2006年度09月定例会 国際協力現場に学ぶリーダーシップとファシリテーション東京支部

2006年9月 東京支部定例会記録

■日時:2006923日(土) 13:0017:05

■場所:NOMA

■担当:松下敏治さん

■企画運営チーム:ICA寺子屋メンバー(青山由美子さん、片岡由美さん、片山葉子さん、徳田太郎さん、松下いづみさん、須永洋平さん)

■ゲスト・話題提供:佐藤静代さん(ICA文化事業協会理事長)

■ゲスト:Wayne Ellsworthさん(同 副理事長)

■参加者:73名(担当含む)、オブザーバー3名

■プログラム(予定)

13:0013:30:導入

13:3014:00:話題提供(メキシコの事例)

14:0014:15:ワーク?(3Sモデル?)

14:1514:30:休憩

14:3015:00:ワーク?(3Sモデル?)

15:0015:50:ワーク?(現場でできること)

15:5016:00:休憩

16:0016:30:ワーク?(決意表明)

16:3017:00:全体振り返り

13:05〜 ■担当者より(松下さん)

・テーマ「国際協力現場に学ぶリーダーシップとファシリテーション」

・自分がファシリテーションに出会ったきっかけは・・・

まちづくり→ICA文化事業協会ファシリテーション基礎講座→寺子屋勉強会

・寺子屋メンバー紹介

・海外での国際協力の事例と身近な日々の現場での関わり

・東京運営委員紹介

13:10〜 ■参加者の期待(グループワーク)

13:20〜 ■期待について全体でのシェア

・国際協力の視点からリーダーシップがどう展開されるか

・いろいろな国の文化の違いがある中、リーダーシップ、コミュニケーションが難しいのではないか? どうやっているのか興味がある。

・漠然と興味がある。日本の中でも県民性の違いによる異文化を感じることがある。

・ICAとは? The Institute of Cultural Affairs→佐藤さんから説明

・松下さんから

リーダーシップのスタイルの変遷

農耕社会(専制君主、宗教的リーダーによる支配)→工業化社会(ルールによる管理)→情報化社会(Fが必要)→これから・・・ 時代の要請として自律分散が求められている。

13:28〜 ■佐藤さんから

○自己紹介

 なぜメキシコか。自分が関わっている。人間開発の中でいろいろなステップを踏んできている。ファシリテーションが大きな役割を果たしてきている。

 29年間、ファシリテーション、国際協力に関わってきている。最近はグローバル、将来から現実を見る、個人ではなくグループで知恵を出し合う時代。そのエネルギーをどこから出すかという点でファシリテーションが重要。

○テーマ「国際協力現場に学ぶリーダーシップとファシリテーション」

 「コニュニティーに住む住民が最大の専門家である」という理念に基づいてファシリテーターを務めている。ファシリテーションの研修も行っている。

○ICA、ICAジャパンの変遷、活動説明

○実践事例(3Sプリント配付)

・スラム街に住む女性の生活向上(メキシコチアパス州)...先住民族が多い。スラム街は山の斜面に立地。政府は不法侵入者と見なしている。

・目的はスラム街に住む女性と子供の地位向上。

・ICA、メキシコ政府、チアパス州行政、現地NGO、アメリカNGOが参加。

・支援の対象は戦争、宗教上の対立で迫害を受けてスラム街に住み着いた女性。

・スラム街は貧困と暴力が支配する世界。

・寡婦やシングルマザーの家庭が多くある。

・子供たちも路上で働いて収入を得ている。

・男尊女卑、夫のアルコール中毒、家庭内暴力、レイプが女性を苦しめている。

・プロジェクトの実施におけるリーダーとファシリテーターの関係について。ICAはファシリテーター。リーダーの可能性がある女性にリーダーシップが発揮できるように支援する。

・プロジェクトにおける基本的流れ

A、B、C村参加者の夢・希望→根本問題→提案

・現地ファシリテーターとICAスタッフの役割説明

意見の集約→評価項目→決断(10段階)ニーズの高いものから実施

・第1段階のニーズの把握

ワークショップで女性(リーダー)の抱える問題の把握

・第2段階

現地女性リーダーにワークショップの手法を指導(問題、ビジョン・夢・希望を)

・第3段階

現地女性リーダーによるワークショップの実施

・自立のための3Sとその効果

?Self Esteem:犠牲者意識からの脱却→いろいろな人たちとの交流(自信)、即興劇(家庭問題の認識)、ダンス(表現)

?Self Awareness:可能性への目覚め→自分の可能性の認識(過去・現在・未来を書く、過去の経験を人前で話す、言葉によるコミュニケーション)

?Self Responsibility:責任ある行動→識字教育、パソコンで手紙を書く、職業訓練(例:薬草研修、学んだことを後輩に教える、裁縫技術の習得、きのこ栽培)、起業家教育(民芸品、伝統的織物製作、菊栽培)、経営技術→自立

?→?→?

Q:3つのSの順序、?と?はどうしてこの順か? 

A:この順序でICAが始めたから。階層があるというわけではない。

14:00〜 ■ワーク1「3Sモデル」の感想

〈カンバセーションタイム〉メキシコの事例、リーダーの3Sモデルを聞いてグループ内で感想を共有する。

3人1グループ(15分間)

■全体での共有

Q:男性はどのような関わりをしたのか? 男性はいやがらないか?

A:極端に女性の地位が低い場合、男性と一緒にやれるようにする。最初はいやがるが、女性を尊敬するようになる。その結果、女性も男性を尊敬するようになる。

感想:DV、事業再生で3Sが気に入った。負け組は犠牲者意識が強い。勝ち組はセルフレスポンシビリティが強い。

Q:リーダーを選ぶとき、地域に入る時、どうやって信頼関係を作ったのか?

A:どんな場合でも、合意形成が大事。何かやってやる、ではなく、一緒に同じ目的を追求しようという姿勢でいく。子孫や地球環境をどうするかを考えていることを伝える。地域をよく知っている人、長年地域で働いている人に仲立ちしてもらって進める。お金のためにやるのではないことをはっきり伝える。

14:20〜 ■休憩

14:35〜 ■休憩中に受けた質問のシェア

Q:活動に興味を示さなかった人はいないのか。

A:最初は自分の利益を考えて来る。興味を失う人もいる。50人集まって残るのは20人。敢えて追わない。2回目には、1回目に参加した人の変わった姿、成功例を見て参加する人が増える。

Q:活動における子供と母親の関係は?

A:最初は母親、子供は離れようとしない。何ヶ月後には自立する。

Q:夫との関係は?

A:研修に来るだけでも暴力をふるっていた男性が、コーディネーター(F)が家庭訪問し説明したところ変化した。家族、地域を巻き込むことが大切。

14:38〜 ■「焦点会話法」のスキル説明(プリント配付)

・会議において会話を持続するためのファシリテーションのステップ

・O(客観的:最も簡単な質問、五感に訴える質問)

・R(内省的:反応、連想、感情に関する質問)

・I(解釈的:意味、価値、目的などに関する質問)

・D(決断的:では将来どうすればよいか、という質問)

14:50〜 ■ワーク2「ORIDで討論」〈ORID質問タイム〉

O〜R〜Iまでを進める。

3人1チーム(20分間)

・全体での方法説明と例示。

・3人でORIそれぞれの担当を分担する。

・質問はプリントの例に示されたもので、質問者は交代していく。

15:15〜 ■ワーク3「ICA方式で討論1」〈一個人が現場でできること〉

D(決断的質問)〜これまでの質問から全体でシェアできること〜

個人作業:一人1項目1枚以上にまとめる(2、3分)→3人グループで書いた内容を発表→グループで内容を3つに絞り込む(5、6分)

15:32〜 ■休憩

15:45〜 ■全体会

具体的なカードを3枚選ぶ→代表者が読み上げる(質問)、似たものをグループにして張り出す(違ったものに着目する)

○各グループのカード内容の発表

・フレームワークを使ってみよう

・身近な人を誘ってみよう

・はじめの一歩を踏み出す

・あきらめずに自分で続ける

・業務上にもわくわくイベントを

・できることから手をつけて自信をつける

・新聞発行する

・自ら汗をかく

・お祭りなど一緒に遊んでみる

・関心事を知る

・自分がどうしたいか思いを語る

・自らがまず動くこと

・自らの変化を自ら始める

・小さな目標設定

・相手の意見を尊重する

・ビジョンのスケッチ大会

・茶話会を開く

・アクション宣言する

・一人一人が自分の役割を自覚する

・私はこれをする、あなたはこれをして(要求をはっきり)

・場を作る

・障害を取り除く

・自分が笑う

・目標達成に向けコーチングする

・提案をする

・ねばり強く続ける

・自己表現して身近な人を巻き込み認識を共有

・情報の共有、発信

・発想のアウトボックスを心がける

・自分の所属する組織の現状を客観的に見つめる機会をつくる

・危機意識を煽って課題を発信する

・あるべき姿、方向性の提示

・ゴールをイメージ化、当事者意識の醸成

・行動計画を立案、実施

・場を知る

・場に元気を注入する

・場に自分ができることを提供する

・話を聞く

・ネットワークを作る

・いつも笑顔でいる

・自信を持って変化を起こす

・コミュニケーションを促進して、共通意識を持つための対話の場を持つ

・今自分がやっていることを何につながるかみんなで考える

・小さな変化に注目する

・今に満足せず変化を楽しめる集団にする

・よい人の行動を見てまねをしてもらう

・困っている会社に親会社のメソッドの導入を手伝う

・小さい成功体験を積ませる

・自分がまず変化する

・客観的に見た危機意識の共有化

・チーム間の潤滑油となるものの企画

・お互いに対して介入しあう

・新しいものを生み出すため自分の得意にしていたものを捨てる

・一人一コミュニティオーナー制、二足のわらじ

・先送りしない

・事実を見る

Face to Face

・周りの方と話をしてみる

・定期的に意見を発散させる場を持つ

・鬱の勉強をする

・小グループを作って話し合い、自分たちの使命を確認

・敢えて嫌われ者になる

・ビジョンを共有

・改善点の提案をする

・全員で集まりお互いの言動を受け止めあう場をもつ

・グループのキックオフにかこつけてワークショップをする

・メンバーそれぞれが表現する

・共有できる場を自らが作る

・パンドラの箱を開ける 

○発表と同時にグループ分けをする

○一枚だけのカードをグループに入れる

→12グループにまとめられた

○各グループにタイトルを付ける(担当を決め、分担して行う)

16:30〜 ■タイトル発表

「温故知新」

「仲間をつくろう!!」

「できることからコツコツ」

「諦めない」

「仕事でワクワク みんなでニッコリ」

「情報発信」

「問題を引き出して共有」

「みんなでやりたい姿をみんなで考える」

「良く聞いて良く話そう〜徹子の部屋〜」

「得意でないことをやる」

「役割宣言ファイト一発!」

「場 信創変楽」(信頼関係がもてる場、変化を楽しめる場)

「現実を知る」

16:40〜 ■佐藤さんの解説

・メキシコの事例では、この後、達成するためにはどんなことをするかについて取り組む。

■ワークショップを振り返って

Q:メキシコでも同じようなことをやったか?

A:今日は絞ってやった。メキシコでは各村に出向き、夢・希望を聞くところから始めた。女性たちに次にどう進みたいかについて、行った。

Q:読み書きができない方のコミュニケーションのツールは?

A:読み書きできる人ができない人の発言を書いた。そのためにファシリテーターのアシスタントをつけた。

Q:男性側に対するアプローチは?

A:メキシコは女性問題が大きかったので、その解決をまず図った。その後、男性に進む。最終的に男女一緒に、が希望する姿。

Q:リーダーを集めたワークショップのファシリテーターは現地の方。ファシリテーターをサポートするのはICA。そこでの苦労は?

A:まず、見本を示した。

Q:女性が変わるために必要な時間は?

A:3ヶ月で変わる。次のプロセスを踏むと全体が変わるのは1年ぐらいの期間。挫折する人をどうするかが課題

Q:地域の人々の「能力」とは?

A:自分にどういう能力があるかを自分で発見すること。そして、使ってみること。ファシリテーターは潜在的能力を引き出すことが大事。

感想:一言ですごく難しいなと思った。ビジネスの世界で生きていると、感情より思考が先にいってしまう。

佐藤:感情をストレートに出せればコミュニケーションがうまくいく。日本人は言えない。 これを出すことによってよい人間関係が生まれる。感情を出しながら考えることをもっと素直にやれるといい。

AHDS 2008について(Wayneさんから情報提供)

                                  以上

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