2005年度01月定例会 異文化ファシリテーション − そのギャップ、あなたならどうする?東京支部

東京支部1月定例会

【1:テーマ】
異文化ファシリテーション − そのギャップ、あなたならどうする?

【2:話題提供】
ピョートル・グジバチ

【3:企画・運営担当】
井上、喜多、末広、小方、久保田、稗島

【5:日時・会場】
2006月1月28日(土)13:00〜17:00。日本経営協会(NOMA)2F教室にて。

【6:参加者数】
51名

【7:概要】
・ある文化背景を持つ人物になりきり会議を行う。異文化のメンバーとの
  擬似会議を通して、起こる対立や感情、自分がする対処の仕方から、
  「異文化を受容しながらのファシリテーションの難しさ・おもしろさ」に
  ついて気づきを得る。
・擬似会議で用いる文化背景は、A4のシートに書かれた8項目について
  指示された。
   ⇒《文化背景》「基本的価値観、コミュニケーション、仕事、時間、
    会議運営と意思決定、上下関係、上司に対する礼儀作法、
    フィードバック」

【8:当日の流れ】
13:00 開始・アイスブレーク
  ・ピョートルさんがいきなり英語でインストラクション開始!
    →実はサプライズのため。

13:10 なりきりワーク開始
  ・6グループに分かれ、文化背景を記したプロフィールを配り、読み込ん
   でもらった。
    →用意した文化背景は、文化A、文化B、文化Cの3つ。それぞれを
     2グループずつ配った。

13:20 なりきりワーク1:擬似会議『新商品企画を作る』
  ・自分たちの文化背景にしたがって、部長・課長を決定し会議を行った。
    →グループ内で、A・B・Cいずれかの文化の人になりきるための
     グループワーク。

14:00 グループ間で人事異動(多文化状態を作る)
  ・部長1名、課長1名を各グループで重ならないように入れ替え。
    →上司として、いきなり外国人がやってきたという状態。

14:05 なりきりワーク2:擬似会議『業績悪化のため売り上げ向上策を考える』
  ・異文化からきた部長1名と課長1名が加わった状況で会議を行った。

14:50 振り返り
  ・グループの中で自分がどのような行動をしたか、2つのワークがそれぞれ
   うまく言ったかどうかを「振り返りシート」でまず自己分析し、グループで
  話し合った。
    →「振り返りシート」の回答内容をまとめたものを後日報告。

15:15 ミニレクチャー『異なる文化について』(ピョートルさんによる)
  ・今回体験した文化は、東南アジア(文化A)、日本(文化B)、アメリカ
   (文化C)である。
  ・自分たちが認識している文化は、氷山の一角であり、行動レベル、
   社会規範等の「見えている文化」と(水面下にある)価値観、態度、
   信念のような「見えない文化」がある」。
  ・レクチャー後、それぞれのグループで異文化はどの文化であったか
   共有し、個人で共有の結果どう自分の見方が変わったかを個人で
   振り返る。
    →引き続き、振り返りシートを利用。

15:40 グループディスカッション「自由に討議する」
  ・アウトプットは次の2点であることを伝え、グループの自由に任せた。
    →?何について討議したか。 ?どのように討議したか。

16:20 グループ発表 「グループディスカッションについて」
  ・各チームは模造紙にここの議論を書き出し、それを元に発表。
    →下記の【9:各グループの振り返り】を要参照。
17:00 まとめ
  ・下記の【10:まとめ】を要参照。

【9:各グループの振り返り】
〔グループ1〕主文化:東南アジア(文化A) + 部長:日本、課長:アメリカ
  ・それぞれの文化の人に対してのフィードバック、分析があった。
   (比較的否定的な指摘が多い)
  ・それぞれ単独の文化背景を持つ管理職(部長、課長)も課員(多勢の
   文化)も、自分の文化とそれ以外という区別をしてしまっていた。
    →ステレオタイプ。多元的に考えることが必要である思った。
  ・目的がタスクにあるとは限らなかった。アメリカの文化を持ってきた人に
   とってタスクは目的になっていたが、アジアでは和を重視していたため、
   目的が当初タスクだったはずなのに摩り替わっていた。

〔グループ2〕主文化:東南アジア(文化A) + 部長:アメリカ、課長:日本
  ・自分の役割を演じること、異文化内にいてさらに演じることが苦しかった。
  ・相手の視点が必要であるが、それは相手に興味を持つことが大切である。
   そのために、仕事や共通の目標を達成するためにとか、違うことが面白い
   とかいう要素が必要ではないか。
  ・会議では、メンバーの参加度(かなりまちまち)が共有できていないと進ま
   ない。安全な場を異文化でどう作るかが課題。

〔グループ3〕主文化:日本(文化B) + 部長:アメリカ、課長:東南アジア
  ・共通の言語を使っていても、自分の文化の価値観を載せて伝えたいこと
   がその他の文化には伝わらない。
  ・文化の違いから、独裁的に進めたら、孤立感を感じた(表面上協力して
   くれているようだが、心から協力してくれていない気がした)。
  ・このグループはアメリカから日本への異動だったが、日本からアメリカの
   ほうがあうかも。
  ・異文化で進めていると雑食感・なんでも食べられるようになる≒幅が広がる。
  ・体感(験)による実感、戸惑い。
  ・受容が重要。異文化を受け入れた上で取り入れて混ぜていく。
  ・部下の立場では「はい」と返事しても納得していない感じがした。
  ・文化としてのゆれ、一部がアメリカ側へ傾いて元に戻る。の繰り返しだった。
   働きかけて巻き込めそうになったが結局失敗した。多勢に無勢だった・・・。

〔グループ4〕主文化:日本(文化B) + 部長:東南アジア、課長:アメリカ
  ・なんとなく似ている(東南アジアと日本)のでうまく行っている気がしていた
   が、課長の発言で崩れたりして、部下は"同意したフリ"をしていたようだ。
  ・「一体感があったか?」の問いに対して「一体感:に違和感を感じたという
   意見もあった。
    →アメリカ文化だったら「グループとして何を達成したか」という議論に
     なったかもしれない。
  ・部下(日本文化)が疲れたといっていた(自分の文化なのに)。
  ・課長より部長(東南アジア)部下(日本)で議論の集約に向かっているときに
   一石を投じた。
  ・「違い」と「間違い」は似て非なる。本来は「間違い」は受け入れられないが、
   「違い」は受け入れられる。ただし、混同してしまうことが多い。
    ⇒ピョートルさんより
     ・ アメリカの上司は、みんなで成果を出すように盛り上げる。
     ・ アジア系の上司は階層を重んじ権威主義になりがちだが、アメリカ
      文化に来ると思い通りに動けなくなる。
     ・ ファシリテーションの文化による捉えの違い。
       →1.日本は相手の意見を引き出すことが中心になる傾向。
       →2.アメリカでは勝手な意見を一緒の方向へ向かうようにすること
          が中心。
     ・ つまり、誰をファシリテートするかをしっかり把握しておくことが必
      要。

〔グループ5〕主文化:アメリカ(文化C) + 部長:日本、課長:東南アジア
  ・大変だった!
  ・上司がストレスを感じた。文化について、役割を演じることについて。
  ・異文化が入ると部下(アメリカ)同士の間でも議論が活発になった。
  ・少数派の難しさ。→なぜか?「背景説明が無かったから」。また、役割を
   演じているので、わかっても歩み寄れない。
  ・<部長の気づき>文化の背景(前提)を理解することが大切。たとえば、
   場のルール作りやコミュニケーションのルール作りの打ち手もある。
  ・<課長の気づき>自分は上の意見ばかりを聞き、部下の意見を聞か
   ない。最後に何もできなくなっていった。
  ・<部下の感想>この人(≒上司たち)は、「なんのためにいるんだろ?」
   と感じた。

〔グループ6〕主文化:アメリカ(文化C) + 部長:東南アジア、課長:日本
  ・「うまくできなかったね」
  ・今もっているカルチャーは強い?
  ・部下の文化は数が多いが、権限が弱いので守る。上司の文化は数は
   少ないが、権限が大きいので攻める。
  ・せめぎあいで新しい文化が合意できた。そのことで議論が進むように
   なった。
  ・文化間ギャップは埋められない。ギャップがあることを理解して新しい
   ポイントを見つけて合意する。

【10:まとめ】
 ・異(多)文化が存在する状況下でファシリテーションを実施するときには
  特に、参加方法・参加者の性格・姿勢などの把握に加え、その人の持つ
  文化背景の影響(社会規範・価値観など)を考慮に入れる必要があり、
  一層複雑になる。
 ・表面的な言動を自文化の社会規範・価値観などで解釈し評価するので
  はなく、その背景にある"真意"を理解しようとする姿勢が必要不可欠。
  たとえば、一口に「会議の参加者」といっても、文化背景によって"参加"
  の定義さえ異なる。「着席=参加」の文化もあれば、「発言=参加」と
  いう文化もある。
 ・FAJ内にも、異(多)文化が存在している。定例会がより異(多)文化の
  下で広がりを持つように進めていきたい。

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