2023年11月定例会レポート テーマ3『「わかりあえない」からはじめるファシリテーション~傾聴(deep listening)編~』東京支部

調査研究:東京支部 2023年11月度定例会

テーマ3 定例会『「わかりあえない」からはじめるファシリテーション~傾聴(deep listening)編~

開催日

 2023年 11月25日(土)13:00~16:45

会 場

 かつしかシンフォニーヒルズ別館 会議室(ビジュアルルーム)

ファシリテーター・企画運営担当

 ファシリテーター:久木野勉・山口千咲 (FAJ会員)

参加者数(会員)

 15名

一般・見学者数

 0名

テーマ詳細 プログラム内容 担当者振り返り 参加者コメントなど

【プログラム】

今回やってみたのは、対立した議論の途中に NVCの傾聴(Deep listening)ワークを組み合わせてみたら、その後の議論に変化はあるだろうか?あるとしたらどんな変化があるだろうか?そんな実験をやらせていただきました。
これをロールプレイではなく、リアルなご自身の主張として対立しているテーマで行いました。
NVCの傾聴(Deep listening)は、NVC-Japanのページに「練習方法」として書かれている手法をほぼそのまま行っていただき、それで期待通りの変化がおきるだろうかと言う実験になります。
NVCのワークショップでこれまで行われてきたワークをそのまま会議の途中で行う。少し乱暴なやり方かも知れませんが、それでも効果は期待できるとの仮説のもと実施しました。
参加してくださった方たちの中にはNVCを知っている方もいましたが、半数以上はNVCを全く知らない方たちでした。NVCを知っている方も一応知っている程度でがっつり学んだり体験した方は皆無でした。
ワークショップの流れとしては以下のように行いました。
NVCの簡単な説明
NVC傾聴(Deep listening)を体験してみる
議論にNVC傾聴(Deep listening)を組み合わせてみたワーク
対立した議論を行う(10分)
対立しているペアでNVC傾聴(Deep listening)を行う
対立した議論の続きを行う(10分)
ワークショップ・プログラムとしては、3の前に架空のテーマで練習してから、リアルに対立してテーマの議論を行う予定でしたが、時間が押してしまったため、1回傾聴(Deep listening)の体験をした後に、いきなりリアル対立テーマでの議論を行いました。
いくつかの対立テーマを用意していたのですが、3グループで以下の3つのテーマで議論を行っていただきました。
サッカー vs 野球
犬派 vs 猫派
原発再稼働 賛成 vs 反対
例えば「原発再稼働 賛成 vs 反対」を選んだグループでは、リアルな自身の主張として「賛成」の方2名とリアルな自身の主張として「反対」方2名で議論をしていただきました。
その途中でNVCの傾聴(Deep listening)のフォーマットに則って対立している相手の心の奥の声を聞くのですが、NVCを知らなかった人たちがたった15分程度のNVCの説明とたった1回の傾聴(Deep listening)体験だけで行っていただきました。
【アンケート結果】
・テーマの満足度 ★★★★☆(4.4)
・ファシリテーション・進行について ★★★★☆(4.3)
・プログラムの構成、内容について ★★★★☆(3.9)
 
【参加者の声】
セッションが興味深かった
チャレンジングな実験で良かったと思います。ブラッシュアップを重ねると、より良い企画が出来る可能性があると思いました。
NVCの知識がないと十分な企画意図が理解できない(わたしはNVCの知識を持っていませんでした)ことが、案内からは十分読み取れないまま参加していましたが、結果的にはいろいろ学びがあり良かった。
野球対サッカーでしたが対立が生じなかった
nvcに興味を持った
相手の体験に基づく思考自体は究極分かり合えないにしても、その体験や思考の深さによって分かり合えないまま共振は起こりうる。
 
【企画側の気づき/ファシリテータの感想】
まずひとつめのチャレンジとしては、ファシリテーションを志向しているがNVCをよく知らない人たちにとってNVC的な傾聴(Deep listening)が成立するだろうかと言う点でした。
短い簡単なやり方説明の後にペアになった参加者に交互に傾聴(Deep listening)をやってみていただきました。
話し手は「最近感情が動いたできごと」を5分間語っていただき、聞き手は(ほぼリアクションをせずに)頭を空っぽにして、自分の全身を傾けて、耳で聞くのではなく心で聴くことを目指して傾聴する。
話しが終わった後にそこから感じられたニーズ(話し手の『こころ』が大切にしていること)を伝えてもらいました。
やってみてもらった感触としては、お互いの『こころ』の声を聞きあおうと心がけるだけで、それは十分成立しえると感じられました。
傾聴ワーク後の振り返り対話の場でも「ちゃんと聴いてもらったと感じられた」「自分でも気づいていなかったニーズを言われて『確かに!』と思った」などの声を聞くことができました。
それらの声は、NVC講座のようなNVCに興味がある人、NVCを学びたいと思っている人が集まるワークショップと大きな違いはありませんでした。
さて次に、メインのチャレンジ=対立した議論の途中にNVC傾聴(Deep listening)を組み合わせてみたワークを行いました。
体験した参加者に書いてもらった「気づいたことメモ」から次のような声を聞けました。
・リアクションなしの傾聴は新鮮
傾聴から共振が生まれる
理解しあうとは? 統合?
「『わかりあえない』を越える」というフレーズはぐっとくる
傾聴によって「体験・視点」の違い、「根幹」の共通点に気付くことができた
相手の話を聞いた方が素直に共通点が見つかった
ニーズは対立しないのか?
思考は「わかりあえない」くても、統合→協力はできる
氷山の海面の下までくると理解しあえるかもしれない
相手の固有の体験は「了解しうる」⇔追体験
 
振り返り対話から聞こえてきた声からも、NVCを知らない人たちのグループ/チームにNVCのワークをそのまま取り入れるだけでも、お互いの大切にしていること(ニーズ)に視点が向けられる変化が起こる感触を得ることができました。

報告者

 前田卓也

報告日

 2023/12/11