2007年度11月定例会 編集術とファシリテーション東京支部

■ 2007年11月24日 FAJ東京支部定例会 『編集術とファシリテーション』

【定例会概要】
■テーマ:『編集術とファシリテーション』

■日 時:2007(平成19)年11月24日(土)

■会 場:日本経営協会(NOMA)2F

■参加者人数:82名(見学6名、運営スタッフ6名含む)

■企画運営担当(敬省略)
・講師:大川雅生氏(編集工学研究所 イシス編集学校頭取)
・ファシリテーター:飯島
・スタッフ:西田、野沢、山内、喜多

■内容:
今日のテーマは「頭の中を覗き込む編集術」。
情報をさまざまに編集する方法のなかから、ファシリテーターにとって役立ちそうな編集術のワークを体験する。「頭の中で情報がどう変化していくかを追い続ける」をテーマに、参加者自身にワークを通じた頭の中の変化を感じ取ってもらい、その人ならではの「ファシリテーションと編集術の接点」を見つけてもらいたい。

■レイアウト:
・長机×2つで島。アトランダムに配置。グループ数は12個(1グループ@6名)。
■配布物:
・新聞広告
・新聞&4コマ漫画の切り抜き(見出しなどの一部が空欄)

【定例会フロー】


●1:イントロ(13:10〜13:20)

・【解説】今日のテーマは「頭の中を覗き込む編集術」。

 ⇒編集術には、頭の中を覗き込む感覚がある。

 ⇒頭の中で情報がどう変化していくかを追い続けるのが、リアルな編集術のポイント。

 ⇒たとえば、ファシリテーションは「会議の編集術」「場の編集術」だと捉えることができる。会議をしながら、情報の同時編集ができるとファシリテーターとしていろいろなことができる。そのようなことを気にしながらワークを行ないたい。

●セッション1「おかしな自己紹介」(13:20〜13:40)

・【ワーク】グループ内で自己紹介を行ってください。

 ⇒「誰?(名前)」「何している人?」「はじめて?」など。

 ⇒普段、自己紹介では言わないことを自己紹介する(「未知の自己紹介」)。

 ⇒自分をお菓子にたとえる。「その心」(理由)も説明する(「おかしな私」)。

・【ワーク】グループのチーム名を相談して決めてください。メンバーが紹介したお菓子名を使って、チームにふさわしいものを選ぶ。理由もディスカッションする。

  ⇒チーム名と理由を全体に説明。

  ⇒チーム名を出した人が今日のテーブルのファシリテーターを務める。

●セッション2「『情報をかえる』シソーラス」(13:40〜14:25)

・【解説】「らしさ(MODE)」は編集の重要な要素。

 ⇒「イメージ(内側にあるもの、様子、アイディア、らしさ)のマネージ(コントロールする、管理する)」が編集術。自分が求めている「らしさ」を自由自在につくる方法。

・【解説】編集術の方法の基本は、情報を「かえる」ことである。

 ⇒「かえる」のイメージは「変・換・代・替」(へんかんだいたい)という4つの漢字でイメージする。「変換・代替」という2つの熟語のセットでもある。

  →「変化・変質」の「変」、「交換・換気」の「換」、「代理・交代」の「代」、「交替・取替」の「替」。

  →シソーラスは同義語のこと。「情報をかえる」のシソーラスはたくさんあるが、その中からいくつかを編集の「方法」として掴んでほしい。

  →「読み替える・言い換える」=意味と価値のリフレーミング。

  →「並び替える・置き換える」=位置、関係、状況のリフレーミング。

  →「(メディアを)乗り換え、(コンテンツを)持ち換え、(意匠・デザインを)着替える」のが編集術。

  →「ありとあらゆる情報は編集可能な(変えることができる)ものである」。

・【ワーク】「ペットボトルをペットボトルといわずに別の言い方でいうと?(=言い換え、読み替え)」「ペンをペンといわずに別の言い方でいうと?」を考えてみてください。

 ⇒そのとき、どんな編集をしているか? たとえば、「違う使い方」「意味づけを変えた」「動作を変えた」「何かの代用品」「記号化」「何で作られているか考えた」「視点を変えた」「物との関係を考える」など。

・【解説】分母(背景、コンテキスト)を取り替えると、置かれた物(分子)の意味が変わる。

 ⇒たとえば、冷蔵庫の中にあったら、飲み物。お店にあったら、商品。工場にあったら、製品。分母をいろいろに変えると、分子の読み替えがさまざまにできる。

・【ワーク】「蛙」を分子において、意味を変えてください。

 ⇒たとえば、「ペットショップ」分の「ペット」。「中華料理屋」分の「食材」。「庭」分の「害虫」など。

・【ワーク】「会議」を分子において、意味を変えてください。

 ⇒たとえば、「興味のない人」分の「お昼寝時間」、「お弁当屋さん」分の「稼ぎ時」、「上司」分の「仕切り場」、「ファシリテーター」分の「腕の見せ所」、「自信家」分の「演説場」、「お菓子」分の「潤滑油として機能を発揮できる場」など。

●セッション3「言い替える・読み替える」(14:25〜14:40)

・【ワーク】情報を見るときに、分子と分母をセットにして見るトレーニング。「新聞」を使って、広告(情報)を分母と分子に読み替える。すると、「どういう風に注意を向けるか」「何を捉えようとするか」を変えながら見る力が鍛えられる。「言い替え・読み替え」の方法とは別の編集なので、区別して扱う。

●休憩(14:40〜14:55)

●セッション4「推理してセリフを埋める」(14:55〜15:25)

・【ワーク】セリフがブランクになっている4コマ漫画を見て、ブランクを埋める。

・【ワーク】見出しが空欄になっている記事を読んで、見出しを考える。

 ⇒読み替えのトレーニング。「自分がどのように推理を進めていっているのか」をアタマのなかを覗き込んで、感じながらやる。

●セッション5「置き換える・並べ替える」(15:25〜:16:05)

・【ワーク】「買ったもの」をポストイットに書き出してみる。書き出していった順番を「何を考えながら進めていったか」を思い出しながら説明する。

 ⇒自分の記憶を対象にした情報の収集。自分の頭の中を覗き込むつもりで行なう(=
想起する)。

 ⇒「時間順(順番)」「空間」「テーマ、エピソード」などに関連づけて思い出すことができると、編集やファシリテーションがうまくなる。自分がどういう風にあつかっているかを知っておくといい。それがわかったら、切り替えられるようにもなる。

・【ワーク】ポストイットを価格の高い順に並べ替える(=客観)。自分が気に入っている順に並び替えてる(=主観)。さらに、「ファシリテーション協会にとって役に立つ順」をいれて並び替える=第三者的視点。目的をもった企画をプランニングするケース)。
 ⇒編集において、どんな順番にするかは大事。順番のつけ方で情報の意味が違ってくる。

●セッション6「チーム名でプランニング」(16:05〜17:20)

・【ワーク】セッション5で書き出した情報をグループ内で寄せ集めて、「理想のファシリテーター像」を考え、模造紙に書き出す。その際には、チーム名を読み替えて、その「らしさ」を入れて編集する。

≪発表≫

・「ふつうのあめ」チーム(いつでもどこでも買える、誰でも知ってる)
   知識・デジタルツール・アナログツール
   「温故知新」

・ 「都こんぶ」チーム
 ダシ・アシ・コシ(by大川さん)
    控えめな存在(縁の下の力持ち)・信頼感、持久力(味わい深い、叩かれ強い)・?
    「都こんぶのような人」

・「唐辛子入りまんじゅう」チーム
     自律、計画性・包容力・トライ&エラー、酸いも甘いも噛み分ける
    「辛・甘・味わい」
      ※「辛」の部分はまとまっている (by大川さん)

  ・「柿の種」チーム
      知識・体験(日常、非日常からの気づき)・行動力(体験)
    「バランスが大事」(心、体、環境を整える)
    ※丁寧に編集されているが面白みがない(おとなしい)
    「バランス」は最初の頃から決まっているテーマ、これを後のプロセスでもっと編集するとよかった。バランスも油と唐辛子、塩加減、ピーナッツとおかきのバランスとか、もっといろいろイメージできるはず (by大川さん)

・「ふぐせんべい」チーム
     毒(素材、道具、技術、理論、人、地域 毒も薬になる)・つなぐ
(調味料、攪拌)・うまみ
      「毒あらばもんでつないでうまみを出す」
   ※「毒」にとらわれ過ぎ?「ふぐ」には高級とか美味とかの他のイメージもある。最初のイメージ「毒」を思い切って捨てると新しいものが出る。が、途中でその選択肢は出てこなかった?(by大川さん)
      ※ コンテンツを手段にしていろいろな切り口を考えてみるといい

  ・「箱入りキャンディー」チーム
      多様な、広い視野・見た目(スタイル)・熱い、温かいハート(場を暖める、熱くする)
    「箱入りキャンディーのような人」(多様性)
   ※まとめ方、プレゼンは良かった。箱入りキャンディーを核にして、イメージのつながりがはっきりしている (by大川さん)
  
・「ワサビ入り柿ピー」チーム 
      インパクト・病み付き・バランス(リスク管理、調和)
      「↑を兼ね備えている、 "一味違う"人」
   ※メッセージの言葉のイメージやレベルを揃えられるともっと面白くなる(食いつき・やみつき・お墨付きとか) (by大川さん)

・「かりんとう」チーム
     知識・加工・味付け
      「かりんとう作り」
   ※「工程」に注目したという視点がとても面白い(by大川さん)

  ・「ボンボン6」チーム  
      多趣(幅の広さ、道具)・深さ(味わい、懐の深さ)・素直
(食べておいしい)
    「一口で酔わせる人」
   ※酔わせるというのがファシリテーターとしてふさわしいイメージかどうか?     「一声で気持ちよくする」とか、内容を深める・魅力的にするというファシリテーター「らしさ」にもっと丁寧に迫るとさらにいい(by大川さん)
 
  ・「カリぱりぷるん」チーム
      和風(あうん、ともに楽しむ、自前のものにする)・カリぱり
    (ツール、訓練、知識)・ぷるん(包容力、行動力、柔軟性)
      「↑な人」
   ※既存にないものを想定して、色々な視点を編集しきった感じでがんばりました(by大川さん)

  ・「納豆味うまい棒」チーム
      安い(手軽、皆に愛される)、棒(筋が通っている、知識)、納豆
      (粘り強い)
      「1本10円、費用対効果の高い」
   ※コトバのまとまりがよい(by大川さん)

   ・「ザッハトルテ」チーム
    大人の甘み(場作り、包容力)・大人の苦味(切れ味のある進行)・コーティング(調理、調和)
     「深みのある大人の味わい」 でも食べたことないけど・・・
   ※「メンバーの誰もまだ食べたことがないけどイメージを取り交わしたいという最後の一言が、編集的でよかった(by大川さん)

≪審査員コメント≫
・ 喜多さん@東京支部
     都こんぶ:「縁の下の力持ち」ファシパー(12/15)準備の皆さんへの感謝も
           こめて

・ 安藤さん@中部支部
    都こんぶ:「ダシ、アシ、コシ」を引き出した
    長すぎない、面白い、買ったものとのつながり

・ 加藤さん@関西支部
    箱入りキャンディー:自分が考え込んでしまったもの

・加留部さん@九州支部
     柿の種:逆から読んだらと考えると面白い
     ボンボン6:私を酔わせてどうするの?
     和風カリぱりぷるん:考えさせられた
     納豆うまい:言葉の響きに
     ・・・
     ふつうのアメ:ファシリテーション、特別のものではない
            いつでもどこでも誰とでも

 ・大川さん
    かりんとう:編集っぽさでは一番、工程への注目が値打ち。
    カリぱり:全体の内容がうまく組み立てられていた。
    コンテンツから「らしさ」をどう引き出しているかが印象を決める(イメージのマネージ)というのがよくわかった発表。ファシリテーターなら、発言の情報の「内容」だけでなく、発言者の「感情」をいかに扱えるか、という点を気にしながら編集を考えてみると面白いのではないか。

●クロージング(17:20〜17:30)
・振り返り「ファシリテーションと編集術の接点は見つかりましたか?」
・事務連絡

− 以上 −

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