったと思います。
・利他性について考えるところがあり、テーマがドンピシャでした。
 対話の時間がしっかりあるFAJ定例会の仕掛けも考え続ける手がかりを残せました。ありがとうございます。
・小田先生のお話を伺え、利他学の片鱗に触れることができた。しかし、お伺いした話から
「ファシリテーターとして応用できること」、「ファシリテーターとしての知見」をつかむまでには至らなかった。

▼進行について
・グループメンバーを都度 入れ替えていただき、多くの方と議論できたことはよかった
・企画とブレイク、進行はスムーズでした。ありがとうございます。
・ブレイクアウト中のタイムマネジメントが事前にあっても良かったようにも思います
・オンラインは全体共有が難しいですね。
・スプレッドシートの回線遅延に、臨機応変に対応していたこと。
・大人数にもかかわらず柔軟に対応してくださり良かったと思います。対話については、もう少し具体的に
 インストラクション(説明と可視化)したほうが、オンラインの場合は特にいいかもしれません。
 たとえば、目標(結論を出すのかどうか)、ルール(スライドをどう使ってほしいのか)など。
 人によって対話の仕方の認識の相違があり、テーマに集中して話せなかったこともありました。

▼プログラムについて
・「先生の講演内容」と「グループワークのテーマ設定」をどう関連付けるかが、少し悩ましかったような気がします。
・「VUCA時代の・・・」という問いが抽象的で話し合いしずらかったです。
 でも、皆さんが協力的だったので話し合うことはできました。
・余裕をもった時間配分でゆったりと参加できました。
 しかし、学問的で難しい内容だったので、グループワークで話しているうちに理解が深まってちょうど終了時間に
 自分のなかで噛み合ってくるということが多かったため、
 テーマ的にはグループワークの時間がもうすこしほしかったです。
・先生のお話が、一方的で、理解に追いついていくのに負荷があった。
 (論旨への賛成・反対は別として)これを解消するのに、モデレーターを置き、対話形式にするか一部対話形式を取り入れ、
 それを参加者が聴いているというのはいかがでしょうか。グループ談義の題材にはなっていましたが。
 「急ぎ足のプレゼン」みたいになっちゃってた。

▼学んだこと
・利他がどこまで人間の本性なのかを探求している人がいるということに驚いた
・利己と利他についてもっと深く考えたいと感じました。ありがとうございました。
・本能的に人間は利他的なんだよ。ということを胸にこれからも頑張っていこうと思いました。
・利他を促す社会環境を身近な職場・家庭から取り組んでいきたい
・真の笑顔は、利他の判断基準、笑顔の重要性に改めて意識したこと
・相手とコミュニケーションを取り、相手のために何かをすることは、自分にとっても心地よい気持ちになることなので、
 今後も続けていきたいと思いました。
・利他と利己は両方必要で、利己として自分を大切にすることがまず先決で、その先に利他があると思っています。
 自分を犠牲にしてまで行う利他な行動をなくし、自分のできる範囲で心地よい関係性を作れたらいいと思いました。
 利他な行動が苦も無くできるよう今後も行っていきたいと思います。
・ヒトが生物としてもつ社会性の知識をつけて、ファシリテーションに活かす。具体的には、場づくりについて、
 本日の利他学や行動経済学の視点から再考してみたいと感じました。
・情けは人のためならず、お天道様は見てくれている、この精神でファシリテーションに臨むこと
・利他と利己はつながっているという実感が大切だと思いました。VUCA時代のファシリテーションとしては、
 集団活動を促進する際に、個々人がどんな「利」を求めているかを継続的に可視化・共有することが大切だと思いました。
・メンバーの協力を促すには、協力したくなる環境を作り、互恵的利他主義を実践すること
・小田先生の意見プラス、ブレイクアウトルームでご一緒した方が仰っていた「心の余裕があり仲間がいて楽しいから
 協力し続けることができる」という話を結びつけて,身近な場チームで利他的な行動を増やしたいと思いました。
・ファシリテーターは、まず、ヒトが生物として持つ社会性を正しく認識すること。という認識が持てたので、
 この分野も勉強しようと思いました。
・利他行動に不安はない、という気持ちは強まった。
 「利他↔利己」ではなく「己の気持ちを損なわない範囲での利他をすれば、出来ていない人は曽於の範囲から」
 という考えが自分の中に言語化された。これからもその通りで行きたい。
 (場合によっては自己犠牲的なものも必要になるだろうとは思うが)

当日の様子
小田先生アップ.png

報告者

斉藤俊哉

報告日

2021年3月13日