2006年度10月定例会 『豚のPちゃんと32人の小学生』〜命の授業におけるファシリテーションとは〜「脳科学と図形認知」東京支部

FAJ東京支部‐10月定例会

・日時:10月28日(土) 13:00〜17:00

・会 場:【定例会】日本経営協会(NOMA)2F http://www.noma.or.jp/

・参加者の人数:71名(うち運営企画チーム5名)

・企画運営チーム:森時彦さん、大木豊成さん、高橋信貴さん、今野浩一さん、鈴木まり子さん

・担 当:西嘉之さん(東京支部運営委員)、高橋信貴さん(東京支部教育系PJ)

・ゲスト・話題提供:黒田恭史さん(仏教大学教育学部教育学科助教授)

・テーマ:

?『豚のPちゃんと32人の小学生』〜命の授業におけるファシリテーションとは〜

?「脳科学と図形認知」

・内 容:

?不条理な、あるいは、答えが一つではない問題解決におけるファシリテーションとはどのようなものか、また、命の授業で用いられた教育的手法とは?

?脳科学の研究方法を題材に、真実を見極めるためには?

・テーマについて

★今回は、「豚のPちゃん」をめぐる教育法だけでなく、最近先生が注目されている、「脳科学と図形認知」の問題を取り上げる意欲的な企画。

テーマ1:「命の大切さを子供たちに教えるために、大阪の小学校で食物用に豚飼育をするという試みがなされた。飼育の過程で豚はペット的存在となる(Pちゃん)。その豚を殺して食肉に供するのかどうか... 子供たちだけでなく、PTAも巻き込んでの大議論となる...」

今回は、この3年間にわたる教育プロセスを試みられた黒田先生をお招きして、教育におけるファシリテーションをテーマに議論し、探る。

テーマ2:黒田先生は現在、仏教大学で「脳科学と図形認知」について研究しており、最近の脳科学には似非科学『トンデモ科学』も多い。そこで、脳科学の研究方法をご紹介いただき、風潮に流されることなく真実を見極めるということについて議論する。

・参考資料:

テーマ??に関連した新聞記事を[faj:48899][faj:4890]のメールに添付する。

「豚のPちゃんと32人の小学生」黒田恭史著 ミネルヴァ書房2100円

導入

13:00〜13:05 今回の定例会を企画運営するに至った経緯、運営メンバー紹介

テーマ?

『豚のPちゃんと32人の小学生』〜命の授業におけるファシリテーションとは〜

(1) 13:05〜13:25 豚のPちゃんのVTRを視聴 (担当:大木さん)

昨年10月たけしの日本教育白書のVTRを参加者に見せる。

(VTRを見せる事に関しては、黒田先生に了承済み。)

・算数の授業に活用する。

・豚肉料理を体験する。

・Pちゃんに好き嫌いがある。トマトが好き。

・食べる事が命のつながり(食物連鎖)だと認識する。

・育てた豚を皆でたべる事が目的であった。6年生の卒業時に下級生に引き継ぐか食肉センターに持っていくかクラス内で議論する。

・下級生に引き継ぐ。→3年生が手を挙げる。しかし、3年生が怪我したら、責任はどうなるの?

・最終結論は「食肉センターに持っていく。」

Pちゃんという名前をつけることにより、家畜ではなく、ペットという家族的な存在となり、情がうつってしまった。

"少しでも生きてくれたらいい"

"少しでも命を延びてくれたらいい"

と、子どもたちが思うようになる。

黒田先生の答え

"食肉センターに持っていく。"

"よかったかわるかったか判らない。一生懸命になれた。"

当時の生徒から

"将来の(自分たちの)子供にも受けさせたい。"

VTRにおいての黒田先生の最後のコメント

黒田先生にとって、理想の教師とは?

"子供達を自立させられる先生"

"正面から向き合える先生が今の日本に必要"

(2) 13:25〜13:30 黒田先生の紹介と一言 (担当:F高橋さん、西さん)

黒田先生の挨拶

・通常は、VTRを一緒に見る。今回は、「使用前、使用後」の自分を見なくて済んだ。(笑)

・先生は、あれ命の教育なのか?食肉センターに行くのは先生じゃないのか?と言われ事もあった。

・充実した一日にしたいので宜しくお願いします。

(3) 13:30〜14:00 個人作業、バズセッション (担当:SF鈴木さん、今野さん)

DVDの視聴の感想、Qを考え。ファシリテーションとのかかわりを引き出す。A3の紙を皆に配る。

個人の感想を書く。黒田先生への質問を書く。

F発表者 A3‐1枚 25分

1、質問を最大5個

2、見えるよう太い字

3、質問形式で

4、質問は簡潔に

5、難しい漢字はひらながで

質問の内容を一枚に纏める。

教育手法

問題解決

合意形成らのプロセス。

命、教育問題、人権

(4) 14:00〜14:20 発表・共有化 (担当:F高橋さん、西さん)

フリップチャートに質問事項をまとめ、1G2分程度で発表。

グループから発表された質問

・Fとして聞きたいところ。

・などなぜ子供達が問題を投げなったのか?

・何故豚をつかったのか?とりではだめなのか?

・最初の目的と最後の目的は一致したのか?

・諮問質問が命の方にいきそう。

・何故ぶたなのか?こどもと一緒に決めたのか?

・ファシリテーターが決めるのが愛であったのか?

・責任をどうやって維持したのか

・どんな構想をもっていたのか?

・多数決をとってきめたのか?

・沢山意見を取り入れようとしたのか?先生ご自身の考えは?

・豚を取り入れる教育の考えはあったのか?

・今の世代に対してもう一度やってみたいか?

・意見を出さない子供にはどのようなアプローチをしたのか?

・準備や飼育にどんな時間をあてたのか?

・どうやって先生は決断したのか?

お墓を使わないで、その場面をどうやってしきたのか?

・意見が対立したときの対応は?

・親の介入で判断した時の気持ちはどうであったのか?

・ブタを食べようとした時の反論の対応

・16対16で意見が分かれたがもし、格差が合った場合はどうしたのか?

・ミーティングの流れ、最後の一票は?

・子供たちの受けとめ方?どんなプロセスを踏んだのか?

・先生が最後決めたとき、なぜ反論がなかったのか?

・親のたちにはどのように対応したのか?

・豚を食べる、3年間の変化をどのように認識したのか?

・PTAの介入。子供達はどのような形で意識した?

・生徒を誘導したのか?

・最後なぜ、先生自身で決めたのか?

・意見の開き、先生が意図していたのか?

(5) 14:20〜15:00 実践について (担当:F高橋さん、西さん)

質問に答える形で、黒田先生に話して頂く。

・"できない事の理由を考えるひと"と"できる方法を考えるひと"の二種類のひとがいる

・何故豚であったのか?の質問に対し→"においがあり、大きいから"

・目的と最終結果→一致していない。豚を食べることが出来なかった。

・筋書きの無い授業はうまくいかない。けども、筋書きのある授業もどうか?筋書きにない授業に価値があると思う。

・自分で振りかえる。客観的に見れた。どのように介入すべきか?押し付けていないか?

・最後の時点では教師達の反発があった。

・謙虚かつ大胆に振舞う。

・6年生の思考力はおとなに近いレベル。

・賛成派、反対派ともPちゃんの命がたいせつであることは、共通認識として共有されていた。そのことをお互い大事にしており、必死であった。

・日本では、一歩出るとたたかれる。10歩出れば、たたかれなくなり、世界が相手をしてくれる。

・言葉だけでは続かない。命の事は、理解できない。

・人間は、感情を持っているし、出すことは悪い事ではない。

・言葉に出なくても、必死に考える姿を大事する。

・勉強よりブタの飼育が難しい。

・こども達が自ら行なっている。

・想定した状況とギャップ

・黒田先生は、筋書きをがっちりつけ、述べるタイプ。路線は変えない。

作戦を練らず、自然体でいく。議論をする時も自分の信念を持って、考えを述べる。

最後の最後のところはつばぜりあいとなる。負けないオーラをかもし出すにより、先生、PTAからの反発を対応できた。

・先生が学んだ事は、教育は、一方通行ではない。

・いのちの授業は何故1回しかしなかったのか?-過去の結果を越えなければいけないので、難しい。

・大学でもビデオを生徒に見せ授業をしている。

・総合的学習の時間との関連

-基礎学力が身についた集団でやればうまくいく。自分の考えを相手に伝え、相手の話しの内容に対して自分の考えをはっきり言えるような子どもたちでなければ、総合学習はうまくいかない。

・その基礎的なところは?

-言語力

-書く、聞く、話す。一番大事なのは、聞く能力である。

-数学的な能力。論理的思考(背理法はきちっとできるか?)

-数字を見積もり、感覚的に捉える能力。

-物事の思考力。

・4,5,6年生で最後まで一緒に携わった生徒1/3。

・4,5年生は、まだ発展途上。6年生は、創造力があり、議論が出来る。

・NHKはこの記録をなぜ放映しなかったのか?

→責任者がはんこを押す前に断った。教育は、ゴールが設定されているものであるという見解の違いから。

・105本の電話がかかって来た。賛否両論あり。

先生は、ファシリテーターと思いますか?

・ファシリテーターではないと思う。

・人のいった事を聞くための気配りはしている。大学の講義で身についている。

cf:黒田先生は講演会、学会でした話をした事は、ご自身で録音機に記録させ、内容と声を分析し、振り替えをしている。

休憩

テーマ? 「脳科学と図形認知」

(1) 15:35〜16:05 話題提供・問題提供 (担当:F高橋さん、西さん)

「脳科学と図形認知」〜真実を突き止めるための眼を養うには〜

黒田先生の最新の研究より

・ 脳の活性化について
・ 東北大学の川島先生と論戦を繰り広げている。

脳科学と図形認識

・脳科学

ALS患者-脳の筋肉が衰える。頭に装置をつければ、イエスorノーが言えるようになる。

わかる瞬間の脳の働きを研究中。

わかった瞬間、脳はエネルギーをつかわない、沈静化した状態となる。

活性化した脳をどう鎮静化するか?

・脳活動計測装置の発展

EEG脳波

PET

空間分解能、時間分解能

・近赤外線による光計測方法

脳内HB(ヘモグロビン)濃度変化計測

・日本の教育は、数と計算に特化しすぎている。空間認知能力に乏しい。

・算数教育における教育指導。

・光計測装置用いた実験の紹介

・脳内ヘモグロビン温度変化の特徴

・わかるとはどういうことか

あっ!

閃く

わからない → わかった。

方略獲得

わからない → わかった。

・ 脳内の生理学的データの取得分析
・ 理解することを生理的に判断。
・ わかる過程を教育として意図的に取り込む。
・ カリキュラムや指導法の改善に役立てる。

(2) 16:05〜16:25 バズセッション (担当:SF鈴木さん、今野さん)

1、どっちが速い?

時間、シートあり

orなし。

5回

合同をさがす。無いもの探す。

<図1>

・学習スピードが上がるのはシートが無いほう。

・シートなしのほうが、学習効果あり。

・シートなしのほうが速い。但し個人差あり。

・合同がないものを探すほうがはやい。

・合同調べる場合は、必ず8回しなければいけない。

・シートに使ってしまうと、思考が伸びない。

・サポートに依存しすぎたら、抜けだすのが難しい。

2、グループで虫食い算をする。

・思考しているときは、ヘモグロビン濃度が上がっている。わかった後や課題が簡単なときは、低い数値を示す。

・光計測装置の限界、脳の中までは検査できない。

(3) 16:25〜16:50 質疑、まとめ (担当:F高橋さん、西さん)

テーマ?、?を終え、参加者の方から黒田先生への興味深い質問、意見がたくさんありました。

・質問に正解あるときの答えのわかる時とわからない時のどうなのか?

・信念をもった瞬間はおちつく。

ご質問のある方は、仏教大学に入学してください。(笑)

黒田先生有難う御座いました。

16:50〜17:00 振り返り (担当:F高橋さん、西さん)

アンケート用紙利用。

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